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第39話 それぞれの思惑

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僕は今、父さまのお部屋にいます。
父さまに辺境伯様がなにを考えているか確かめる必要があると思ったからです。

「父さま、なんで僕がポーションを作ってるって事を認めてしまったんですか」

「辺境伯様も言ってただろう。状況証拠が揃っていて認めるしか無かったんだよ。
それに、デイジー様をオイゲンの嫁に出す。
オイゲンを辺境伯家の身内にしたいとまで言われては話さざる得ないだろう」

「それです、それ。
デイジーを僕の婚約者とかおかしいですよ」

「デイジー様の婚約に関しては、そもそもデイジー様の婚約者を選ぶ為に寄子の後継達を演習の機会に合わせて一堂に集めたらしいぞ。
その中でオイゲンがお眼鏡にかなったというわけだ」

「ねえ、父さま?
僕のどこがお眼鏡にかなったんですか」

「それなんだがな。どうやら辺境伯様はデイジー様の婚約者を選ぶに際して家柄や血筋には拘らずに選ぶと決めていたみたいなんだ。
そもそも、家柄や血筋で選ぶなら寄子の後継の中からは選ばないだろうしな」

「そこです、そこ。
なんで辺境伯様は家柄や血筋に拘られないんですか」

「今は平時ではないからだそうだ。
平時なら家柄や血筋で選べば間違いはないが、有事では生き抜く力が大切だとお考えの様だな」

「生き抜く力ですか?
僕にそんな力はあるんですかね」

「オイゲンの力は領地や領民に根ざしてないからな。
オイゲンは自分で富であるポーションを生み出せるだろう。
だから王国が滅びてもオイゲンなら生き延びられるだろう」

確かに僕には領地や領民は必ずしも必要ないですね。
ポーションを作って売ればどこでも生きていけますね。

「そうですね。僕は父様の後を継がなくても生きては行けそうです」

「そうだな。それでも、男爵家や子爵家の後継でそれなりの人物がいればオイゲンは選ばれなかったはずだ。
結局はオイゲンを選ばざる得ないほど寄子の後継には有望な男は居なかったって事じゃないのかな」

父さま、それって僕を少しも褒めてないですよ。
消去法で残ったので止む無くみたいに言われてしまいました。

「でも、辺境伯様の最大の使命は国境を接する隣国から王国を守る事ですよね?
そう考えるといざと言う時に応援の兵を潤沢に出してくれたり、資金援助をしてくれる親戚を増やすためにデイジーさんの婚姻を利用するんじゃないですかね?」

「まあ、普通の貴族ならそう考えるわな。
正直、辺境伯様のお考えを俺如きでは推し量れんよ。
それに、婚約と言ってもまだ子供だからな
取り敢えずの当て馬で、本命が出てきたら破棄するおつもりかもしれないぞ」

婚約話が面倒くさいので当て馬を使って取り敢えずの婚約をでっち上げる。
5年後ぐらいに本命を決めたら婚約は解消ですか。
いかにもありそうですね。
そう、きっとそうです。僕は当て馬なんでしょう

確かにポーションは貴重ですけど、辺境伯家からすればそれで娘の嫁ぎ先を決める様な物でもないですよね。

そう考えると肩の荷が降りた感じですね。

☆☆☆☆☆

オイゲンがカルロスとデイジーとの婚約の件で話をしていた頃。
辺境伯と夫人は人払いをして談話室に2人きりでやはり話し合いを行っている。

「貴方、正直に申しますと貴方がデイジーをオイゲン君の婚約者にしたのには驚いてますの」

「そんなに驚く事か?
オイゲンがいなければ儂はお前を失っていたんだぞ。
お前とここでこうして話していられるのもオイゲンのおかげだろう」

「まあ、貴方、おとぼけが過ぎますわ。
デイジーは我が家の権勢を強めるための重要なカードだとおっしゃっていたじゃありませんか。
私の命を救ったくらいでその大切なカードを貴方が切るはずはありませんわよね」

辺境伯の妻として辺境伯に長く寄り添っていたルーシには今の辺境伯の言葉が真実で無い事は自明の様だ。

「そうだな、まあ良い機会だ。お前には儂の本音を伝えるとしよう」

「貴方の本音ですか」

「そうだ、本音だ。
お前は、我が王国と帝国のどちらが強国だと思うか」

「本音ですよね。それであれば帝国です」

「では、先の帝国との戦いになぜ王国は勝利したと思う」

「それは、王国内で持久戦に持ち込んで帝国の兵站に負担をかけて破綻させた事
乾坤一擲の王国の反攻作戦で帝国の前線を破綻させ結果として帝国軍が総崩れになり撤退したト聞いていますわ。
この辺が一般的に聞く理由かと思います」

「そうだな、それが一般的な評価だな。
だが、本当の理由は別にある。
本当の理由は帝国が王国への侵攻に動員できた兵力が動員可能兵力に比べて少なく、かつ動員できた兵力が1.5軍だったせいだ」

「そんな、我が国では帝国の大侵攻と言われているのですが」

「国民を鼓舞するには良い言葉だな。
だが、実態は帝国の帝位継承の争いで優位に立とうとした第二皇子の勇足だな。
だから、帝国の兵は第二皇子が動員可能な一部の国軍と第二皇子を皇位に着けようとする諸公の軍で構成された1.5軍だったのだ」

「まあ、皇位継承の為に我が国へ攻め込んだんですか。
そんな事の為に我が国の多くの若者が死んだと言うんですか」

ルーシーの顔が怒りに歪む。

「ああ、不愉快な話だ。
だが不愉快と言って済ませるわけにはいかないな。
何しろそんな軍相手に我が国は総力戦を強いられたんだからな」

「そうだったんですね」

「そして、今帝国の再侵攻が避けられないわけだ。
今の帝国は新しい皇帝が即位して一枚岩になっている。
その皇帝は王国を攻め滅ぼす気だ。
つまり、今度は帝国の精鋭が王国を滅ぼす事を戦略目標として襲いかかってくるわけだ」

前回より遥かに優秀な帝国軍が王国を滅ぼす為に攻めて来る。
その言葉の重さをルーシーは噛み締めている。

「でも貴方王国だって帝国の再侵攻に備えて準備をしていますわ」

「ああ、してるな。
だが元々の国力の差は如何ともし難いものがあるな」

夫の言葉にルーシーの顔が歪む。
そして躊躇の末にルーシーは夫にしてはならない質問をする。

「では。貴方は王国が亡ぶと」

「亡ぶまで行くかは別にして帝国との戦いには負けるだろう。
贔屓目に見ても王国は揺らぐ。
場合によってはお前の言った通り帝国に王国は滅ぼされるかも知れん」

「そ、そんな」

ルーシーは自分が言った最悪の言葉を夫が肯定することに恐怖する。

「ああ、悲劇だ。だがかなりの確率で起こるだろう。
そうなれば国王から与えられている領地や爵位などどうなるか全くわからんのだ」

「そうですか。貴方はそんな未来に備えているのですね」

「ああ、だから領地や爵位を除いた状態でデイジーの嫁ぎ先は選ぶ必要があると考えていた。
それとな、我々が治める土地は帝国から遠い上に辺境の貧しい地で態々収奪するまでもない領地だ。
だから帝国も我々を滅ぼして帝国の貴族と入れ替える利が薄いのだ。
そんな帝国に降っても存続が許されそうな中領地の領主候補とデイジーを婚約させようと考えていたのだ」

「それで、寄子の中からデイジーの嫁ぎ先を選ぼうとお考えになったのですね」

「ああ、名目上は我が派閥の結束強化だがな」

徹底的なリアリストである辺境伯にとっては王国の存続は二の次なのだ。

「それであれば、騎士爵の後継でしか無いオイゲンをデイジーの婚約者にする必要は無かったのでは有りませんか」

「まあな、だが帝国が王国の貴族をすべからく滅ぼすことが無いとも言えんしな。
その場合でもオイゲンであれば他国に逃れてでも生き抜くだろうよ。
デイジーの夫候補の中で見た場合、男としてはあいつが一番だな」

「デイジーへの保険ですか」

「ああ、騎士爵の息子とデイジーの婚約など儂の一存でいつでも破棄できるしな」

辺境伯が悪い顔で笑う。

「まあ、貴方ったら」

「儂の大切な妻の乳を弄んだのだからな。
それくらいは覚悟してもらわんとな」

そういうと辺境伯は立ち上がりソファーに座るルーシーを見据えます。

「そろそろお前をしつけ直すとするか。
お前の乳に残るオイゲンの感触を上書きせんとならんだろう。
さあ、儂にお前の乳を見せるのだ」

辺境伯の一言でルーシーはメスの顔に変わります。

「ハイ、ご主人様」

ルーシーは談話室で躊躇なく服を脱ぎ始めます。
辺境伯に嫁いでからの日々でルーシーは辺境伯に従順なメスに躾けられているのです。

「ふん、どこでも恥ずかしげのなく裸になるのだな」

「はい、ご主人様の教育の賜物ですわ」

服を脱ぎ去ったルーシーは妖しく笑うと裸体を余す事なく辺境伯に晒します。

「ほう、これは大した物だ。
本当にデイジーを孕ませる前のお前だな、
しかし気に入らんな。
儂が大きくして垂れ下がるしか無かったお前の乳が元に戻っているではないか。
ふん、儂が作り上げた裸がオイゲンに作り替えられるとはな」

不愉快そうに呟く辺境伯にルーシーが縋り付くように迫ります。

「ご主人様、もう一度私をご主人様の思うように染め上げてくださいませ」

「それも一考か、なんだ、お前は、随分と嬉しそうだな」

「はい、ご主人様にもう一で染め上げていただけると思うと嬉しくて、嬉しくて。
ご主人様、このように胸もドキドキしていますのよ」

ルーシーは辺境伯の腕を取り手を胸に導きます。

「懐かしいな、このお椀型の胸も。
まあ、すぐにだらし無く垂れる巨乳に育ててやるぞ」

「はい、ご主人様」

こうして辺境伯とルーシーの長い夜が始まるのでした
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