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第2話 少年たちの旅
白と黒の二人組
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思わぬ言葉に目を瞬かせれば、斜め前に座っているエルンストが声を裏返らせる。
「め、メルティーナ様!? 一体、何を言って……っ」
「レオンがいれば、色々とやりやすいと思ったんだよ。二手に別れることもできるし、私がくたばっても、この子が指示を出せば良い」
「彼は……失礼ですが、対魔物訓練を受けたことがあるようには見えません」
エルンストの言葉に、俺は素直に頷いた。
「そうですね。俺は戦えません」
魔法も剣も振るえない。
今の俺は、自分の身ひとつ守ることすらできない。歯がゆいが、それはどうしようもないことだ。
だけど。
俺はトン、と、自身のこめかみを指で突き、
「だけど、ここは役に立つと思います」
ニヤリと笑った。
もしも役立てることがあるなら……前向きに動いていたい。
そうしないと、自分の中の何かが腐り落ちそうな気がしたから。
「なっ……」と、エルンストはアーモンド型の目を大きく見開き、その対面に座るメルティーナが「言うねぇ」と呵々大笑した。
「レオンくん! これは遊びじゃないんだよ!?」
「わかってます」
「それならっ……!」
「決まりだ、エルンスト。こいつも連れて行く」
「私は反対です。彼は子供ですよ! たまたまメルティーナ様と同じ考えだからと言って――」
「たまたま?」
メルティーナが小首を傾げた。
空気に亀裂が入ったかのような錯覚。
彼女のまとう温度が、絶対零度に急降下する。
「お前……《たまたま》私と同じ考えになると、本気で思ってるのかい?」
エルンストの顔から血の気が引いた。
彼は気まずそうに目線を落とすと、声を絞り出した。
「申し訳ありません。失言でした。……しかしーー」
彼の言葉尻を、隣の席の酔っ払いの笑い声が掻き消す。
――その時だった。
「さっきから、ゲラゲラゲラゲラうるせぇんだよ! 余所もんが!」
怒声が店内に響き渡った。
見れば、少し離れた所で飲んでいた客の男が空の木製のジョッキを手に乱暴な様子で席を立つ。
かと思うと、彼は手にしていたそれを思い切り投げつけた。
ジョッキが勢いよく俺たちの隣の席に――上機嫌に笑っていた白銀の髪の酔っ払い目がけて飛んでいく。
その後頭部に激突する刹那、
「イキのいいジョッキっスね」
何でもない様子でジョッキを受け取った白銀の酔っ払いは、立ち上がった。
下品な笑い声からは想像できない容姿の男だった。
年の頃は24、5だろうか。血管が透けるような白磁の肌を持ち、絵筆で描いたような美しい切長の目に、珍しい紅の瞳が嵌まっている。
白いブーツに白いローブをまとい、それらには臙脂の糸で幾何学的な文様が刺繍されている。魔法使いだろう。
予想外の美丈夫だったからか、ジョッキを投げた男は一瞬ポカンとした。が、すぐに顔を真っ赤にして怒鳴った。
「なっ、なにキャッチしてんだよ!!」
今度は酒瓶を投げる。
白銀の酔っ払いはそれをサラリと避けると、手にしていたジョッキを投げ返した。
瓶の割れる音に続いて、スコーンと軽快な音が立つ。
顔面でジョッキを受けた男は、後ろにひっくり返った。
「テメェ何してくれてんだ!」
ジョッキ投げ男と一緒のテーブルにいた男たちが立ち上がる。
白銀の男はバカにしきったように、その麗しい顔形を崩すと言った。
「この村流の挨拶でしょ、ジョッキ投げ。何で怒ってんの?」
「アルシュ。もう黙れ」
そう嗜めたのは、黒尽くめの男――白銀の男の連れだ。
フードを被っていてその顔はよく見えないが、声は、今正に世界の終焉に立ち会っているかのように打ち沈んでいる。
白銀の男はケラケラと笑った。
「挨拶は全ての基本スよ。と言うわけで、ノヴァ様もどうぞ」
「やらん。……宿に戻るぞ」
黒尽くめの男が立ち上がる。
それに「うぇーい」と、適当な相槌を打ち、白銀の男が続いた。
が、もちろん、彼らに絡んだ男がたちが素直に見送るわけもなく。
「こ、ンのっ……! 舐めやがって……!」
瓶を顔面に受けて倒れた男が起き上がる。
テーブルの上の瓶を再び掴んだかと思えば、縁に叩きつけた。
甲高い音に、液体をぶち撒ける音。次いで、鼻先をアルコールの香りが掠める。
「うおおおお!」
割れた瓶を構えて、男が床を蹴った。
「……舐めてんのはどっちだよ」
白銀の男は、黒尽くめの男を庇うようにして立った。
両手で髪をかき上げ目を細める。
「ってーかさ。なーんで楽しく飲んでて、ウザ絡みされなきゃなんねぇの」
「おい、アルシュ――」
緊張が一気に高まった。
目を血走らせ、瓶を振りかぶった男が俺たちのテーブルを横切り――
「うるさいねぇ」
男が、何かに躓いて吹っ飛んだ。
メルティーナが足払いを仕掛けたのだ。
「どうやら、ママに食事のマナーを教えて貰わなかったようだ」
「ぐっ……ぇっ」
もんどりうって、男が床を転げる。
殺気立った男たちに、メルティーナは冷たい眼差しを向けた。
「やるかい? 私の指導は高くつくよ」
白銀の男が煽るように口笛を吹き、そんな彼を黒尽くめの男が殴る。
と、エルンストが音を立てて立ち上がった。
「……っ!」
男たちの顔色が変わる。
軍服姿は効果的面だったようで、場の空気が一気に白けた。
メルティーナは憮然と鼻から息を吐くと、オロオロしているばかりの店主を振り返った。
「……さっさとつまみ出しとくれ。食事が不味くなる」
店主が何かいう前に、男たちは悪態を付きながら床に転がる仲間を引きずり店を出て行った。
静寂が訪れる。
他の客たちが好奇心を剥き出しにこちらを伺っている気配……
メルティーナは平然とした様子で椅子に腰掛け直す。
「すまんな、助けて貰って」
すると、黒尽くめの男がテーブルまでやって来た。
フードを取り、小さく頭を下げる。精悍な顔付きだが、それよりも目の下の色濃いクマが印象的な男だった。耳を隠す程の長さの黒髪は癖毛なのかうねっていて、全身から気怠げな雰囲気を発している。
メルティーナは、彼の後ろに控える白銀の男をチラリと一瞥してから口を開いた。
「静かにして貰いたかっただけさ。こちとら大事な話の最中だったからね」
「そうか」
男は小さく頷くと、フードを被り直し踵を返した。
それから、モップを手にすれ違った店主を引き留め、革袋を押し付けるとさっさと出口へ向かう。
袋の中身を確認した店主がギョッと目を剥き慌てて男の後を追った。
「お客さん! 多すぎますよ!」
「迷惑料だ」
「お騒がせしましたー」
白銀の男が大袈裟な態度で頭を下げた。
カラン、と扉の閉まる音が響く。
店主が皮袋を手に立ち惚ける……
「……そろそろ私らも宿に戻るかね。何か意見があるヤツは?」
グラスを仰いでから、メルティーナはひとりひとりを見渡した。
「いえ……」とエルンストが答える。
「それじゃあ解散だ。明日は朝から気張ってくよ」
エルンストが何か言いたそうに俺を見て、唇を引き結ぶ。
それには気付かないフリをして、俺は皿に残っていた肉の欠片を摘まむと、口に放り席を立った。
「め、メルティーナ様!? 一体、何を言って……っ」
「レオンがいれば、色々とやりやすいと思ったんだよ。二手に別れることもできるし、私がくたばっても、この子が指示を出せば良い」
「彼は……失礼ですが、対魔物訓練を受けたことがあるようには見えません」
エルンストの言葉に、俺は素直に頷いた。
「そうですね。俺は戦えません」
魔法も剣も振るえない。
今の俺は、自分の身ひとつ守ることすらできない。歯がゆいが、それはどうしようもないことだ。
だけど。
俺はトン、と、自身のこめかみを指で突き、
「だけど、ここは役に立つと思います」
ニヤリと笑った。
もしも役立てることがあるなら……前向きに動いていたい。
そうしないと、自分の中の何かが腐り落ちそうな気がしたから。
「なっ……」と、エルンストはアーモンド型の目を大きく見開き、その対面に座るメルティーナが「言うねぇ」と呵々大笑した。
「レオンくん! これは遊びじゃないんだよ!?」
「わかってます」
「それならっ……!」
「決まりだ、エルンスト。こいつも連れて行く」
「私は反対です。彼は子供ですよ! たまたまメルティーナ様と同じ考えだからと言って――」
「たまたま?」
メルティーナが小首を傾げた。
空気に亀裂が入ったかのような錯覚。
彼女のまとう温度が、絶対零度に急降下する。
「お前……《たまたま》私と同じ考えになると、本気で思ってるのかい?」
エルンストの顔から血の気が引いた。
彼は気まずそうに目線を落とすと、声を絞り出した。
「申し訳ありません。失言でした。……しかしーー」
彼の言葉尻を、隣の席の酔っ払いの笑い声が掻き消す。
――その時だった。
「さっきから、ゲラゲラゲラゲラうるせぇんだよ! 余所もんが!」
怒声が店内に響き渡った。
見れば、少し離れた所で飲んでいた客の男が空の木製のジョッキを手に乱暴な様子で席を立つ。
かと思うと、彼は手にしていたそれを思い切り投げつけた。
ジョッキが勢いよく俺たちの隣の席に――上機嫌に笑っていた白銀の髪の酔っ払い目がけて飛んでいく。
その後頭部に激突する刹那、
「イキのいいジョッキっスね」
何でもない様子でジョッキを受け取った白銀の酔っ払いは、立ち上がった。
下品な笑い声からは想像できない容姿の男だった。
年の頃は24、5だろうか。血管が透けるような白磁の肌を持ち、絵筆で描いたような美しい切長の目に、珍しい紅の瞳が嵌まっている。
白いブーツに白いローブをまとい、それらには臙脂の糸で幾何学的な文様が刺繍されている。魔法使いだろう。
予想外の美丈夫だったからか、ジョッキを投げた男は一瞬ポカンとした。が、すぐに顔を真っ赤にして怒鳴った。
「なっ、なにキャッチしてんだよ!!」
今度は酒瓶を投げる。
白銀の酔っ払いはそれをサラリと避けると、手にしていたジョッキを投げ返した。
瓶の割れる音に続いて、スコーンと軽快な音が立つ。
顔面でジョッキを受けた男は、後ろにひっくり返った。
「テメェ何してくれてんだ!」
ジョッキ投げ男と一緒のテーブルにいた男たちが立ち上がる。
白銀の男はバカにしきったように、その麗しい顔形を崩すと言った。
「この村流の挨拶でしょ、ジョッキ投げ。何で怒ってんの?」
「アルシュ。もう黙れ」
そう嗜めたのは、黒尽くめの男――白銀の男の連れだ。
フードを被っていてその顔はよく見えないが、声は、今正に世界の終焉に立ち会っているかのように打ち沈んでいる。
白銀の男はケラケラと笑った。
「挨拶は全ての基本スよ。と言うわけで、ノヴァ様もどうぞ」
「やらん。……宿に戻るぞ」
黒尽くめの男が立ち上がる。
それに「うぇーい」と、適当な相槌を打ち、白銀の男が続いた。
が、もちろん、彼らに絡んだ男がたちが素直に見送るわけもなく。
「こ、ンのっ……! 舐めやがって……!」
瓶を顔面に受けて倒れた男が起き上がる。
テーブルの上の瓶を再び掴んだかと思えば、縁に叩きつけた。
甲高い音に、液体をぶち撒ける音。次いで、鼻先をアルコールの香りが掠める。
「うおおおお!」
割れた瓶を構えて、男が床を蹴った。
「……舐めてんのはどっちだよ」
白銀の男は、黒尽くめの男を庇うようにして立った。
両手で髪をかき上げ目を細める。
「ってーかさ。なーんで楽しく飲んでて、ウザ絡みされなきゃなんねぇの」
「おい、アルシュ――」
緊張が一気に高まった。
目を血走らせ、瓶を振りかぶった男が俺たちのテーブルを横切り――
「うるさいねぇ」
男が、何かに躓いて吹っ飛んだ。
メルティーナが足払いを仕掛けたのだ。
「どうやら、ママに食事のマナーを教えて貰わなかったようだ」
「ぐっ……ぇっ」
もんどりうって、男が床を転げる。
殺気立った男たちに、メルティーナは冷たい眼差しを向けた。
「やるかい? 私の指導は高くつくよ」
白銀の男が煽るように口笛を吹き、そんな彼を黒尽くめの男が殴る。
と、エルンストが音を立てて立ち上がった。
「……っ!」
男たちの顔色が変わる。
軍服姿は効果的面だったようで、場の空気が一気に白けた。
メルティーナは憮然と鼻から息を吐くと、オロオロしているばかりの店主を振り返った。
「……さっさとつまみ出しとくれ。食事が不味くなる」
店主が何かいう前に、男たちは悪態を付きながら床に転がる仲間を引きずり店を出て行った。
静寂が訪れる。
他の客たちが好奇心を剥き出しにこちらを伺っている気配……
メルティーナは平然とした様子で椅子に腰掛け直す。
「すまんな、助けて貰って」
すると、黒尽くめの男がテーブルまでやって来た。
フードを取り、小さく頭を下げる。精悍な顔付きだが、それよりも目の下の色濃いクマが印象的な男だった。耳を隠す程の長さの黒髪は癖毛なのかうねっていて、全身から気怠げな雰囲気を発している。
メルティーナは、彼の後ろに控える白銀の男をチラリと一瞥してから口を開いた。
「静かにして貰いたかっただけさ。こちとら大事な話の最中だったからね」
「そうか」
男は小さく頷くと、フードを被り直し踵を返した。
それから、モップを手にすれ違った店主を引き留め、革袋を押し付けるとさっさと出口へ向かう。
袋の中身を確認した店主がギョッと目を剥き慌てて男の後を追った。
「お客さん! 多すぎますよ!」
「迷惑料だ」
「お騒がせしましたー」
白銀の男が大袈裟な態度で頭を下げた。
カラン、と扉の閉まる音が響く。
店主が皮袋を手に立ち惚ける……
「……そろそろ私らも宿に戻るかね。何か意見があるヤツは?」
グラスを仰いでから、メルティーナはひとりひとりを見渡した。
「いえ……」とエルンストが答える。
「それじゃあ解散だ。明日は朝から気張ってくよ」
エルンストが何か言いたそうに俺を見て、唇を引き結ぶ。
それには気付かないフリをして、俺は皿に残っていた肉の欠片を摘まむと、口に放り席を立った。
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