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しおりを挟む「うっ、ん、……そぅ、上手だよ」
「ぅあ……くっ」
己の上にのしかかり、必死に腰を振る愛らしい仔犬を見つめ、侍従長はゆるりと目を細める。胎内に感じる若い欲望ははち切れんばかりに膨れ上がっている。そろそろ限界なのだろう。仔犬は何度も腰を止め、耐えるように奥歯を噛み締めている。
「おや、震えているじゃないか」
「すみませ……っ、こんなにきもちいいなんて……ッ」
ハァハァと荒い息を繰り返し、必死に快感を逃す年下の雄に手を伸ばし、侍従長は宥めるように頬を撫でた。
「ふふっ、可愛らしいことを。……ほら」
「っ、で、もっアッやめ、やめて下さいッ出てしまいます!」
「我慢なんてしなくてもいいんだよ?何度でも、君がしたいだけすればいい」
挑発的に腰をゆすって唆しても、可愛い仔犬は涙目になりながら、フーフーと必死に息を吐いて射精を堪えている。
「ずっと憧れていたのに……っ、こ、んな、一瞬で終わるのは、嫌なんですッ」
夢見がちな若者のセリフに、侍従長はピタリと動きを止める。思わずごくりと唾を飲み、そして
「……もしや、ハジメテかい?」
「はい」
「君、モテるのに」
何人もの雄と雌に言い寄られているのを知っていた。そんなやりとりを見かけるたびに、侍従長はめでたいことだと笑ってきたのだ。狂おしい本心を隠して。
「だって……最初は、あなたに捧げたいと、思っておりましたので」
「……それはそれは」
恥ずかしげに、くしゃりと顔を歪めて告白する仔犬への愛おしさに、年上の猿は込み上げてくる愛しさを必死に飲み込んだ。そして万感の思いをこめて囁く。
「光栄だね……最高の夜にしてあげるよ」
その言葉と共に、それまでヘンリーに身を任せていた侍従長は、腰を前後左右に蠢かせ、そして後孔をきつく締め上げた。
「あっ、そんなッ、……あっ、イ、イっちゃいます、あァッ」
「んっ、アッ……っ、出してくれ!私の腹がパンパンになるまでッ」
「んっ、そんなッ」
煽るような言葉に、ヘンリーはもはや耐えられずがむしゃらに抽送を繰り返した。パンパンと激しく叩きつけられる音と、互いを食らい尽くさんばかりの荒々しい口付けの水音。そして。
「ぅ、ぐ、……あぁ」
「んっ……あぁッ、熱い」
二人は同時に達し、そしてぐったりと抱き合った。
「愛しています、あなたは私の、永遠の憧れです」
「私も愛しているよ。どうか私を喰らい尽くして、私よりも長生きしておくれ」
思いがけないプロポーズじみた侍従長の言葉に、ヘンリーは一瞬驚いて瞠目し、そして破顔した。
「ええ、喜んで」
「ってやつがいいっすね!今回こそ神様よろしくゥッ!」
脳内で最高のエロシーン[ハッピーエンド確約]を描いた私は、意気揚々と盗聴セットと双眼鏡を準備して立ち上がった。
「ってことで、いざ尋常に勝負!」
***
「あ、の!侍従長!」
「おや、ヘンリー。どうしたんだい?妃殿下のところに行ったのでは?」
廊下を歩いていたら聞き慣れた声に呼び止められ、侍従長は軽く目を見開いた。振り向けば、予想通り顔を赤らめたヘンリーが耳をピンと立ててこちらを見ている。
「あ、そちらはもう……」
「おや、さすがだねぇ」
感心して軽い賞賛の眼差しを送れば、ヘンリーはますます顔を赤く染め上げる。
「えっと、あの、はい」
「ふふ」
何歳になってもこの仔犬は素直で可愛らしい。撫で回したいほどに。そんな内心を隠して穏やかにヘンリーの続く言葉を待てば、仔犬は意を決したように顔を上げた。
「あの……あの、もしよろしければ、あの、以前のお約束の……」
「あぁ、夕食だったね。いいよ、ご馳走しよう」
「あ!ありがとうございます!」
少し前に「食事をご馳走しよう」と誘ったことを思い出して助け舟を出してやれば、ヘンリーはわかりやすく安堵して目を輝かせた。
「でも、食べたら帰りなさいね」
「え?で、も」
おそらくはその先まで期待しているはずの仔犬を、侍従長はあっさりと牽制する。
「ダメだよ、君はまだ未成年だからね」
「いえ!もう成獣です!」
「あはは、そうか、誕生日が来たんだったな」
「はい!ですから!」
食い下がるヘンリーに、侍従長は苦笑して肩をすくめる。別に、意地悪を言っているわけではない。むしろこれは、ヘンリーのためなのだ。
「うーん、でもまだ早いと思うよ」
「なぜですか!?」
食ってかかるヘンリーに、侍従長は一拍の沈黙の後に告げた。
「……やはり、最初は雌と交わるべきだ」
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