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二度と離さない
しおりを挟む「うっ、ッグ、ぁ……アアッ」
「ははっ、初めての時の俺とは、大違いだなっ?」
ベータにしては太いペニスを、大して慣らしもせず突っ込んだが、翔大は体を震わせて低く呻いただけだ。潤滑油の助けを借りているとはいえ、出血どころか苦痛すら感じていないような顔で、ハァハァと情けなく喘ぐ。早くも快感を拾っているようで、声は甘えるような色を孕んでいた。
「ゆ、き……ヤバイ……ッ」
「はぁ?お前、挿れただけでイキそうなの?」
「うっ、だってッ」
ベッドに横たわる体をぐっと抱き寄せれば、アルファの凶悪なペニスは俺の下腹を押し上げようとする。腹筋を押し付けてぐっと圧をかければ、それだけでブルリと震え、今にも爆発しそうに膨れ上がっていく。
「まだッこれからだろッ」
「や、待っッ、こ、んなッ、あ゛あーッ」
乱暴に抽送し、尻たぶを鷲掴んで腰を叩きつけた。下生えが摩擦を軽減してくれるが、パイパンだったら発火していた気がするほど乱暴に抜き差しを繰り返す。翔大の内腔は熱く蕩けていて、抵抗は全く感じなかった。
「あっ、あっ、ゔッ、んあーッ」
「ぐゥッ、うっ、ハァッ、ゥうッ」
粘膜が擦れ合い、激しい興奮に互いの熱が上昇していくのが分かる。完璧な美貌を歪めて、狂ったように頭を振りバリトンの声を濁らせて喘ぐ翔大に、俺は嫉妬で脳髄が焼き切れそうだった。
「お前、なんだよこのアナはッ!どんだけ雄を咥え込んだんだよッ」
「うううっ、あーーーッ!」
激しく突き入れると、翔大がそれだけで耐えかねたように叫んで射精した。ビュルルルッと音が聞こえそうな激しさで、膨れ上がった巨大なペニスから俺の顎先まで精液が飛んでくる。わずかに唇にかかった液体を舐めとれば、当たり前のように不味い。けれど、昔よりも甘く感じた。まるで翔大が雌になった証のようで怒りが増す。けれど、罵ろうとすれば、下から睨みつけられた。
「お前、に言われる筋合い、ないだろっ!?」
「はぁ!?うっ、く、アッ」
逆上している俺を、組み伏せられた体勢のまま、翔大は下から睨み上げる。叩きつけるような罵倒とともに、後孔をきつく締め上げられて、俺は情けなく腰を突き出したままぶるりと体を震わせた。
「お前が、俺を、振ったんだろ!?」
「んっ、んだよ!お前だって、簡単に頷いたくせにッ」
離れたくないとも、別れたくないとも言わなかったくせに。
付き合っている間だって、好きだとか愛してるとか、一緒にいたいとか、そんなことちっとも言わなかったくせに。
「お前こそ、いい加減にしろよ!今更好きとか……ッ」
病室のベッドの上で、力なく言われた愛の言葉が何度も頭の中を反響している。
「ヤッてる最中でもなくて、素面で、好きだって聞いたの、さっきのが初めてな気がするんだけど!?」
「っあッ、んな、ことねぇだろッ」
「あるよ!」
「んあっ」
蠕動して精子を搾り取ろうと蠢く臓器に逆らって、窄まりの奥を抉る。二十年近く抱いてきた、一方的な怒りとやるせなさ、やり場のない苛立ちと悲しみ、そんなものを全てぶつけるように、俺は乱暴に翔大を犯した。
「俺が言い出したお遊びに乗っかって、なし崩しに恋人になってさ、……お前、一度だって俺に、付き合おうとか言ったことあったかよ!好きとか愛してるとか、言ったことあったかよ!?」
俺がちょうど良くて、俺がいるのが当然で、俺がいなけりゃ困るから。
だから恋人というよりも、体の関係のある親友みたいな立ち位置を、十年も続けていたのだと、俺は心の底でずっと思っていた。
だからあの時、未来の見えない愛を貫くだけの情熱を持てず、俺は別れを選択したのだ。
「今更……いまさらッ」
「んぐっ、あああっ」
怒りのままに、身体中を支配する獣欲に従う。怒張とはよく言ったものだ。思考が焼き切れるような激昂の中、俺のペニスは萎えることもなく、更なる膨張を見せているのだから。
「俺を好きだからッ他の雄に抱かれたって!?ふざけんなよクソがッ」
罵りながらひたすら奥へ奥へと叩きつける。翔大の長大なペニスと比べて長さの足りない俺のモノじゃ、結腸には辿りつかない。きっとコイツを抱いたアルファの中にはこの奥を知っている奴もいるのだろう。そう思うと悔しくて妬ましくて、相手も知らないのに殺意が湧き上がった。そんな荒れ狂う俺の内心を知ってか知らずか、翔大は尚更に俺を煽ってきた。
「んっ、お前だって、奥さん抱いたんだろ!?」
「ははっ、当たり前じゃんッ」
「じゃあお互い様じゃねぇかよ!」
「ちげぇよ!俺は、お前以外に抱かせたことはねぇ!!」
俺が内臓を抉ることを許したのは、コイツだけだ。抱く側でありながら、抱かれることを受け入れたのは、相手が翔大だからだ。
「一緒にすんじゃ、ねぇよ!」
「んぁっ、あああぁあッ」
俺が渾身の力で前立腺のしこりをグリッと抉り込めば、翔大は背中を反らせて再び精を放った。収縮する内壁に、とうとう俺もつられて達した。何年分かと思うような、長く激しい射精だったが、それでも二度目の射精である翔大にも及ばない。どこまでも雌を抱き、孕ませるアルファである翔大を、俺は上から見下ろしながら、腹の奥から嗤った。
「ははっ、とんだ淫乱に堕ちちゃったんだなァ?」
「あ……んぅ、ゆぅ、きぃ」
俺の下でビクビクと震える翔大のペニスからは、まだダラダラと白い涎がこぼれている。とてもアルファとは思えないような浅ましくみっともない様に、俺はとんでもなく興奮した。
「こんなベータのお粗末なモンで感じられるなんて、どれだけ開発されたんだ?クソッ」
大した技巧もなく、持久力も硬度も長さも太さも足りない俺のモノで、ヒート中のオメガのように蕩けている様に、翔大の過去が思い起こされて、俺は思考も感情もぐちゃぐちゃだった。
「あっ、……ちがっ、こん、なっんん、なったこと、無ァんんん」
「そうやって後輩たちを歓ばせたのか!?」
まるで娼婦のような台詞を吐く翔大に、悲しさとやるせなさと怒りと嫉妬と失望と、ありとあらゆる暗く泥ついた感情が渦を巻いた。
痙攣しながら、俺を求めるように伸ばされた腕に、嗜虐的な喜びと圧倒的な支配欲が込み上げる。
この雄を殺してやりたい。
この雄を、アルファとしてもう二度と生きていけないようにしてやりたい。
もうどんな雌もこの太く逞しいペニスで犯すことが出来ないように。
そしてこの雄を雌にして、この尻の雌穴を俺だけのモノにしてしまいたい。
「あははははっ」
アルファの男をベータの男が犯す。
ありえない世界だ。世界の規律への反逆だ。種の本能への反乱だ。
でも、良いだろう?
「なぁ翔大、俺が欲しいのはお前だけなんだ」
お前が俺を望むと言うのなら、俺もこの醜く浅ましい欲望に従って、どこまでも貪欲にお前を求め、貪り続けてやる。もう二度と、たとえお前の運命が現れようとも、決して離してやるものか。
「一緒に堕ちよう?どこまでも」
次にお前と離れるのは、死ぬ時だ。
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(『ride』は2021年3月28日に追加します)
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