不幸の後に

妄想の人

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1、電車にて

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  家から数分の最寄り駅のホームで電車を待っていると、いつも視線を感じるのだ。

この近くには、会社の同僚や上司も住んでいないから知り合いでは無いはずなのだが、こうも感じ取れるはど見られていると気分のいいものでは無い。

一月ほど前から気づいてはいたが、何も害がないため対処のしようがなく放っておいた。



しかし、このところ視線を感じる場所が駅のホームだけではなくなってきたのだ。

この駅から家までの帰り道にもこのまとわりつくような視線を感じるのだ。

流石にまずいと思いはするが、証拠がないから警察に届け出るのもどうかと思う。

第一俺の勘違いかもしれないしな。


そんなことを考えているうちに、ホームに電車が到着した。
毎日乗っている電車に乗り込むと、つり革を掴み、カバンからスマホを取り出す。
今日のニュースや上司からのメールは無いかを確認する。


あいにく、友達がいないため遊びの誘いなどは無いが、営業先で気に入られた社長からの夕食のお誘いがたまにある。

美人女社長ならいいのだが、なぜか男でしかもイケメンの類からの、だ。

そんな人と二人で食事など、恐れ多いし自分との差に愕然とするだけなのでやめていただきたいものだ。



一言で言うなれば、イケメン爆せろ。


そう思いながらスマホの時間を確認するも、会社につくまでまだ一時間はある。

カバンから愛読しているシリーズの本を取り出し、読書にいそしむ。

電車の中ではいつもこんな感じで過ごしている。

面白味など皆無だが俺としてはそんなことはどうでもいいのだ。

この長すぎる通勤時間を潰すことが出来ればそれでいい。

そう思いながら読みかけの小説を開く。

昨日は疲れすぎて夜は読めなかったのでとても楽しみにしていたのだ。

この小説の著者はとても素晴らしい。何が素晴らしいって?

全てが素晴らしいのであって、何か一つをあげるのは難しいが強いていうとしたら複雑な感情を的確に絶妙に表現するところだ。

これはやろうと思ってできるものではない。

少しひねくれている表現さえもが的確で、初めて出会ったときは驚きを隠せなかった。

もともとあまり小説などに興味は無かったが、この本の著者と出会って文の素晴らしさにきづけた。

それからというものこの著者が書いたものを集め続けて今に至る。




おっと、ついつい熱弁してしまった。
他のことも語りだすと霧がないため、ここまでにしておこう。




好きなことができ、幸せに浸っていると、不意に誰かの手が俺の尻を撫で始めた。

たまたま手があたっただけだと思い、気にしていなかったがその手が明らかに知りの形をなぞるように撫でているのでこれが勘違い出ないことがわかった。

男のしかも三十路近い男の尻をなでて何が楽しいのか。

しかし、その尻をなぞる手が段々と前に移動してきている。

流石に声をあげようかと思ったが大の大人の男が痴漢されました!なんてはずかしくて言い出せない。




どうしよう!!




今までこんなこと経験したことがなくてただ焦る。

しかも俺の尻をなでているのは骨ばってゴツゴツした男の手で、何故かわかった瞬間とてつもない恐怖が襲ってきた。



自分が性的な目で見られて、その欲望を押し付けられていることに吐き気がして頭が真っ白になった。



どうしようもなくなって頭がグラグラと揺れ地面が沈むような感覚に陥る。



俺が固まっている間にも男の手が腰辺りまでをゆっくりとなで続け、更には股間あたりにまで近づいていた。


すると、耳元で

「抵抗しないんだかわいいね」


と囁かれた瞬間全身に寒気が走って恐怖が最高潮にまで上り詰めた。


体が勝手に震えて、喉が詰まったように息ができなくなって、嫌な汗が首筋を伝っていった。



もはやこの行為が早く終われと願うことしか出来ず、ただやり場のない嫌悪感が募っていく。



男の手がついに服の中にまで侵入し、体が大きくビクリと震えた。


男の荒い息が耳元に当たるたび吐き気が増し、鳥肌が立つ。


俺はギュっと目をつむってこの行為に耐えた

男の欲情がズボン越しにダイレクトに伝わってくる。


電車の中アナウンスがやけに遠くに聞こえた。

突然、男が俺の手を取った。

払いのけようと力を入れるがびくともしない。

どうするのかと焦り様子を探っていると、俺の手を後ろにいる男の股間に触れさせた。

驚きと戸惑いが俺の焦りを一層大きくする。

チャックを開ける音が聞こえたかと思うと、男のそれを握らされた。

そのまま、上下に俺の手を動かしてくる。

俺はどうすることも出来ずされるがままでいた。

そうしていると、男のものが大きく波打った。

その瞬間、俺の手に生暖かい粘つきのあるものが放たれた。

男が達したのだと思い至ったら気分がさらに悪くなった。




俺は耐えられず、電車の扉から駆け出した。


そのとき、振り返った男の口が


「またね」


と呟いていたように見え、寒気が走った。


    
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