人狼坊ちゃんの世話係

Tsubaki aquo

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エピソード3

可愛がられるのも世話焼きのうち(?)(2)

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「紅茶、お口に合いませんか?」

 唐突に立ち上がったオレに、ユリアが不安げに瞳を揺らす。

「そうじゃねぇ。紅茶はめちゃくちゃ美味い。
 じゃなくてさ……オレ、朝から何もしてねぇんだよ。世話係なのに」

 綺麗な服を着て、美味いもん食って、腹ごなしに散歩して、また美味いもん食って。
 給料分働くどころの話ではない。むしろ天引きされても文句が言えないレベルだ。

「こうして一緒にお茶を楽しむ、じゃ仕事になりません?」

「楽しいから、より仕事って感じがしねぇ。
 お前がムカつく甘ったれな坊ちゃんなら、まだ仕事だって考えられたけど」

 ユリアがきょとんとする。

「楽しい……」

 それから、誰にともなく呟くと頬を染めてもじもじした。
 オレは必死で、世話係の仕事を探して思考を巡らせる。

 身支度の手伝いは不要。
 繕いものや、皿洗い、ゴミ捨て等の屋敷を維持する仕事はもう人手が足りている。

 じゃあ、オレに出来ることってなんだ?

 ふと、ユリアの指が視界に入った。
 大きい手だった。指はスラリとしているが、太くて長い。
 綺麗なアーモンド型の爪は短く切りそろえられている。

 例えば、そう……エロいこととか?

 ――って、ダメだダメだダメだ!!
 オレは慌てて頭を振った。

 ただの前職のクセだ。
 断じて、ちょっとも、やましい気持ちなんて持ってない。いや、マジで。

「メイドにも相談してみたんだけど、間に合ってるって言われちまってさ。
 でも、このまま何もしないで過ごすのは、怖いんだ。
 一通りのことは出来るよ。出来ないことはすぐ覚える。
 だから、なんかオレに仕事をくれないか」

「そうですね……ご存じの通り、ハウスキーパーは間に合ってますし、
 僕の世話と言っても……」

 ふと、ユリアが言葉を途切れさせる。
 何か思いついたのだろう。オレはすかさず身を乗り出した。

「何かあるんだな? 言ってみろよ」

「その……笑わないで、くださいね?」

「もちろん」

 ユリアが視線を彷徨わせる。
 それから、ポツリと呟いた。

「……ギュッて、してもいいですか」
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