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日常6
妄想過激と誤算スパイス(1)
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◆◆◆前書き◆◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
日常のわちゃわちゃ小話。
帝人と類の関係性に変化が…?
珍しく今回はアダルトシーンはナシです。
全7回更新!
お話雰囲気タグ
#類総受け #コメディ
◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
とある休日の昼下がり。
僕たちはリビングでそれぞれが気ままに過ごしていた。
ニャン太さんはソウさんを誘って、朝からモニターに噛り付いてゲームをしている。
かなりやりこんでいるゲームの最新作がリリースされたらしい。
僕はココアを片手にそのゲーム画面を眺める。ふたりが遊んでいるのは、インクを使った陣取りゲームのようで、画面はとても華やかだ。
類さんはといえば仕事が煮詰まっているのか僕の隣でココアを飲んでは、低く唸ったりしていた。
帝人さんはソファに寄りかかって小説を読んでいる。ミラン・クンデラ……相変わらずチョイスが渋い。
そんな彼が、ふと顔を上げて顔を顰めた。
「なに? さっきからチラチラこっちを見て……気色悪いんだけど」
彼はそう類さんに向かって言った。
類さんは気にした素振りもなく、真剣な様子で顎を擦り、
「俺さ……いつかセミ食ってやるって思ってて、未だに食えてねぇんだわ」
そんなことをしみじみと言った。
「なに、突然」
帝人さんが呆れた様子で眉を持ち上げた。
「セミ、って……類さん虫嫌いなんじゃないんですか?」
僕も思わず問い掛けていた。
あまり取り乱さない類さんだが、爬虫類だとか虫とかを前にすると叫んで逃げて、と大騒ぎなのだ。セミも確か苦手だったはずだが……
「おう。大嫌い」と、大きく頷く類さん。
それなら食べるとは?
小首を傾げると、彼は爪を噛むように親指で唇に触れた。
「ムカつくんだよ。夏場に何度アイツらのせいで、冷や汗かいたか。だから」
一度言葉を区切り、鼻息荒く続ける。
「いつかバリバリ頭から喰ってやって、お前よりも俺の方が上だ! って思い知らせてやろうと思ってる」
「類ちゃんって時折頭おかしいよね」
ニャン太さんが画面を見たまま言った。
「……それで? そのセミと俺のことを見てたのと、何の関係が?」と帝人さんがもっともな問いを口にする。
類さんはソファに深々と座り直し、足の間で手を組んだ。
そして、
「帝人、俺とヤんね?」
あっけらかんとした様子で言った。
僕は耳を疑う。
驚いたのは帝人さんも同じだったようで、
ブラックコーヒーを飲みかけていた彼の手が一瞬止まった。
が、彼は何事もなかったかのように喉を鳴らし、一息付くと、鼻にシワを寄せた。
「意味がわからない」
「いやさ、俺、お前とだけ寝てねえじゃん? なんていうか気持ち悪いんだよ」
「それを気持ち悪く思う、君の思考が気持ち悪いよ」
類さんは大袈裟な動作で背もたれに身体を投げ出した。
「別にいいだろ。気持ちイイし、筆下ろしできるし、メリットしかねぇじゃん」
「セミの話と合わせて考えると……つまり、君は俺のことを上に見てるってことでしょ? なら、このままの方が良いじゃないか」
「いや、上に見てるわけじゃなくてさ」
「君に興味をもって貰えたのは光栄だけど、把握されるために寝るのはお断り」
取り付く島もない。
類さんは、恨めしそうに帝人さんを見つめる。
いつもの、からかいとはちょっと違う雰囲気だ。
思案げに類さんは俯いた。ついで顔を上げると、じとりと意味深な眼差しを帝人さんに向ける。
「……俺と寝たら、ソウと穴兄弟になれんのに?」
「類さん、下品すぎます……」
「俺、伝とも寝てるけど?」と、更に言葉を重ねる類さん。
「どうして僕まで出すんですか!?」
類さんは答えない。
帝人さんは肺の中が空っぽになるみたいはため息をついた。
眉間を指先で揉みほぐす。
「あのさ、類。君って、本っっっっ当に………………天才?」
両手の指で、類さんを指す帝人さん。
「だろ?」
それに全く同じ動作で類さんが答え、ふたりは意気投合したらしく笑い出す。
「帝人って物凄くバカだよね」
コントロールを激しく操作しながら、ニャン太さんが口を挟んだ。
まあ、そんなオチになるだろうなとは予想は出来たが、類さんも帝人さんもそれでいいのだろうか?
と、
「伝」
今まで黙って会話を聞いていたソウさんが、こちらを振り返った。
「はい? どうかしましたか?」
「穴兄弟とは何だ?」
僕は唇をキュッと結んだ。
* * *
結局、その日、類さんと帝人さんが盛り上がったのは一瞬で、ふたりはすぐにその話題に飽きたのか、いつもの調子に戻っていた。
そもそも互いに興味がないのだろう。
と、思われたのだが……
日常のわちゃわちゃ小話。
帝人と類の関係性に変化が…?
珍しく今回はアダルトシーンはナシです。
全7回更新!
お話雰囲気タグ
#類総受け #コメディ
◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
とある休日の昼下がり。
僕たちはリビングでそれぞれが気ままに過ごしていた。
ニャン太さんはソウさんを誘って、朝からモニターに噛り付いてゲームをしている。
かなりやりこんでいるゲームの最新作がリリースされたらしい。
僕はココアを片手にそのゲーム画面を眺める。ふたりが遊んでいるのは、インクを使った陣取りゲームのようで、画面はとても華やかだ。
類さんはといえば仕事が煮詰まっているのか僕の隣でココアを飲んでは、低く唸ったりしていた。
帝人さんはソファに寄りかかって小説を読んでいる。ミラン・クンデラ……相変わらずチョイスが渋い。
そんな彼が、ふと顔を上げて顔を顰めた。
「なに? さっきからチラチラこっちを見て……気色悪いんだけど」
彼はそう類さんに向かって言った。
類さんは気にした素振りもなく、真剣な様子で顎を擦り、
「俺さ……いつかセミ食ってやるって思ってて、未だに食えてねぇんだわ」
そんなことをしみじみと言った。
「なに、突然」
帝人さんが呆れた様子で眉を持ち上げた。
「セミ、って……類さん虫嫌いなんじゃないんですか?」
僕も思わず問い掛けていた。
あまり取り乱さない類さんだが、爬虫類だとか虫とかを前にすると叫んで逃げて、と大騒ぎなのだ。セミも確か苦手だったはずだが……
「おう。大嫌い」と、大きく頷く類さん。
それなら食べるとは?
小首を傾げると、彼は爪を噛むように親指で唇に触れた。
「ムカつくんだよ。夏場に何度アイツらのせいで、冷や汗かいたか。だから」
一度言葉を区切り、鼻息荒く続ける。
「いつかバリバリ頭から喰ってやって、お前よりも俺の方が上だ! って思い知らせてやろうと思ってる」
「類ちゃんって時折頭おかしいよね」
ニャン太さんが画面を見たまま言った。
「……それで? そのセミと俺のことを見てたのと、何の関係が?」と帝人さんがもっともな問いを口にする。
類さんはソファに深々と座り直し、足の間で手を組んだ。
そして、
「帝人、俺とヤんね?」
あっけらかんとした様子で言った。
僕は耳を疑う。
驚いたのは帝人さんも同じだったようで、
ブラックコーヒーを飲みかけていた彼の手が一瞬止まった。
が、彼は何事もなかったかのように喉を鳴らし、一息付くと、鼻にシワを寄せた。
「意味がわからない」
「いやさ、俺、お前とだけ寝てねえじゃん? なんていうか気持ち悪いんだよ」
「それを気持ち悪く思う、君の思考が気持ち悪いよ」
類さんは大袈裟な動作で背もたれに身体を投げ出した。
「別にいいだろ。気持ちイイし、筆下ろしできるし、メリットしかねぇじゃん」
「セミの話と合わせて考えると……つまり、君は俺のことを上に見てるってことでしょ? なら、このままの方が良いじゃないか」
「いや、上に見てるわけじゃなくてさ」
「君に興味をもって貰えたのは光栄だけど、把握されるために寝るのはお断り」
取り付く島もない。
類さんは、恨めしそうに帝人さんを見つめる。
いつもの、からかいとはちょっと違う雰囲気だ。
思案げに類さんは俯いた。ついで顔を上げると、じとりと意味深な眼差しを帝人さんに向ける。
「……俺と寝たら、ソウと穴兄弟になれんのに?」
「類さん、下品すぎます……」
「俺、伝とも寝てるけど?」と、更に言葉を重ねる類さん。
「どうして僕まで出すんですか!?」
類さんは答えない。
帝人さんは肺の中が空っぽになるみたいはため息をついた。
眉間を指先で揉みほぐす。
「あのさ、類。君って、本っっっっ当に………………天才?」
両手の指で、類さんを指す帝人さん。
「だろ?」
それに全く同じ動作で類さんが答え、ふたりは意気投合したらしく笑い出す。
「帝人って物凄くバカだよね」
コントロールを激しく操作しながら、ニャン太さんが口を挟んだ。
まあ、そんなオチになるだろうなとは予想は出来たが、類さんも帝人さんもそれでいいのだろうか?
と、
「伝」
今まで黙って会話を聞いていたソウさんが、こちらを振り返った。
「はい? どうかしましたか?」
「穴兄弟とは何だ?」
僕は唇をキュッと結んだ。
* * *
結局、その日、類さんと帝人さんが盛り上がったのは一瞬で、ふたりはすぐにその話題に飽きたのか、いつもの調子に戻っていた。
そもそも互いに興味がないのだろう。
と、思われたのだが……
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