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仲間のこと

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ファンタジーの世界では剣や魔法など出てくるのは当たり前。魔物を倒す冒険者になるにはいくらか手に職をつけないといけない。闘う、守る、傷を癒したり、それ以外は食事を提供したり、様々な分野で活躍をする。ただ、自分の場合はどれにも当てはまらなかった。闘うにしても、詰めが甘かったり、守るにしても反射的に避けてしまったり、魔法で傷を癒したら、何故か他の場所が痛くなったり、なんだかマトモに仕事をこなせなく、最後の砦、料理をしてみた。うーん、まぁ、美味しくはない。食べられなくもない。川でみんなの服を洗濯して、木に吊るす。あー、なんだろー。ついてないよねぇ。雨だ。魔法で乾かしてもらっている間は、みんな、パンツ一丁だった。洞窟の中に、みんなで焚火を囲み、話題になったのは、どのようにして冒険者になったかという少し、ディープな話題だった。
まず、話し始めたのはリーダーのルイ。剣を扱う。ルイの特徴は顔は可愛くて体がムキムキの、ギャップ萌え担当である。
「長い睫、潤んだ瞳、整った鼻、ぽってりした唇、薔薇色の頬、金髪の長い髪、そんな俺は、老若男女問わず、魅了してしまい、人間相手では仕事が出来ない」
うん。この冒険メンバーになったのも、ルイに惚れないという単純な理由だった。
ひとことで、終わってしまったので、次に移る。
次は、ふんわり笑顔の癒し担当の、フェルだ。盾を扱う。フェルは太い眉毛をハの字にし、困ったように言う。
「みんな知ってると思うけど、ぼくは極端に力が強いんだ。なんでも壊してしまうから、ちょっと挨拶で手を握っただけで、どの職場からも拒絶されてさ、試しに、冒険者になってみて、剣ダメー、魔法ダメ―、盾は魔物にそのまま突っ込んでいくから、いけるかぁって」
フェルの話は、ここで終わりではない。
「たださ、ぼくは体が小さいよねぇ。たくさん敵がいる時に、真ん前で、ちょこまかちょこまか大きい盾振り回していたら、敵といっしょに攻撃されちゃうんだよねぇ。これじゃぁ、守ってるのか、邪魔してるのか、わかんないからぁ、ボス戦以外、休憩ってことで、結果、貰えるお金、少ないのぉ。フェルはそこんとこスッゴイよねぇ。完璧に敵だけ攻撃するんだからさ。フェルにスカウトされて良かったのぉ」
渡したリンゴをフェルが手で潰し、ジュースにしてくれる。
リンゴジュースをみんなに配り、最後に遠慮気味に受け取ったリエルは、ごくんと飲んだ。緊張しているのか、手が震えている。リエルは、いつもオドオドしている。目も合わせてくれたことがない。長い前髪で顔を隠し、か細い声でボソボソ話す。
「わ、わたしは、す、すみません」
落ち着かせる魔法を自身にかけている。
怪我も毒も病も簡単に治してしまうリエルは、本来、こんなところに居てはいけないのかもしれない。ただ、この性質で、王宮勤めは難しいと思っている。
「あの、その、つまらない理由ですみません」
言わなくても分かるので、次は自分の番、口を開いたとき、
「わたし、裸族になるために冒険者になりました!」
リエルが爆弾発言をした。アの口が収まらない。
「わたしの奥さん、家の中では、裸で動き回るんです。お前もやってみろ、ほらほら、って言われまして、奥さんに嫌われたくない一心で脱ぎました。しかし、羞恥心が勝ち、すぐに服を着ると、悲しそうにわたしを見ます。それから、奥さん、わたしにはなんにも言ってこなくなってしまって、謝っても、首を振って、わたしに服を脱ぐように強要したことにショックを受けているようでした。奥さんが自然体に生きているのに、わたしは羞恥心を捨てることが出来なくて…………冒険者になりました」
冒険者になったからと言って、羞恥心がなくなるかどうかは分からない。
でも、今はパンツ一丁だ。
自分のせいで、パンツ一丁になることが多いのも事実。
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ま、まさか、この冒険パーティに入ったのは。
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