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日常5

誰でもいいと君だから(5)

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* * *

 明かりを消した暗い部屋で、僕は起動していないパソコンの前に座っていた。

 性欲は動物の本能だ。
 けれど、人間は理性的な生き物であるべき……だと、思う。

 ソウさんに触れられて一線を越えてしまいそうになった事実は、僕を打ちのめしていた。
 僕は……僕は、淫らなことができれば相手が誰でもいいのかもしれない。

 何度も繰り返される疑念。

 誰でもいいわけではない、はず。
 ソウさんだから反応したのだ。

 と考えると、ナチュラルに類さんの他にも好きな人がいるということになってしまう。

 あの人も好き。この人も好き。

 僕がそんな考えでいいのか?

 ニャン太さんのことも、ソウさんのことも、信頼してるし、大切だし、必要だ。
 しかし、では、性的な対象、と考えると、別問題で。

 ……いや、別問題だと考えて『いた』。
 なのに、身体は反応してしまったのだ。

「……はぁ」

 詰めていた息を吐き出す。

 初めて、ニャン太さんと類さんと致してしまった翌日、僕はこの問いから目を逸らした。
 しかし、もう見ないふりはできない。

 類さんだけではなく、僕はニャン太さんのことも、ソウさんのことも、性的なことを含めて好きなのか。それとも不純な欲求故の反応だったのか。
 そこを明確にしなければならない。

 もしも自分が動物的な人間ならば……僕は類さんの傍にはいてはいけない。
 彼を裏切っていることに他ならないからだ。

 僕は眼鏡を取って、目頭を揉んだ。
 確かめる方法は簡単だ。

 性的な相手ではないと自認している相手に、頼めばいい。
 それで反応しなければ、僕はソウさんのことが好きだったのだと納得できる。
 そうでないのならば……。

 僕は椅子から立ち上がると自室を後にした。
 向かう場所は決まっている。こんなことを頼める相手はひとりだけだから。

 僕は、何度か深呼吸をしてから心を決めると、帝人さんの部屋の扉をノックした。
 ……類さんに見られているなんて、気付きもしないで。
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