2 / 75
リクエスト01
声と虚構の果実 Side:類
しおりを挟む
◆◆◆前書き◆◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
全5回更新。リクエスト頂きました。
類が伝への気持ちを家族に告白する前後のお話です。
雰囲気タグ
#ネタバレ #病み
リクエストありがとうございました…!
◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
薄膜の下、黒く滲むソレは病巣だ。
ナイフの切っ先を当てれば、プツリと破けた膜にどす黒い赤が盛り上がる。
『ねぇ、類……これでも頑張ったんだよ』
ソレはそんな風に鳴く。
キィキィと耳障りな声で。
鼻につく酷い臭いを発して。
ああ、腐っている。
その膿は触れるもの全てを、粛々と不幸にしていく。
いつまでそのままにしておく気だ? と、自問。
わかってるよ、と、俺は吐き捨てる。
早く。早く、切り落とさなければ。
――俺が親父にしたように。
* * *
締めきった自室に、淫靡な香りが満ちていた。
「は、ぁ……ぅ……あ……っ!」
自分でもウンザリするような甘ったるい声を上げて、身体は愉悦の階段を駆け上っていく。
肉襞を擦る熱が密度を増したかと思えば、すかさず蒼悟が俺の唇を塞いだ。
「類……」
「ぁ……んンッ」
がむしゃらに舌を絡ませ、俺は甘えるように蒼悟の背を抱きしめる。
「ソウ……痛くして……」
請えば、彼は肩口に噛みついてきた。
歯を立てて、ちゅ、とキスを落とす。
「こうか?……足りない?」
「うん……まだ、もっと……痛く……頭、うるさい……」
「わかった」
蒼悟は短く頷くと、俺の両足を抱え直す。
それから腰が浮くほど掘削しながら、先ほど甘噛みした場所を再び噛んだ。
「あっ」
痛みに身体が跳ねる。
『熱い、熱い』とまとわりつく『声』が、一瞬、俺から手を引く。
「あ、ぁ、あ……あ……っ!」
打ちこまれた楔の形をハッキリと認識できるくらい、身体が重なった。
「くっ……」と、蒼悟が眉根を寄せて、今度は首筋に噛みついてくる。
ふぅふぅと耳朶に吹き掛かる荒い吐息。
応えるように、俺は汗ばむ背に爪を立てる。
ベッドが軋む。
動きが激しさを増し、俺の意識は軽々と高みへと放られた。
最奥に叩き付けられた飛沫が、じわりと体内に染みていく。
真っ白になった視界に、ふたつの呼吸が響いた。
「類、イけた……?」
噛み跡を舐めながら、蒼悟が問う。
「ん……」
俺は彼の頬を両手で包むと、苦笑しながらその切れ長の目を見上げる。
「でも、まだ……足りね、ぇ……」
蒼悟が優しく目を細めた。
そっと唇が重なる。
何度か触れるだけの口付けの後、ザラついた舌が深く口中に入り込み、舌の根が痛くなるほど強く吸われた。
唾液を啜り合うと、微かに血の味がする。
胸が震えるような安堵を覚え、さわさわと蒼悟の頬を撫でれば、
『なぁ、類。熱いよ……熱い……』
触れた指先から、彼の皮膚が赤黒く変色した――かのような、幻覚に襲われた。
「……っ!」
俺は息を飲んで手を離す。
蒼悟は気にせずその手を強く握ると、唇を押しつけてきた。
「ダメだ、蒼悟……離せ……」
「大丈夫」
抱きしめられる。
俺は浅い呼吸を繰り返し、やがて息をひそめて彼の首筋に顔を埋めた。
背中に張り付いた声が、蒼悟をじっと見ている……
全5回更新。リクエスト頂きました。
類が伝への気持ちを家族に告白する前後のお話です。
雰囲気タグ
#ネタバレ #病み
リクエストありがとうございました…!
◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
薄膜の下、黒く滲むソレは病巣だ。
ナイフの切っ先を当てれば、プツリと破けた膜にどす黒い赤が盛り上がる。
『ねぇ、類……これでも頑張ったんだよ』
ソレはそんな風に鳴く。
キィキィと耳障りな声で。
鼻につく酷い臭いを発して。
ああ、腐っている。
その膿は触れるもの全てを、粛々と不幸にしていく。
いつまでそのままにしておく気だ? と、自問。
わかってるよ、と、俺は吐き捨てる。
早く。早く、切り落とさなければ。
――俺が親父にしたように。
* * *
締めきった自室に、淫靡な香りが満ちていた。
「は、ぁ……ぅ……あ……っ!」
自分でもウンザリするような甘ったるい声を上げて、身体は愉悦の階段を駆け上っていく。
肉襞を擦る熱が密度を増したかと思えば、すかさず蒼悟が俺の唇を塞いだ。
「類……」
「ぁ……んンッ」
がむしゃらに舌を絡ませ、俺は甘えるように蒼悟の背を抱きしめる。
「ソウ……痛くして……」
請えば、彼は肩口に噛みついてきた。
歯を立てて、ちゅ、とキスを落とす。
「こうか?……足りない?」
「うん……まだ、もっと……痛く……頭、うるさい……」
「わかった」
蒼悟は短く頷くと、俺の両足を抱え直す。
それから腰が浮くほど掘削しながら、先ほど甘噛みした場所を再び噛んだ。
「あっ」
痛みに身体が跳ねる。
『熱い、熱い』とまとわりつく『声』が、一瞬、俺から手を引く。
「あ、ぁ、あ……あ……っ!」
打ちこまれた楔の形をハッキリと認識できるくらい、身体が重なった。
「くっ……」と、蒼悟が眉根を寄せて、今度は首筋に噛みついてくる。
ふぅふぅと耳朶に吹き掛かる荒い吐息。
応えるように、俺は汗ばむ背に爪を立てる。
ベッドが軋む。
動きが激しさを増し、俺の意識は軽々と高みへと放られた。
最奥に叩き付けられた飛沫が、じわりと体内に染みていく。
真っ白になった視界に、ふたつの呼吸が響いた。
「類、イけた……?」
噛み跡を舐めながら、蒼悟が問う。
「ん……」
俺は彼の頬を両手で包むと、苦笑しながらその切れ長の目を見上げる。
「でも、まだ……足りね、ぇ……」
蒼悟が優しく目を細めた。
そっと唇が重なる。
何度か触れるだけの口付けの後、ザラついた舌が深く口中に入り込み、舌の根が痛くなるほど強く吸われた。
唾液を啜り合うと、微かに血の味がする。
胸が震えるような安堵を覚え、さわさわと蒼悟の頬を撫でれば、
『なぁ、類。熱いよ……熱い……』
触れた指先から、彼の皮膚が赤黒く変色した――かのような、幻覚に襲われた。
「……っ!」
俺は息を飲んで手を離す。
蒼悟は気にせずその手を強く握ると、唇を押しつけてきた。
「ダメだ、蒼悟……離せ……」
「大丈夫」
抱きしめられる。
俺は浅い呼吸を繰り返し、やがて息をひそめて彼の首筋に顔を埋めた。
背中に張り付いた声が、蒼悟をじっと見ている……
0
お気に入りに追加
121
あなたにおすすめの小説
病み男子
迷空哀路
BL
〈病み男子〉
無気力系主人公『光太郎』と、4つのタイプの病み男子達の日常
病み男子No.1
社会を恨み、自分も恨む。唯一心の支えは主人公だが、簡単に素直にもなれない。誰よりも寂しがり。
病み男子No.2
可愛いものとキラキラしたものしか目に入らない。溺れたら一直線で、死ぬまで溺れ続ける。邪魔するものは許せない。
病み男子No.3
細かい部分まで全て知っていたい。把握することが何よりの幸せ。失敗すると立ち直るまでの時間が長い。周りには気づかれないようにしてきたが、実は不器用な一面もある。
病み男子No.4
神の導きによって主人公へ辿り着いた。神と同等以上の存在である主を世界で一番尊いものとしている。
蔑まれて当然の存在だと自覚しているので、酷い言葉をかけられると安心する。主人公はサディストではないので頭を悩ませることもあるが、そのことには全く気づいていない。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
部室強制監獄
裕光
BL
夜8時に毎日更新します!
高校2年生サッカー部所属の祐介。
先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。
ある日の夜。
剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう
気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた
現れたのは蓮ともう1人。
1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。
そして大野は裕介に向かって言った。
大野「お前も肉便器に改造してやる」
大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…
少年野球で知り合ってやけに懐いてきた後輩のあえぎ声が頭から離れない
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
少年野球で知り合い、やたら懐いてきた後輩がいた。
ある日、彼にちょっとしたイタズラをした。何気なく出したちょっかいだった。
だがそのときに発せられたあえぎ声が頭から離れなくなり、俺の行為はどんどんエスカレートしていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる