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神殿送りになった転生ヒロイン、隣国の皇太子のMっ気を開花させてしまったので責任を取ります

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「へ?は?え?なんだ!?お前誰だ!?」
「私はユリアですよ、コーリー様」

寝台の上に大の字になって目覚めたコーリー様は、四肢の先が寝台の柱に結び付けられているのに気がついて仰天した。びっくり顔可愛い。

「あなたと結ばれる、この世界のヒロインです♡」
「何を言っているだ!気が触れているのか!?」

まるでマトモキャラみたいなことを言うヤンデレ属性の超絶美男子のお体に、私は嬉々として乗り上げた。フンフンと鼻歌混じりに胸元のボタンを外しながら、私はにこやかに続けた。

「何度も言ったじゃないですかぁ!お手紙読んでくださらなかったのですか?」
「読む訳ないだろ、知らない奴からの手紙なんか!」

乙女の気持ちを踏み躙る最低な発言をして、コーリー様は大した焦りも見せずに私を見上げる。

「というか、縛るなんて信じられない。淑女がやることかい?」

呆れたよと言って首を振るコーリー様は、状況のわりには随分と落ち着いていらっしゃる。さすがはコーリー様だ。動じない。そんなところもかっこいい。

「うふふ、お褒め頂きありがとうございます!ちなみに逃げ出そうと思っても無駄ですよー?解けない縛り方はしっかり練習してきたので!引っ張るとどんどんキツく絞まります!」
「拷問や監禁に使う技術じゃないか……君や君の家族の裏には誰もいないはずなのに、どこで学んだ?」

あら、ちゃんと私の背景も調べてたのか。っていうことは私の存在を知ってて無視してたのね!さっすがぁー!私の惚れた男は一味違う!その冷たさ嫌いじゃないわっ!

「えっとー、私、そういう趣味なんです♡その筋の趣味の人に聞いてきました♡」
「なるほど」

にこっと笑って言えば、意外とあっさり納得された。

「それなら納得かもしれない」
「でしょ?好きこそものの上手なれ、と言うやつです」

私はエロいことは割ととても大好きなのだ。私の処女を捧げるに足るイケメンとまだ出会っていないので処女膜もまだ残っている。ぜひ今宵はコーリー様の逞しいご子息に蹴破って頂きたいものだ。

「まぁいい。納得した。外せ」
「嫌です!私と結ばれましょう!」
「嫌だよ!僕はカミラ以外に興味はない」
「カミラ?誰ですか?」
「僕の最愛の人だよ!」
「えっ!?コーリー様、婚約者いないじゃないですか!!」

そんな!婚約者がいる男を寝取るのは流石に主義に反する。

「……そのうち婚約するんだよ!早く放せ!」
「なーんだ、片思いかぁ!」
「黙れ桃色頭!!」

どうやら当たりらしい。どっちにしろノープロブレムだ。

「とりあえずまだ婚約してないんですね!じゃあ寝取りには該当しないのでオッケー!」
「うわっ!?な、何するんだ!?」

大慌てのコーリー様がジタバタとベッドの上で跳ねているが、まな板の上の恋というやつだ。違った、鯉か。まぁどっちでも良いや、私という板前に惚れてくれ。

「だーから、脱がすんですよぉ♡これ、一応十八禁ゲームなんですから!」
「う、うわぁあああ!?馬鹿者やめろぉおおお」

ぴょろん、とコーリー様のコーリー坊やがまろび出てきて、私がイタダキマスしようとした、その時。

「このポンコツがっ!」
「うわっ!?なにぃ!?」

キレのいい罵声とともにパリーンと窓が割れ、ヒーローの如く金髪の美少女が飛び込んできたのだ。

「普通、男が女の子に押し倒される!?馬鹿じゃないの!?」
「カミラァっ!!」

コーリー様の歓喜に満ちた声が聞こえたと思ったら、私は動揺している間に関節固めされて、猿轡を噛まされ、ぐるぐるに拘束されていた。

「さて、これでよし。コーリー、大丈夫?未遂?」

蓑虫状態の私の前でギャグちっくなラブコメが展開される。こいつが世界のバグの原因か!と思っていたら、いつの間にか私の体は宙を浮いて警備室に飛ばされていた。

「むぐううぅううう!?!?」

こんな速度で物に当たったら即死だわ!人に当たったら大事故だわ!という速度でびゅんびゅん空中飛行し、警備室に放り込まれた時には私は目を回して倒れていた。もっとも聞いた話によると、警備員さんも驚いて腰を抜かしていたらしい。そりゃそうよね、普通は夜中に人間が飛んでくるなんて思わないもの。

そして私は目が覚めたら髪を短く切られて聖女の姿になっていた。つまり、俗世から離されて神殿送りになっていたのだ。

本当に、ゾッとするほど仕事が早かった。
なんだあの女、妖怪だったのかな?

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