43 / 65
神殿送りになった転生ヒロイン、隣国の皇太子のMっ気を開花させてしまったので責任を取ります
3
しおりを挟む
煽る気満々で言い放った私に怒りを露わにしたのは、目の前で肩を落としているイケメンではなく、それまで静かに私たちの愉快な会話に聞き入っていたはずの護衛の一人だった。
「下手に出ていればどこまでも無礼な!礼どころか謝罪まで強要するとは……ッ!本来なら、この方はお前なんか口も聞けないお方なのだぞ!?」
とうとう我慢の限界を超えたらしい。怒りに燃えた目でこちらを睨み、怒鳴りつけついでに剣を突きつけてきたのだ。
「生臭聖女め、いいか、このお方は……っ」
「よせ!」
もう一人の年嵩な方の護衛が、私に突きつけられた剣を奪い、暴走した若手を抑える。ちなみに私は自分自身に守護魔法をかけていたので傷一つ付いていない。風圧で若干スカートがめくれたくらいだ。でも誰も見てくれなかったので、ラッキースケベにもならなかった。
「お前の気持ちはわかる、だが落ち着け!」
「くっ、隊長……っ、俺は悔しくて……っ!」
「堪えろ!」
「ううっ」
なんだこいつら。
なんか前世のマンガとかでよく見たようなやり取りをしている護衛二人組を横目にチラリと見る。そのまま詳細を暴露してくれても構わないんだけど、ちゃんと黙るのねぇ、残念。まぁ、別にいい。本人に聞くだけだ。
「なによ、やっぱりお偉いお貴族様なのね?」
「……い、いや」
「まぁ髪の艶も肌の艶も良すぎるし、洋服はめちゃくちゃにお高そうな生地に細かい魔石まで縫い付けてるし、武器にも服にも盛りだくさんの加護魔法が付与されてるし、見れば分かるけどね」
「う……いや、まぁ、そうだな」
私の的確な審美眼と観察眼に恐れ入ったのか、男は一度否定しようとしたものの諦めたらしい。悔しげにこちらを睨んでくる。私はハハンと鼻で笑いながら男を見返した。
「で……なのになんで、こんな片田舎で死にかけてるのよ」
まるでイタズラをした悪餓鬼に反省を促す教師のように腕組みしながら「言いなさい」と促すと、イケメンは少し気まずそうに口を開いた。
「うっ……ちょっと、事情があって、……家から飛び出したのだ」
「は?家出?くはっ、バッカ~!それで家臣クンを死なせかけたの?あまりにも馬鹿でウケる」
「やめろ女!アルベルト様は命を狙われたのだぞ!?仕方なかったのだ!」
「おいっ!」
「あら、お家騒動かぁ」
それでお名前はアルベルト様って言うのね?なんか聞いたことあるようなないような名前ねぇ。まぁよくある名前だしな。
「で、差し向けられた刺客にやられたわけでもなく、たまたま遭遇した魔狼に殺されかけた、と。……運が悪いのねぇ」
しみじみと言うとイケメンは顔を赤くしながら表情を歪めている。随分と悔しそうだが反論出来ないようだ。やっぱり可愛いところがあるわね。そう素直な反応をされると、つい虐めたくなってしまうではないか。
「ふーん、情けなぁい」
「なに!?」
私がクスクス笑いながら言えば、若いだけあって血気盛んなイケメンはカッとなって顔を上げた。
「やられっぱなしで、勝ち目もないって言って逃げてきたってことでしょー?強そうな見た目して、軟弱なのね」
「そんな簡単な話ではないのだ!戦を起こすわけにはいかん!そうなれば、たくさんの弱き民が犠牲に……」
「なんで?」
「は?」
滔々と語ろうとするのを、私は小首を傾げて一言で止めた。
「民が犠牲になる前に、さっさと勝てばいいじゃない」
「そ、んな無茶苦茶な……出来る訳が……」
「だって、トップの首を獲れば戦はおしまいでしょ?教科書に書いてあったわ」
「……は?」
適当な発言だが、こちらの世界では少なくともその通りのはずだ。いくつかの戦争は国王の戦死や病死であっさり終結している。だって乙女ゲームの世界に血生臭い戦争なんて似合わないもの。うまくやれば無駄な血が流れないようになっているのだ。
しかし目の前の人達は逆に、私を過激派だと捉えたらしい。
「下手に出ていればどこまでも無礼な!礼どころか謝罪まで強要するとは……ッ!本来なら、この方はお前なんか口も聞けないお方なのだぞ!?」
とうとう我慢の限界を超えたらしい。怒りに燃えた目でこちらを睨み、怒鳴りつけついでに剣を突きつけてきたのだ。
「生臭聖女め、いいか、このお方は……っ」
「よせ!」
もう一人の年嵩な方の護衛が、私に突きつけられた剣を奪い、暴走した若手を抑える。ちなみに私は自分自身に守護魔法をかけていたので傷一つ付いていない。風圧で若干スカートがめくれたくらいだ。でも誰も見てくれなかったので、ラッキースケベにもならなかった。
「お前の気持ちはわかる、だが落ち着け!」
「くっ、隊長……っ、俺は悔しくて……っ!」
「堪えろ!」
「ううっ」
なんだこいつら。
なんか前世のマンガとかでよく見たようなやり取りをしている護衛二人組を横目にチラリと見る。そのまま詳細を暴露してくれても構わないんだけど、ちゃんと黙るのねぇ、残念。まぁ、別にいい。本人に聞くだけだ。
「なによ、やっぱりお偉いお貴族様なのね?」
「……い、いや」
「まぁ髪の艶も肌の艶も良すぎるし、洋服はめちゃくちゃにお高そうな生地に細かい魔石まで縫い付けてるし、武器にも服にも盛りだくさんの加護魔法が付与されてるし、見れば分かるけどね」
「う……いや、まぁ、そうだな」
私の的確な審美眼と観察眼に恐れ入ったのか、男は一度否定しようとしたものの諦めたらしい。悔しげにこちらを睨んでくる。私はハハンと鼻で笑いながら男を見返した。
「で……なのになんで、こんな片田舎で死にかけてるのよ」
まるでイタズラをした悪餓鬼に反省を促す教師のように腕組みしながら「言いなさい」と促すと、イケメンは少し気まずそうに口を開いた。
「うっ……ちょっと、事情があって、……家から飛び出したのだ」
「は?家出?くはっ、バッカ~!それで家臣クンを死なせかけたの?あまりにも馬鹿でウケる」
「やめろ女!アルベルト様は命を狙われたのだぞ!?仕方なかったのだ!」
「おいっ!」
「あら、お家騒動かぁ」
それでお名前はアルベルト様って言うのね?なんか聞いたことあるようなないような名前ねぇ。まぁよくある名前だしな。
「で、差し向けられた刺客にやられたわけでもなく、たまたま遭遇した魔狼に殺されかけた、と。……運が悪いのねぇ」
しみじみと言うとイケメンは顔を赤くしながら表情を歪めている。随分と悔しそうだが反論出来ないようだ。やっぱり可愛いところがあるわね。そう素直な反応をされると、つい虐めたくなってしまうではないか。
「ふーん、情けなぁい」
「なに!?」
私がクスクス笑いながら言えば、若いだけあって血気盛んなイケメンはカッとなって顔を上げた。
「やられっぱなしで、勝ち目もないって言って逃げてきたってことでしょー?強そうな見た目して、軟弱なのね」
「そんな簡単な話ではないのだ!戦を起こすわけにはいかん!そうなれば、たくさんの弱き民が犠牲に……」
「なんで?」
「は?」
滔々と語ろうとするのを、私は小首を傾げて一言で止めた。
「民が犠牲になる前に、さっさと勝てばいいじゃない」
「そ、んな無茶苦茶な……出来る訳が……」
「だって、トップの首を獲れば戦はおしまいでしょ?教科書に書いてあったわ」
「……は?」
適当な発言だが、こちらの世界では少なくともその通りのはずだ。いくつかの戦争は国王の戦死や病死であっさり終結している。だって乙女ゲームの世界に血生臭い戦争なんて似合わないもの。うまくやれば無駄な血が流れないようになっているのだ。
しかし目の前の人達は逆に、私を過激派だと捉えたらしい。
0
お気に入りに追加
327
あなたにおすすめの小説
大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました
扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!?
*こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。
――
ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。
そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。
その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。
結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。
が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。
彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。
しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。
どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。
そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。
――もしかして、これは嫌がらせ?
メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。
「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」
どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……?
*WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。
猛禽令嬢は王太子の溺愛を知らない
高遠すばる
恋愛
幼い頃、婚約者を庇って負った怪我のせいで目つきの悪い猛禽令嬢こと侯爵令嬢アリアナ・カレンデュラは、ある日、この世界は前世の自分がプレイしていた乙女ゲーム「マジカル・愛ラブユー」の世界で、自分はそのゲームの悪役令嬢だと気が付いた。
王太子であり婚約者でもあるフリードリヒ・ヴァン・アレンドロを心から愛しているアリアナは、それが破滅を呼ぶと分かっていてもヒロインをいじめることをやめられなかった。
最近ではフリードリヒとの仲もギクシャクして、目すら合わせてもらえない。
あとは断罪を待つばかりのアリアナに、フリードリヒが告げた言葉とはーー……!
積み重なった誤解が織りなす、溺愛・激重感情ラブコメディ!
※王太子の愛が重いです。
【完結】悪役令嬢エヴァンジェリンは静かに死にたい
小達出みかん
恋愛
私は、悪役令嬢。ヒロインの代わりに死ぬ役どころ。
エヴァンジェリンはそうわきまえて、冷たい婚約者のどんな扱いにも耐え、死ぬ日のためにもくもくとやるべき事をこなしていた。
しかし、ヒロインを虐めたと濡れ衣を着せられ、「やっていません」と初めて婚約者に歯向かったその日から、物語の歯車が狂いだす。
――ヒロインの身代わりに死ぬ予定の悪役令嬢だったのに、愛されキャラにジョブチェンしちゃったみたい(無自覚)でなかなか死ねない! 幸薄令嬢のお話です。
安心してください、ハピエンです――
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
悪役令嬢なのに王子の慰み者になってしまい、断罪が行われません
青の雀
恋愛
公爵令嬢エリーゼは、王立学園の3年生、あるとき不注意からか階段から転落してしまい、前世やりこんでいた乙女ゲームの中に転生してしまったことに気づく
でも、実際はヒロインから突き落とされてしまったのだ。その現場をたまたま見ていた婚約者の王子から溺愛されるようになり、ついにはカラダの関係にまで発展してしまう
この乙女ゲームは、悪役令嬢はバッドエンドの道しかなく、最後は必ずギロチンで絶命するのだが、王子様の慰み者になってから、どんどんストーリーが変わっていくのは、いいことなはずなのに、エリーゼは、いつか処刑される運命だと諦めて……、その表情が王子の心を煽り、王子はますますエリーゼに執着して、溺愛していく
そしてなぜかヒロインも姿を消していく
ほとんどエッチシーンばかりになるかも?
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
私の婚約者は6人目の攻略対象者でした
みかん桜(蜜柑桜)
恋愛
王立学園の入学式。主人公のクラウディアは婚約者と共に講堂に向かっていた。
すると「きゃあ!」と、私達の行く手を阻むように、髪色がピンクの女生徒が転けた。『バターン』って効果音が聞こえてきそうな見事な転け方で。
そういえば前世、異世界を舞台にした物語のヒロインはピンク色が定番だった。
確か…入学式の日に学園で迷って攻略対象者に助けられたり、攻略対象者とぶつかって転けてしまったところを手を貸してもらったり…っていうのが定番の出会いイベントよね。
って……えっ!? ここってもしかして乙女ゲームの世界なの!?
ヒロイン登場に驚きつつも、婚約者と共に無意識に攻略対象者のフラグを折っていたクラウディア。
そんなクラウディアが幸せになる話。
※本編完結済※番外編更新中
慰み者の姫は新皇帝に溺愛される
苺野 あん
恋愛
小国の王女フォセットは、貢物として帝国の皇帝に差し出された。
皇帝は齢六十の老人で、十八歳になったばかりのフォセットは慰み者として弄ばれるはずだった。
ところが呼ばれた寝室にいたのは若き新皇帝で、フォセットは花嫁として迎えられることになる。
早速、二人の初夜が始まった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる