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54話 あなたからは離れられない。
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プロポーズ!
婚約していること自体が公的にも結婚を認められていることだ。なくてもいいことではあるが。
(どうしたらいいんだろう)
女性としては喜ばしいことだろう。必要とされている証だ。
だけど。
エリアナとしてはどうなのだ?
まだ復讐は始まったばかりだ。
将来を語るのには時期尚早ではないか?
「……これからどうなるかわからないのよ。もしかしたら私と婚約なんかしないほうが良かったって事になるかもしれないわ」
「あのね。フェリィ。きみのこれからは決まってる。きみが勝つんだ。望むものを全て手に入れてマンティーノスに君臨する。そして」
レオンは私の顔を両手でそっと挟み、
「その後は僕と結婚する。二度目の人生は後悔なんてしたくないだろ?」
「レオン……」
レオンのごまかすことのない真っ直ぐな言葉に心臓が高鳴る。
飛び出していきそうだ。
レオンは私の未来を疑うことなく、私自身を信じて認めてくれている。
(嬉しい)
このままレオンに寄りかかり甘えられたらどんなに幸せだろう。
ーーでも、まだダメだ。
まだやらなければならないことがある。
忘れてはいけない。
幸せになるのは全てが終わってからだ。
「結婚、私は承諾してないわ」
「うーん。フィリィ。婚約したってことは僕との結婚を承諾したってことだよ」
確かにそうだ。
婚約は結婚を前提とした取り決めだ。
大抵は何事もなく近い将来に結婚するものなのだ。
私がただ屁理屈を捏ねているだけだ。そんなことはわかってる。
(だって認めるのも悔しい……)
私がレオンに傾いていること。
私がレオンとの婚約を破棄なんてできやしないことを。
「でも婚約の約束をしたのはフェリシアよ。私じゃないわ」
「あぁ、もう。……そういうとこもかわいいけどさ」
レオンは立ち上がり「ちょっと寄って」と私の隣に座る。
「フィリィ。きみにエリアナ様の記憶があるからってフェリシアとの約束を反故にするの? それはおかしいよ。フィリィの魂はエリアナ様かもしれないけれど、フェリシアでもあるだろ。むしろ責任は取ってもらわないと困るんだけどな」
レオンは私の体に腕をまわし、ぐっと体を寄せた。
近い。
ヘーゼルの瞳に映る戸惑う私の顔が見えるほどに、近い。
私は身をよじる。
「でも、レオン……責任って。私……」
「無理……じゃないよね? 取らないとダメだろ」
「どうしてそういうこと言うの?」
「どうしてだと思う?」
「もう……」
限界だ。
心が耐えられない。
(今はそれどころじゃないのに)
この緊迫した現状がわかっていながら、なんと暢気なんだろう。
身分が高い人というのはどこか浮世離れしたところがあるけれど、レオンもそうなのだろうか。
ウェステ伯爵の血を継いでいるとはいえ私はルーゴの私生児だ。
そんなフェリシアがヨレンテの富と地位を奪おうとしている。
あらゆる手段を使ってその座を手に入れるつもりだ。
一歩間違えばお父様と同じ犯罪者である。
失敗したら破滅だ。
私は覚悟を決めている。命を失うことも受け入れている。
だが、王太后殿下やサグント侯爵家など周辺の人たちまで巻き込みたくはない。
「とにかく。このことを話すのは今はやめときましょ。正念場でしょ?」
私は顔を背ける。
これ以上、動揺を見せたくはない。おそらくはもうレオンには心の内は気付かれているけれど探られるのは嫌だった。
レオンも仕方ないと頬杖をつく。
「……で。ルアーナは何か掴んできそう?」
「え、知ってるの???」
「オヴィリオの愛人を探らせてるんでしょ」
お見通しなの??
「なんで知ってるの?」
「オヴィリオの女癖の悪さは有名だからね。証拠を置いておくなら屋敷よりも愛人宅だろ」
自分の父親の痴態を他人から聞かされるのは、なかなか居心地が悪いものだ。
「人間ってさ秘密を一人で抱えるってことは難しいものだよ。逢瀬の後にポロッと漏らすのもよくあることだ」
「オヴィリオさんは罪から逃れられないよね?」
「うん。死刑以外はない。密輸も大罪だけどね、殺人はそれ以上に大罪だ。しかも我が子であり当主でもある娘を殺害しヨレンテの乗っ取りを画策したんだから、情状の余地はないだろ」
レオンははっきりと言い切った。
「そう……」
「フィリィ、迷ってる?」
「いいえ。罪は償うべきだわ」
お父様のその命、私の手で始末つける。
これがこの世界に戻ってきた私のケジメなのだ。
婚約していること自体が公的にも結婚を認められていることだ。なくてもいいことではあるが。
(どうしたらいいんだろう)
女性としては喜ばしいことだろう。必要とされている証だ。
だけど。
エリアナとしてはどうなのだ?
まだ復讐は始まったばかりだ。
将来を語るのには時期尚早ではないか?
「……これからどうなるかわからないのよ。もしかしたら私と婚約なんかしないほうが良かったって事になるかもしれないわ」
「あのね。フェリィ。きみのこれからは決まってる。きみが勝つんだ。望むものを全て手に入れてマンティーノスに君臨する。そして」
レオンは私の顔を両手でそっと挟み、
「その後は僕と結婚する。二度目の人生は後悔なんてしたくないだろ?」
「レオン……」
レオンのごまかすことのない真っ直ぐな言葉に心臓が高鳴る。
飛び出していきそうだ。
レオンは私の未来を疑うことなく、私自身を信じて認めてくれている。
(嬉しい)
このままレオンに寄りかかり甘えられたらどんなに幸せだろう。
ーーでも、まだダメだ。
まだやらなければならないことがある。
忘れてはいけない。
幸せになるのは全てが終わってからだ。
「結婚、私は承諾してないわ」
「うーん。フィリィ。婚約したってことは僕との結婚を承諾したってことだよ」
確かにそうだ。
婚約は結婚を前提とした取り決めだ。
大抵は何事もなく近い将来に結婚するものなのだ。
私がただ屁理屈を捏ねているだけだ。そんなことはわかってる。
(だって認めるのも悔しい……)
私がレオンに傾いていること。
私がレオンとの婚約を破棄なんてできやしないことを。
「でも婚約の約束をしたのはフェリシアよ。私じゃないわ」
「あぁ、もう。……そういうとこもかわいいけどさ」
レオンは立ち上がり「ちょっと寄って」と私の隣に座る。
「フィリィ。きみにエリアナ様の記憶があるからってフェリシアとの約束を反故にするの? それはおかしいよ。フィリィの魂はエリアナ様かもしれないけれど、フェリシアでもあるだろ。むしろ責任は取ってもらわないと困るんだけどな」
レオンは私の体に腕をまわし、ぐっと体を寄せた。
近い。
ヘーゼルの瞳に映る戸惑う私の顔が見えるほどに、近い。
私は身をよじる。
「でも、レオン……責任って。私……」
「無理……じゃないよね? 取らないとダメだろ」
「どうしてそういうこと言うの?」
「どうしてだと思う?」
「もう……」
限界だ。
心が耐えられない。
(今はそれどころじゃないのに)
この緊迫した現状がわかっていながら、なんと暢気なんだろう。
身分が高い人というのはどこか浮世離れしたところがあるけれど、レオンもそうなのだろうか。
ウェステ伯爵の血を継いでいるとはいえ私はルーゴの私生児だ。
そんなフェリシアがヨレンテの富と地位を奪おうとしている。
あらゆる手段を使ってその座を手に入れるつもりだ。
一歩間違えばお父様と同じ犯罪者である。
失敗したら破滅だ。
私は覚悟を決めている。命を失うことも受け入れている。
だが、王太后殿下やサグント侯爵家など周辺の人たちまで巻き込みたくはない。
「とにかく。このことを話すのは今はやめときましょ。正念場でしょ?」
私は顔を背ける。
これ以上、動揺を見せたくはない。おそらくはもうレオンには心の内は気付かれているけれど探られるのは嫌だった。
レオンも仕方ないと頬杖をつく。
「……で。ルアーナは何か掴んできそう?」
「え、知ってるの???」
「オヴィリオの愛人を探らせてるんでしょ」
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「なんで知ってるの?」
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「そう……」
「フィリィ、迷ってる?」
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