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第51話 龍の遺産と卵

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亜空間倉庫の可能性に気付いた俺はあるべき先をイメージして亜空間倉庫から出るための扉を出現させる。

龍は自分の巣へ達するための道を俺に伝えなかったと思っていたが、それは間違いだと気付いたのだ。
俺に与えられた亜空間倉庫の扉の出口として龍の巣が登録されているはずだとね。

俺はその考えが正しいと確信したので龍の巣をイメージしながら扉を出現させる。
その扉の先は思った通り龍の巣だったのだ。

「主様、ここは」

「オイゲン、なんだ此処は」

2人の驚いた声が聞こえてくる。

「銀、サミー、進むぞ」

人はあまりに驚きが大きいと動けなくなるんだな。
銀とサミーがまさにその状態だった。
だが、俺の掛け声で静止していた2人が再起動する。

そして3人で扉から出ると薄暗かった洞窟が明るくなり、さっきまで気付けなかった巨大な物体が目に飛び込んでくる。

それはまさに王だった!
龍の中の龍、巨大な古龍が未だに生きているかの様にその姿を俺たちに見せている。
古龍は死して、なお巨大な威圧感を漂わせているのだ。

「ひいいい、オ、オイゲン、あれって龍、龍だよな」

サミーの声は龍に対する怯えに満ちている。

「そうだ、俺が殺した古龍だ」

「本当か、あれは本当に死んでいるのか?
私はアレからの威圧に押しつぶされそうなのだが」

「主様、私もです。これほどに何かを恐ろしいと思うのは初めてです」

「銀、サミー、心配するな、アレは死んでいるんだ。
でも、死してまでこれ程の威圧を与えられるとは、古龍とは本当に恐ろしい物だな」

「主様がそこまで言うなら確かにアレは死んでいるのですね。
頭では主様の言葉を理解しました。
でも感情がまだアレから逃げろと言っています」

2人とも怯えは無くせない様だな。

「心配するな、俺は龍の卵の守護者に選ばれたんだぞ。
例え龍が生きていたとしても、そんな俺に龍が害意を持つわけがないだろう」

「確かにな。オイゲンは龍の卵の守護者だからな」

「それどころか龍からは自分の死骸は好きにしろとの許可まで貰っているからな」

「主様、龍が自分の死体を主様に任せたのですか?」

「ああ、そうだぞ」

「それは凄いですね。でもあんな巨大な物、自由にしろと言われてもどうしようも無いのでは有りませんか?」

そう、銀の言う通りだ。あんな巨大な龍の死骸を俺たちは運び出す手段を持っていない。

……いや、手段はもらっているか?
亜空間倉庫だな
でも、あの巨大な龍を亜空間倉庫まで持っていくのも無理な話だ。

う~ん、これはアレだ。
俺が読んだラノベの世界では収納すると考えるだけで収納が出来ていたよな。
俺も同じように出来るのか?

出来るはずだろう、やってみるか。

瞬間、俺の目の前から、龍の死骸が消え失せる。

「ひゃ、主様、消えた、龍の死骸が消えました」

銀が騒いでいる。

「銀、消えたんじゃないぞ。亜空間倉庫に収納されたんだ」

「それは凄いな、さっきまでいた場所に龍の死骸が移ったのか」

サミーに言われても龍の死骸の収納先を意識すると面白い事がわかる。
どうやら、さっきまで俺たちがいた空間とは別の場所に収納されているらしい。

ほう、そんな所があるんだ。

「亜空間倉庫は亜空間倉庫だが、時間停止オプションが付いている別区画に収納されている様だ」

「時間停止オプション?」

「時間が経過しない場所だ。その区画に入れておけば生ものの劣化が防げる様だな」

「それはまた、とんでもないな。
でも、良かったな、龍の死体を売り捌く伝も今は無いし、大体こんな物を持ち込んだら大騒ぎだろうしな」

「そうだな。俺達の都合の良いタイミングで売り捌く事ができるのは助かるな」

本当に助かったよ。
今の俺がこんな物を持ち込んだら大騒ぎで収集が付かなくなる。

下手をすると、いや確実に龍の死体を王国に献上しろと言われるだろう。
更には、その見返りと称して叙勲とかされて王国の戦力に組み込まれてしまう。
そうなれば帝国との戦いで最前線に出されるだろう。
そんなのは真っ平だ。

「さあ、龍の死骸の始末はついたからな、先に進むか」

そう言って前を見れば探すまでも無い。
亜空間倉庫に有ったのと同じような祭壇がありそこに大きな卵が2個鎮座している。
それと、その側にはキラキラ光る小山が見える。

「主様、あの卵が龍から託された卵ですか?」

「その様だな」

「なあ、オイゲン、その側で黄金色に輝いている小山はなんだ」

「アレは、龍が言っていたお宝だろう。
龍は黄金や宝飾品の様に美しく輝く物を集める習性があると聞いていたが、あれはまた凄い量だな」

「なあ、アレは持って帰れるのか」

サミーがオズオズと俺に聞いてくる。
凄いお宝だが龍の祟りが怖くて持って帰るのに躊躇している感じだ。

「まずは、卵を移動させる」

俺の言葉で目の前から卵が消える。
そして何となくその卵が亜空間倉庫の祭壇に鎮座したのを感じ取る。

「主様、卵がきえた」

「ああ、亜空間倉庫の卵の置き場に移したぞ次は、お宝だな」

「なあ、オイゲン、アレに手を付けて龍は祟らないのか」

やはり、サミーは恐れているんだな。

「サミーは心配性だな。お宝も龍が俺にくれると言っていたから祟られたりはしないぞ」

「わっ、消えた」

「ああ、お宝も亜空間倉庫に全部収納したからな。
後で欲しいものがあれば銀もサミーも好きにとって良いからな」

俺の言葉にサミーは嬉しそうな、でも怖そうな反応をする。
宝物は欲しいけど龍の祟りは怖いっていう所だろう。

「じゃあ、亜空間倉庫を経由して朝のキャンプ場所に戻るぞ」

そして、俺は亜空間倉庫の扉を出現させる。
中に入ると卵もお宝もしっかりと格納されているのがわかる。
やはり龍の死体は別の場所に格納されている様で見渡しても見つからないな。

そして俺と卵にパスが繋がっているのを感じ取る。
俺の中の魔力がマナに変換されて卵に注ぎ込まれている。

その後は昨日と同じ場所で再び大量破壊兵器の実験だ。
威力を元の10%、1%、0.1%、0.01%と落としながら再現する
最後の威力なら極大魔法と言っても平気そうな威力なので使えそうだ

それでも、戦争で使えば大量殺人は必須なので出来れば使いたくないものだ。

「なあ、オイゲン、オイゲンの魔法はどんだけ規格外なんだ。
あの威力もそうだがそんな魔法を続けて何発も発動するなんて。
人の力で出来る物では無いと思うぞ」

そうだよね。あの威力に応答するエネルギーを人の力で生み出すのはマナを使っても無理だろう。

でも、俺は1日に1グラムの物質を作る能力だけで実現しているんだけどね。
今日の実験では4回で0.1g、0.01g、0.001g、0.0001gの反物質を使っただけだから合わせても0.1111gの反物質を作ったにすぎないんだ。

「サミー、不思議だろうけど俺にはできるんだ。
その気になればまだまだ発動は可能だよ」

「はあ、まあ主様だから出来るのだろうな」

「ああ、オイゲンだからな」

どうやら2人とも考えるのを止めてしまった様だ。
取り敢えず俺を規格外としておけば色々と悩むことも無いんだろう。

人外の威力がある魔法を俺だからと思考停止して受け入れたのに銀は浮かない顔をまだしている。
そして申し訳なさそうに俺に質問をしてくる。

「それで、主様、ゴブリンから救った娘達をどうするかは決めたのか」

その質問は出来れば忘れていたかったんだが、そうもいかないか。

「ああ、決めているぞ、と言っても本人に決めさせるつもりだがな」

「本人達にですか」

「そうだ、本人達にだ」

俺はそう言うと亜空間倉庫の扉を出現させる。

「銀、サミー、亜空間倉庫を経由してゴブリン達の巣の側に戻るぞ」

「「ハイ」」

俺は2人を引き連れて扉を開ける。

生と死を選択させると言う不愉快な仕事が待ち受けている場所に戻るために





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