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第1章:7度目の人生は侍女でした!
3.他人の恋に巻き込まれました。
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「聞いてるの? ダイナ」
私はイーディス様のいらだった声に我にかえりました。
そうでした。
今は侯爵邸への帰宅途中の馬車の中でした。
一ヶ月ぶりに行われた主人であるイーディス様とご婚約者であるカイル殿下との食事会。
それなのにカイル殿下の一言によりプチ修羅場となり、収拾がつかなくなる前に離脱したのです。
うっかりしてしまいましたが、私は侯爵令嬢のイーディス様の3人目の侍女。……と言えば聞こえはいいですが、実質はただの小間使いです。
侍女たちの中で一番軽い扱いですが、お給料もいただけますし、向上心もそれほど持っていないので、これくらいがちょうどいいかなと思っています。
私は丁寧に頭を下げ、イーディス様にお詫びをしました。
「申し訳ございません。イーディス様。ぼんやりとしておりました」
「もう。しっかりしてちょうだい。ダイナの仕事は私の話し相手になることなのだから、ちゃんと聞いておいて」
とぷりぷりする私の主人イーディス様ですが、とっても素敵な方です。
見た目は言うまでもありません。
美男美女のご両親の間に生まれたイーディス様は、超がつくほどの美人さんです。
特に赤みががった金色の髪と、侯爵家の象徴であるヘーゼル色の瞳は、見るもの全てを虜にしてしまうほどです。
もちろん外見だけではありませんよ。
性格もとても優しく愛らしいのです。
そんな方が怒っていても可愛いがすぎるだけです。
しかも怒る理由もただ一つしかないのですから。
私は思わず微笑んでしまいました。
「カイル殿下のお話、聞き逃してしまいました。もう一度お伺いしてもよろしいですか?」
パッとイーディス様の顔色が明るくなりました。
「また話してもいいの? うんざりしない?」
侍女の中でも一番下の私に遠慮がちに聞くイーディス様。
でも大好きな婚約者のことを話したくてウズウズしているのも丸わかりです。
「ええ、何度でもおっしゃってくださいませ」
「本当に?」
「イーディス様のお話は聞いている私も幸せな気持ちになれるのです。私のためにも、ぜひ」
「ありがとう、ダイナ」
イーディス様は嬉しさのあまり頬を赤らめると、私の手をとり握りしめました。
私の主人イーディス様には政略的に定められた婚約者がいます。
それがこの国の王子カイル殿下です。
結婚は18年前、イーディス様が生まれてすぐに決められました。
王族や貴族の結婚は大抵は政略結婚であったりお見合い結婚であるので、これは別段珍しいことではありません。
好いた惚れたで結婚するのではなく、お互いに家のための結婚は貴族としての義務。当然のことです。
しかしこの結婚には大きな問題がありました。
割り切った関係であるにもかかわらず、イーディス様がお相手のカイル殿下に恋をしてしまったのです。
それの何が問題なのかって?
愛情があるのならば、めでたいことではないか、って?
そうですね。
お互いが思い合っていれば、大いに祝福できる結婚なのです。
が。
残念なことに、イーディス様の片思いなのです。
カイル殿下には別に好きな方がいらっしゃるようで……。
この気持ちのすれ違いから、最近では今日のような諍いが顔を合わすたびに繰り広げられていました。
感情の問題となれば解決するにはイーディス様が恋心を忘れ、仕事と割り切る他はありません。
ですが、心はそうは自由にはいかないものです。
イーディス様はカイル殿下の気持ちが自分にはないことも知っていながらも、自分の気持ちを抑え、慈悲深く礼儀正しくなさっておられます。
なんていじらしいのでしょうか。
だけど。
「だからね、ダイナ。あなたにカイル様との間を取り持って欲しいのよ」
イーディス様は天使のような笑を浮かべて、
「手紙を遣わすついでに王宮を探ってきてくれないかしら」
「イ……イーディス様?!」
そんなこと上目遣いで言われても。
これは無いと思うのです。
私はイーディス様のいらだった声に我にかえりました。
そうでした。
今は侯爵邸への帰宅途中の馬車の中でした。
一ヶ月ぶりに行われた主人であるイーディス様とご婚約者であるカイル殿下との食事会。
それなのにカイル殿下の一言によりプチ修羅場となり、収拾がつかなくなる前に離脱したのです。
うっかりしてしまいましたが、私は侯爵令嬢のイーディス様の3人目の侍女。……と言えば聞こえはいいですが、実質はただの小間使いです。
侍女たちの中で一番軽い扱いですが、お給料もいただけますし、向上心もそれほど持っていないので、これくらいがちょうどいいかなと思っています。
私は丁寧に頭を下げ、イーディス様にお詫びをしました。
「申し訳ございません。イーディス様。ぼんやりとしておりました」
「もう。しっかりしてちょうだい。ダイナの仕事は私の話し相手になることなのだから、ちゃんと聞いておいて」
とぷりぷりする私の主人イーディス様ですが、とっても素敵な方です。
見た目は言うまでもありません。
美男美女のご両親の間に生まれたイーディス様は、超がつくほどの美人さんです。
特に赤みががった金色の髪と、侯爵家の象徴であるヘーゼル色の瞳は、見るもの全てを虜にしてしまうほどです。
もちろん外見だけではありませんよ。
性格もとても優しく愛らしいのです。
そんな方が怒っていても可愛いがすぎるだけです。
しかも怒る理由もただ一つしかないのですから。
私は思わず微笑んでしまいました。
「カイル殿下のお話、聞き逃してしまいました。もう一度お伺いしてもよろしいですか?」
パッとイーディス様の顔色が明るくなりました。
「また話してもいいの? うんざりしない?」
侍女の中でも一番下の私に遠慮がちに聞くイーディス様。
でも大好きな婚約者のことを話したくてウズウズしているのも丸わかりです。
「ええ、何度でもおっしゃってくださいませ」
「本当に?」
「イーディス様のお話は聞いている私も幸せな気持ちになれるのです。私のためにも、ぜひ」
「ありがとう、ダイナ」
イーディス様は嬉しさのあまり頬を赤らめると、私の手をとり握りしめました。
私の主人イーディス様には政略的に定められた婚約者がいます。
それがこの国の王子カイル殿下です。
結婚は18年前、イーディス様が生まれてすぐに決められました。
王族や貴族の結婚は大抵は政略結婚であったりお見合い結婚であるので、これは別段珍しいことではありません。
好いた惚れたで結婚するのではなく、お互いに家のための結婚は貴族としての義務。当然のことです。
しかしこの結婚には大きな問題がありました。
割り切った関係であるにもかかわらず、イーディス様がお相手のカイル殿下に恋をしてしまったのです。
それの何が問題なのかって?
愛情があるのならば、めでたいことではないか、って?
そうですね。
お互いが思い合っていれば、大いに祝福できる結婚なのです。
が。
残念なことに、イーディス様の片思いなのです。
カイル殿下には別に好きな方がいらっしゃるようで……。
この気持ちのすれ違いから、最近では今日のような諍いが顔を合わすたびに繰り広げられていました。
感情の問題となれば解決するにはイーディス様が恋心を忘れ、仕事と割り切る他はありません。
ですが、心はそうは自由にはいかないものです。
イーディス様はカイル殿下の気持ちが自分にはないことも知っていながらも、自分の気持ちを抑え、慈悲深く礼儀正しくなさっておられます。
なんていじらしいのでしょうか。
だけど。
「だからね、ダイナ。あなたにカイル様との間を取り持って欲しいのよ」
イーディス様は天使のような笑を浮かべて、
「手紙を遣わすついでに王宮を探ってきてくれないかしら」
「イ……イーディス様?!」
そんなこと上目遣いで言われても。
これは無いと思うのです。
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