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第4章:婚約しちゃいました!
60.オーウェンに障壁など意味はない。
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二人の気持ちは整いました。
けれど、問題があります。
そうです。
家族の同意を得ること、です。
身分制度のあるこの世界、結婚は自分たちだけの問題ではなく、家同士の問題でもあります。
特に貴族や富裕層では資産で左右されますから、それはそれは慎重に対処せねばならないのです。
つまりは財産を増やすも減らすも、“結婚次第“なのです!
社交界デビューしたばかりの令息令嬢が必死になっちゃうには、こういう理由があるのです。
良い相手は早い段階で売れてしまうのですから。
あ、もちろん家関係なく個人だけで決めちゃう結婚もあることはあります。
お見合い結婚ほどメジャーではありませんが、
“駆け落ち婚“と呼ばれる、例のアレです。
とても情熱的で愛しかない結婚です。が、一般的には好まれません。むしろ後ろ指さされてしまうほど嫌われています。
階級社会において、もっとも大切な人間関係はもちろん、経済的な利益も全て放棄してしまうことになるからです。
貴族たちにとって、それは死ねと宣告されたも同然。
長い人生を考えるとデメリットでしかないのです(なので、ラブロマンス小説のテーマとして大人気なのですが)。
当たり前ですが、私たちも結婚するのならば皆に祝福されたい。
ですから!
これから最大の難関を越えなければなりません。
ミッション名は『親から結婚の許可を得ること』
オーウェン側の親は、ライト家の当主オーウェンのお祖父様になります。
ですが、一筋縄ではいかないでしょう。
たった一人の孫息子の結婚相手には家柄も財産も釣り合いの取れる令嬢を望んでいるでしょうし、何より実の娘の大失態があったのですから。
孫息子は絶対に失敗させるわけにはいかないのです。
「祖父さんの説得は俺の仕事だからね。うまくやってみせるさ。自信もある。その辺は気にしなくていい。それよりも、ダイナの方はどうなの?」
「あ、私? あぁベネットの方ね……」
実は……。
実家には何も言っていません。
結婚云々よりも以前に、付き合っている人がいることすら伝えていないのです。
15歳で奉公に出て、年に1度帰るくらいですし。
家族は自分達が生きていくのが精一杯なのに、私のことで悩ますのもどうかなって考えたからなのですが……。
「ごめん。彼氏がいることも伝えていないんだけど……」
それでいきなり結婚とか。
しかも大富豪の一族のご令息が相手とか。
びっくりしちゃうよね。
「それ酷くない? 俺のこと、親に言えない相手だと思ってる? まぁダイナに不埒なことはしてるけどね、こうして未婚のお嬢さんに触れているわけだし。そりゃあ言えっこないよね?」
オーウェンは私の後毛を弄びながら、からかいます。
わかってる癖に。
絶対に口に出させようとするなんて!!
ほんっといい性格してます。
「もう。オーウェンのことは、誰よりも好きだし、ものすごく自慢したい相手だと思ってるよ。全部完璧だもん。心の底から、最高に素敵だと思ってる」
そう言うと私はオーウェンの顔を直視できず、下を向きました。
実家のことは大好きです。家族も皆、大好きなんですよ。
ですが、ライト家のことを知ったら、集りに来やしないか心配なのです。
だってライトは途方もないお金持ちなんですもん。
ベネットは裕福ではありません。
日々はなんとか食べられるけれど、余裕はない微妙な経済状態。
しかも親戚から愛想を尽かされてしまっているという残念な一族……。
そんな人たちの目の前に、ライト家が撒かれたら、一目散に齧り付いちゃうものでしょう?
「ベネットは貧乏だから、縁付くことでライトに迷惑かけたら心苦しくて。言い出せなかったの。……後延ばしにしてたら、うん……今から言い出すのもね、気まずくなっちゃって。なんとなくそのまま……」
「ねぇダイナ。俺たちはうちの親みたいな馬鹿なマネはしないんだろ? 失敗したと思ったら、すぐにやり直せば傷は小さくて済むもんだよ。大きくなってからじゃリカバリーできない。ああ、そうだ。どうせ挨拶に行かなきゃいけないんだから、俺も一緒に行くよ」
「え。一緒に??」
いや待て待て。
あの実家の惨状をこのイケメンに見せろと??
手入れの行き届いていない屋敷を、大財閥ラーケン系列の御曹司に見られるだなんて憤死ものじゃないですか!
「私の方は、き、気にしなくて、いいよ?! オーウェンは仕事があるんだし。私も仕事があるし。手紙で知らせればいいことだから!」
オーウェンはニヤリと笑い、何かを書きつけると、侍従に渡します。
「殿下にダイナを休ませる旨の言伝を書いた。これで明日から実家にご挨拶に行けるね。愛しの婚約者様?」
おっふ。
大ピンチです……。
けれど、問題があります。
そうです。
家族の同意を得ること、です。
身分制度のあるこの世界、結婚は自分たちだけの問題ではなく、家同士の問題でもあります。
特に貴族や富裕層では資産で左右されますから、それはそれは慎重に対処せねばならないのです。
つまりは財産を増やすも減らすも、“結婚次第“なのです!
社交界デビューしたばかりの令息令嬢が必死になっちゃうには、こういう理由があるのです。
良い相手は早い段階で売れてしまうのですから。
あ、もちろん家関係なく個人だけで決めちゃう結婚もあることはあります。
お見合い結婚ほどメジャーではありませんが、
“駆け落ち婚“と呼ばれる、例のアレです。
とても情熱的で愛しかない結婚です。が、一般的には好まれません。むしろ後ろ指さされてしまうほど嫌われています。
階級社会において、もっとも大切な人間関係はもちろん、経済的な利益も全て放棄してしまうことになるからです。
貴族たちにとって、それは死ねと宣告されたも同然。
長い人生を考えるとデメリットでしかないのです(なので、ラブロマンス小説のテーマとして大人気なのですが)。
当たり前ですが、私たちも結婚するのならば皆に祝福されたい。
ですから!
これから最大の難関を越えなければなりません。
ミッション名は『親から結婚の許可を得ること』
オーウェン側の親は、ライト家の当主オーウェンのお祖父様になります。
ですが、一筋縄ではいかないでしょう。
たった一人の孫息子の結婚相手には家柄も財産も釣り合いの取れる令嬢を望んでいるでしょうし、何より実の娘の大失態があったのですから。
孫息子は絶対に失敗させるわけにはいかないのです。
「祖父さんの説得は俺の仕事だからね。うまくやってみせるさ。自信もある。その辺は気にしなくていい。それよりも、ダイナの方はどうなの?」
「あ、私? あぁベネットの方ね……」
実は……。
実家には何も言っていません。
結婚云々よりも以前に、付き合っている人がいることすら伝えていないのです。
15歳で奉公に出て、年に1度帰るくらいですし。
家族は自分達が生きていくのが精一杯なのに、私のことで悩ますのもどうかなって考えたからなのですが……。
「ごめん。彼氏がいることも伝えていないんだけど……」
それでいきなり結婚とか。
しかも大富豪の一族のご令息が相手とか。
びっくりしちゃうよね。
「それ酷くない? 俺のこと、親に言えない相手だと思ってる? まぁダイナに不埒なことはしてるけどね、こうして未婚のお嬢さんに触れているわけだし。そりゃあ言えっこないよね?」
オーウェンは私の後毛を弄びながら、からかいます。
わかってる癖に。
絶対に口に出させようとするなんて!!
ほんっといい性格してます。
「もう。オーウェンのことは、誰よりも好きだし、ものすごく自慢したい相手だと思ってるよ。全部完璧だもん。心の底から、最高に素敵だと思ってる」
そう言うと私はオーウェンの顔を直視できず、下を向きました。
実家のことは大好きです。家族も皆、大好きなんですよ。
ですが、ライト家のことを知ったら、集りに来やしないか心配なのです。
だってライトは途方もないお金持ちなんですもん。
ベネットは裕福ではありません。
日々はなんとか食べられるけれど、余裕はない微妙な経済状態。
しかも親戚から愛想を尽かされてしまっているという残念な一族……。
そんな人たちの目の前に、ライト家が撒かれたら、一目散に齧り付いちゃうものでしょう?
「ベネットは貧乏だから、縁付くことでライトに迷惑かけたら心苦しくて。言い出せなかったの。……後延ばしにしてたら、うん……今から言い出すのもね、気まずくなっちゃって。なんとなくそのまま……」
「ねぇダイナ。俺たちはうちの親みたいな馬鹿なマネはしないんだろ? 失敗したと思ったら、すぐにやり直せば傷は小さくて済むもんだよ。大きくなってからじゃリカバリーできない。ああ、そうだ。どうせ挨拶に行かなきゃいけないんだから、俺も一緒に行くよ」
「え。一緒に??」
いや待て待て。
あの実家の惨状をこのイケメンに見せろと??
手入れの行き届いていない屋敷を、大財閥ラーケン系列の御曹司に見られるだなんて憤死ものじゃないですか!
「私の方は、き、気にしなくて、いいよ?! オーウェンは仕事があるんだし。私も仕事があるし。手紙で知らせればいいことだから!」
オーウェンはニヤリと笑い、何かを書きつけると、侍従に渡します。
「殿下にダイナを休ませる旨の言伝を書いた。これで明日から実家にご挨拶に行けるね。愛しの婚約者様?」
おっふ。
大ピンチです……。
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