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三品目 和風ハンバーグ

十二話 みんなでこねこねハンバーグ(2)

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「む? む? こうかアカ?」

「そうそう茜、いい感じよ」

「なんだか粘土遊びに似てるアオ! だんだん楽しくなってきたアオ!」

「おー! 葵はノリノリじゃない!」


 初めは恐る恐る混ぜていた二匹も次第にコツが分かったようで、楽しそうにタネをこねこねする。
 ちなみにこのタネを混ぜる作業は、肉汁を内側に閉じ込めふわっとジューシーに仕上げる為には欠かせない、重要なポイントだ。ちゃんと全体が混ざるように、しっかりとこねこねしよう。


「うんうん、二人ともよく混ざったわね。さ、次はタネを成形よ!」


 これも小鬼たちと一緒にやればすぐに出来た。成形は次の焼きの工程で表面が均一に焼けるように、真ん中にちょっとだけくぼみを作るのがコツだ。


「あれー茜のまんまる過ぎアオ? 桃花のは綺麗な楕円形だえんけいアオ」

「んなっ!? そう言う葵は俵形になってるアカ! それじゃあ上手く焼けずに生焼けになるアカ!」

「んん!?」

「はいはい、どっちも上手に出来てるからケンカしない。いっぱいタネが作れたし、早速焼いていきましょう!」


 どっちのタネの形がいびつかで言い合いを始めそうな二匹を制して、わたしは油をひいて熱したフライパンにタネを並べていく。
 するとすぐさまジュージューと肉の焼ける良い音と香ばしい匂いが、台所中に漂ってきた。


「うおおお、アカ!」

「香ばしい、いい匂いだアオ!」


 これには茜と葵も、すっかりハンバーグに釘付けだ。
 くるんとタネをひっくり返すと、露わになった美味しそうな焼き色に、更に二匹は歓声を上げる。


「「うおおおおおお!!」」

「あはは、そんなに喜んでくれたら作り甲斐あるわ」


 綺麗にこんがりと焼き上がったハンバーグはお皿に移して、大葉と大根おろしをトッピング。更にその上から特製のポン酢ソースをかければ完成だ。


「はい出来た! 名付けて、和風ハンバーグ定食よ! 付け合わせのナスの煮浸しとなめこ汁も召し上がれ!」

「よっしゃー! 早く食べたいアカ!」

「手伝ったらすっかりお腹空いたアオ!」

「はいはい、ちゃんと食堂でいただきますしてからよ」


 待ちきれない様子の二匹を宥めつつ、慌ただしく食堂に入って席に着く。
 するといただきますもそこそこに、茜と葵はがっつくようにしてハンバーグにかぶりついた。


「うまぁ! なんだこれ! 噛むと美味い汁がじゅわっと出てくるアカ!」

「それが〝肉汁〟っていうものなのよ。お肉の旨みが溢れて美味しいでしょ?」

「肉なのにさっぱりしてて不思議だアオ! それでいて米にもすごくよく合うアオ!」

「大根おろしとポン酢ソースで和風にしてるからね。ソースには隠し味でレモン汁も入れてるから、より後味がさっぱりするのよ」

「「おかわりアカ(アオ)!!」」


 さすが子どもが大好きハンバーグ。二匹が子どもかは謎だが、がっつく勢いはいつまでも衰えない。


「桃花! ご飯もおかわりアカ!」

「オイラもアオ!」

「はいはい」


 うん。こうしてみんなで囲む食卓って、やっぱりいいな。落ち着くし、心が温かくなる。

 わたしは冥土に来る前はどんな風に生活していたんだろう?
 家族はいたのだっけ……?


「……うーん?」


 思い出そうと頭を捻るが、やっぱりわたしの記憶は頑丈にロックされているようで、結局何も思い出せなかった。
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