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番外編 他者視点

友人Sと友人Yの思うところには1

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「……あ。譲と涼哉じゃん」

数十メートル前方に友人二人の姿を見かけて思わずぽつりと言葉が漏れた。

「よかった、仲直りしたんだ……」

心底からの安堵で思わず深く息を吐く。これでやっと平和な日々が戻ってきそうだ。俺がじーんときて泣きそうになっていると、俺の背後からもう一人、中学からのが顔を出した。

「あれ?仲直りしたんだ、あの二人」
「おう、みたいだぜ。……やっとだな、ヨシキ」
「あーやっとかあー!乗り切ったなぁ、サトル」

俺と同じような顔でため息をついて、拳を出してくる。こつん、と合わせて同時に頷く。

「これでやっと落ち着けるな、お互いお疲れ様」
「まじそれな。お疲れ様」

表面上は取り繕いながらも明らかにイライラしているアイツらがとこないように、良きタイミングで割って入って周囲との緩衝材になるのも今日でおしまいだ。あいつらは人望というのか人気というのか知らんが、無駄に人を惹きつけるから、キレた時周辺への被害もやたらと大きくなるのだ。

「はぁ……つかれた」

まじで疲れた。
これからは安穏と大学生生活を謳歌させてもらうぞ。

「え?あの二人喧嘩してたの?」

更に後ろから追いついてきた女子達は、俺たちの会話にキョトンとしている。

「さぁ?でも言われてみれば、最近微妙に距離あった気もする?」
「ふーん、でも、なんか前より距離近くない?」
「本当だー、ふたりとも見た目綺麗だからさ、目の保養だよねー」

好き勝手言っている彼女達を横目にスルーしていたら、ふとゾクリと背筋が震えた。

「げ」

チラッと背後を見たら、凄まじい眼光でこちらを睨みつけてくる涼哉を確認してしまい、俺は「オーマイガー」と呻く。同じくひんやりした殺気を感じたらしいヨシキも、「まあまあ」と言って女性陣をと反対側へ向かうよう促した。

「仲良きことは美しきかな、でしょ。そんなことより南食堂行こうぜ、今日はインドカレーフェアのはずだし」
「そうしよそうしよ!俺腹減って死にそう」

ヨシキと二人がかりで鈍感で無頓着な集団を誘導しようとするが、空気の読めないコイツらは危機感もなく余計なことを言い出す。

「あはは、サトルってば相変わらず食い意地~」
「ってか、せっかく見つけたのに、ゆずくん誘わないの?」
「そしたらテニス部の王子もくっついて来るんじゃない?」
「あ、それいい!王子の顔、一回近くで見てみたい」

きゃっきゃとはしゃいで、「おーい」と向こうに手を振ろうとする女子三人組を「待て待て待て」と押し留める。まじでやめろ。譲単品の時と譲・涼哉セットの時では難易度が全然違ぇんだよ、対応難易度が!

「譲は辛いもん嫌いだし、涼哉は知らん人間と飯食うの苦手だからやめとこ?ってかさ、俺マジで腹減ってんだよ、さっさと行こ行こ!」
「さんせー!マジ腹減って碌な思考にならねぇ。まずは飯食おうぜ」
「えーなんでー」
「いいじゃーん」
「だーめ!あいつら来ると、女子が集まって静かに飯食えねぇんだもん!」
「こころせまーい」

ちっ。譲とわりと仲が良い面子だからか、余計なことを言いやがる。……仕方ねぇか。最終手段だ。

「おい、さっさと行くぞ!」
「今なら俺たちの奢りだぞ?」

ヨシキと俺の苦渋の一手、昼飯奢り大作戦だ。

「は?まじ!?」
「気が変わる前に来いよー」
「行く行くー!」

明らかにぎろりとこっちを睨んで譲を隠していた涼哉の視線から逃れるように、俺とヨシキは女性陣を背中で隠して追い立てた。
己の財布を痛めつけてまでお前ら二人の時間を確保したんだ。恩に着ろよ?……絶対無理だけどな。






「はぁ、焦ったわ」
「おつかれさん」

大学も部活も終わり、俺とヨシキと二人で安酒の缶をいくつか買って俺の自宅に戻る。

「いやぁ、やっと落ち着けるなぁ」
「まじ怖かったもんなー、ここ最近」

しみじみと呟くヨシキに無言で頷いて同意する。
数日前の飲み会で二人が揉めているのを見てから冷や冷やしていたが、なんとか収まるところに収まったようだ。

「やっと付き合い始めたんかね?」
「さぁな。でもそうあって欲しい。もう疲れた」
「同感」

はぁ、と大きなため息を吐きながらお互いに缶を煽る。

あの二人がお互いに向けている激烈な独占欲は、昔から有名だ。自分は中学高校も彼らと一緒だったから、今更だけれども。

昔は見るからにヤバかった。お互いに相手に近づく人間を牽制して威嚇しまくっていた。
何より、本人たちに自覚がないのが恐ろしい。

彼らとはその上で築いてきた人間関係だが、
大学に入ってそれなりに人間的成長を得た彼らだが、外面を取り繕うことはできても、やはり本質は変わっていないらしい。

「……ほんと、涼哉が落ち着いてくれてよかった」

おそらくは欲求不満ではない衝動をおさえるために、涼哉は男も女も手を出しまくるから、このままじゃ部の過半数が竿兄弟姉妹になってしまうところだった。マジで気持ち悪い。が止まってくれて、本当によかった。
だが、しみじみと呟く俺に、ヨシキはキョトンと首を傾げた。

「え?譲のがヤバくね?」

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