3 / 7
3、出社後、バーヘ
しおりを挟む
すこぶる調子が悪く、何をやってもあのことを思い出してしまうため、昼食も喉を通らずコーヒーで済ませた。
俺のデスクに誰か近づくたび警戒してしまい、書類の受け渡しの際に触れる同僚の指すら不快に思える。
そのせいで仕事はミスを連発してしまい、いつもより残業時間が長引いてしまった。
もちろんサービス残業であるので、この残業分の給料は発生しない。
糞上司のお陰で残業はいつものことだが、かろうじて日付が変わる前には会社を出ることができていた。
それが今日は、もう時計の針が二時を指していた。
「あの糞上司め........こっちはただでさえ疲弊しているというのにのこのこと定時出社しやがって.... はぁ......」
もう俺以外誰もいなくなったオフィスに発した言葉が妙に響いてそれが虚しさを助長させる。
あともう少しというところで、集中力と気力が尽きてしまった。
電車に乗って帰るのは人が少なくなった終電間際がいいなどと考えていたが、その電車すらもうない。
会社に泊まろうかと考えたが、それは今日の精神状態を見る限り宜しくないだろう。
本当に情けない。
俺自身こんな目に合うなどと思っていなかったというのもあるが、たった一回くらいのことでここまでダメージを追ってしまうとは思わなかった。
世の痴漢にあった人たちはどうやって立ち直っているのか切に教えてほしい。
あの場でもっと抵抗していればとか、無理なことや過ぎたことを考えてしまうようではもうあの電車には乗れない。
もっとしっかりしなければとそう思うほどに不安感が増す。
自分を叱咤すればするほど、頭があの男のことを考えてしまう。
「今日はもう仕事にならないな…」
そう言ってからパソコンを閉じ帰宅の準備を始めた。
カバンにペンや書類を詰めて、自分のデスク周りを確認してからオフィスを出る。
社内のエレベーターを使い下階に降りて会社を出ると、あたりは真っ暗で小雨が降っていた。
朝からどん底だったのに、雨が降っていることで余計に俺の気分を下降させる。
まさに散々な一日を過ごしたと言えよう。
「久々に、何も考えず飲むか....」
言葉に出してしまえば、もう行動は早い。
いっそ明日のことなど考えず、飲み明かしてしまおうかと思い至り手頃な店を探す。
ふと、目に止まった洒落た外観のバーに入ると若い男のバーテンダーが声をかけてきた。
「こんばんは~。ここははじめ手の方ですか?」
着崩した制服に、明るい金髪、極めつけに耳や唇に所狭しとつけられたピアス。
一見して過激そうな印象を受けるが、優しげな垂れ目や上がり口角の唇のおかげか、そこまでの近寄りがたさは感じない。
「こんばんは。
はい。ここに入ったのは今日が初めてです。
なにかおすすめのものはありますか?」
すぐにでも酔いたい気分だったので、挨拶もそこそこにしておすすめのものを頼むことにした。
もとより酒の種類などもあまり詳しい方ではないし、とにかく早く記憶をなくすほど酔いつぶれたい。
「う~んと、そうですね~…お客様辛口と甘口どちらが
お好みですか?」
意外と細やかな気遣いができるバーテンダーなのか、自分のおすすめではなく、好みに合わせたおすすめのものを出してくれるようだ。
「甘口が好きです。」
辛口はどうも自分の口には合わないが、女性らしいカクテルなどフルーティーな味わいやチョコレートの風味がするものはむしろ好んで飲んでいた。
「かしこまりました!では、少々お待ち下さいね。」
そう張り切った声で即答すると、手際よくカクテルを作る準備をし始めた。
この見た目で繊細な手付きでカクテルを作るのは意外である。
思わず見入っていると、右隣の席にいた先客に声をかけられた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーー
読んでくださった方ありがとうございます!
お気に入り登録とても励みになります。
気が向きましたら、感想などもいただけると嬉しいです!
バー回思ったより長くなってしまい、まだ異世界要素が皆無なのでがんばります。
俺のデスクに誰か近づくたび警戒してしまい、書類の受け渡しの際に触れる同僚の指すら不快に思える。
そのせいで仕事はミスを連発してしまい、いつもより残業時間が長引いてしまった。
もちろんサービス残業であるので、この残業分の給料は発生しない。
糞上司のお陰で残業はいつものことだが、かろうじて日付が変わる前には会社を出ることができていた。
それが今日は、もう時計の針が二時を指していた。
「あの糞上司め........こっちはただでさえ疲弊しているというのにのこのこと定時出社しやがって.... はぁ......」
もう俺以外誰もいなくなったオフィスに発した言葉が妙に響いてそれが虚しさを助長させる。
あともう少しというところで、集中力と気力が尽きてしまった。
電車に乗って帰るのは人が少なくなった終電間際がいいなどと考えていたが、その電車すらもうない。
会社に泊まろうかと考えたが、それは今日の精神状態を見る限り宜しくないだろう。
本当に情けない。
俺自身こんな目に合うなどと思っていなかったというのもあるが、たった一回くらいのことでここまでダメージを追ってしまうとは思わなかった。
世の痴漢にあった人たちはどうやって立ち直っているのか切に教えてほしい。
あの場でもっと抵抗していればとか、無理なことや過ぎたことを考えてしまうようではもうあの電車には乗れない。
もっとしっかりしなければとそう思うほどに不安感が増す。
自分を叱咤すればするほど、頭があの男のことを考えてしまう。
「今日はもう仕事にならないな…」
そう言ってからパソコンを閉じ帰宅の準備を始めた。
カバンにペンや書類を詰めて、自分のデスク周りを確認してからオフィスを出る。
社内のエレベーターを使い下階に降りて会社を出ると、あたりは真っ暗で小雨が降っていた。
朝からどん底だったのに、雨が降っていることで余計に俺の気分を下降させる。
まさに散々な一日を過ごしたと言えよう。
「久々に、何も考えず飲むか....」
言葉に出してしまえば、もう行動は早い。
いっそ明日のことなど考えず、飲み明かしてしまおうかと思い至り手頃な店を探す。
ふと、目に止まった洒落た外観のバーに入ると若い男のバーテンダーが声をかけてきた。
「こんばんは~。ここははじめ手の方ですか?」
着崩した制服に、明るい金髪、極めつけに耳や唇に所狭しとつけられたピアス。
一見して過激そうな印象を受けるが、優しげな垂れ目や上がり口角の唇のおかげか、そこまでの近寄りがたさは感じない。
「こんばんは。
はい。ここに入ったのは今日が初めてです。
なにかおすすめのものはありますか?」
すぐにでも酔いたい気分だったので、挨拶もそこそこにしておすすめのものを頼むことにした。
もとより酒の種類などもあまり詳しい方ではないし、とにかく早く記憶をなくすほど酔いつぶれたい。
「う~んと、そうですね~…お客様辛口と甘口どちらが
お好みですか?」
意外と細やかな気遣いができるバーテンダーなのか、自分のおすすめではなく、好みに合わせたおすすめのものを出してくれるようだ。
「甘口が好きです。」
辛口はどうも自分の口には合わないが、女性らしいカクテルなどフルーティーな味わいやチョコレートの風味がするものはむしろ好んで飲んでいた。
「かしこまりました!では、少々お待ち下さいね。」
そう張り切った声で即答すると、手際よくカクテルを作る準備をし始めた。
この見た目で繊細な手付きでカクテルを作るのは意外である。
思わず見入っていると、右隣の席にいた先客に声をかけられた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーー
読んでくださった方ありがとうございます!
お気に入り登録とても励みになります。
気が向きましたら、感想などもいただけると嬉しいです!
バー回思ったより長くなってしまい、まだ異世界要素が皆無なのでがんばります。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説





ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる