ファミリア・ラプソディア エバーアフター

Tsubaki aquo

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日常2

勉強会とリベンジマッチ(2)

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 数日後。
 僕はニャン太さんの部屋の前で、立ち尽くしていた。

 先日話した勉強会に誘われたのだ。
 類さんはちょうど仕事の締切が重なっているため、しばらく部屋に缶詰めだったから、ちょうどいいタイミングではあるのだが……

 いや、おかしいだろ。

 僕はドアノブを見つめて、唇をキュッと結ぶ。

 愛する人のため、セックスを勉強することは非常に大切だ。
 しかし、だからと言ってニャン太さんに教えて貰ってもいいものなのだろうか?
 かと言って、彼ほど心強い相談相手はいないのだけれど。

 うーん。
 うーーーん。

 ひとり唸っていると、ドアノブが回り、

「いっ……!」

 突然開いたドアに額をぶつけた。

「わっ、ごめん! 大丈夫!?」

 顔を覗かせたのは、ニャン太さんだった。

「だ、大丈夫です……」

 部屋の前でウンウン唸っていた僕が悪い。
 打った額を撫でつつ微笑むと、ニャン太さんに腕を引かれた。

「ちょうど今、迎えに行こうと思ってたんだよ」

 案内された彼の部屋は、相変わらずカオスだった。
 散らばっているわけではないが、とにかく物が多いのだ。

 エキゾチックなカーテン、壁にはよく分からない仮面のようなものや、青い目玉のような飾りがかけられており、床には水タバコの機材がズラリと並んでいる。

 棚にはコミックと、フレーバーの缶がうずたかく積まれていて、色鮮やかなガラスの照明はとても美しい。
 彼の部屋にいると、ここが何処かわからなくなる。

 と、部屋の真ん中の丸いローテーブルには先客がいた。

「ソウさん? どうしてここに……」

 ソウさんが正座をして、テーブルの上のお菓子をつまんでいる。
 彼は僕を見ると短く言った。

「先生だから」

「えっ!? 先生!?」

 ニャン太さんを勢いよく振り返る。

「プロフェッショナルは多い方がいいでしょ?」

「い、いや、さすがに、あのっ」

 彼はニコニコ笑ってソウさんの隣に座ると、僕を手招いた。

「ほら、早く席について。勉強会、始めるよ!」

「は、始めるって……」

 そも、勉強とは何をどうするつもりなのだろう。ここにきて不安になってくる。

「泥船に乗ったつもりでいてよ! 僕とソウちゃんでみっちり教えてあげるからさ♪」

「ど、泥船……」

 普通に間違えたのか、類さんという魅惑の沼に叩き落とすぞという宣言なのか、ちょっと判断は付かない。

 僕はおずおずとテーブルについた。
 今更、やっぱり遠慮しますとは言えなかった。

「……今日は宜しくお願いします」

 筆記用具をテーブルに出し、頭を下げる。

「ほい、ヨロシク」

「よろしく」と、ソウさんも小さくお辞儀をする。
 それにニャン太さんが続けた。

「さっき話した通り、今日はデンデンに類ちゃんをイかせるためのテクを伝授します」

「うん」と真面目な様子でソウさんが頷く。

 僕はどういう顔をして聞けば良いのかわからず、俯いた。

「それでは……ソウちゃん先生。類ちゃんとエッチする時、最も気をつけていることを教えてください」と、ニャン太さんが口火を切った。

「……類がして欲しいということは聞かない」

「えっ、どうしてですか?」

 思わぬ言葉に、質問が口を突いて出る。
 ソウさんは短く告げた。

「ウソだから」

「ウソ……? とは……」

 メモを取りつつ、首を傾げる。
 と、腕を組んだニャン太さんが深く肯いた。

「類ちゃん天の邪鬼だからさ。さっさと挿れろーとか言うけど、あれ、照れ隠しなんだよね。主導権渡したくないだけ。だから、基本無視していいよ」

「無視して、触ってて良いってことですか?」

「むしろ触るのも止めちゃったらいいと思う」

 それじゃあ間が持たない気がする。
 戸惑う僕の手を、ニャン太さんが取って、自身の頬に導いた。

「例えば、こんな風に……普通にイチャイチャするんだよ。軽くキスしたり、好きって言ったり、抱きしめたり、ほっぺたスリスリしたりね。類ちゃんって、そういう甘々なことにめちゃ弱だから」

「そうなんですか」

 意外だ。
 僕はゴクリと喉を鳴らす。

 めちゃ弱ということは、類さんが――あの、いつも余裕たっぷりの類さんが、照れたり、戸惑ったりするってことか。

 それは……絶対見てみたい。が。

「……でも、その状況まで持っていくこと自体が、僕には難しそうです」

 そんな彼を拝むには、まず彼の余裕を突き崩す必要がある。

「だからこその勉強会じゃん!」

 待ってましたと言わんばかりの勢いで、ニャン太さんがテーブルの上に色合いの華やかな、瓢箪型のものを置いた。
 淡い桃色のそれは、大きさ30センチくらい。材質はシリコンだろうか。

 類さんたちと生活をしてきて、それなりに知識を得た僕にはわかる。
 これは要するに……大人のオモチャだ。

「そ、それ……ホール、ですよね?」

「うん。類ちゃん(仮)」と、ニャン太さん。

「類さん(仮)……」

「アナルホールって、見た目がエグいのばっかなんだけど……これならデンデンも練習しやすいかなって思って買っといたんだ~」

 ふにふにとニャン太さんが指先でもてあそぶ。かなり柔らかそうだ。

「では、類ちゃん(仮)でさっそく指使いの練習をしましょう!」

 そう宣言すると、彼はローションを穴にたっぷりと注ぎ込み、人差し指を優しく挿し入れた。
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