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***
「いやぁ、妃殿下は恐ろしい方ですねぇ」
「え?」
ランズとアウエルは、表と裏の情報交換を終えて一時の雑談に興じていた。しかしアウエルは、ふと何か思いついた様子で含み笑って口を開く。
「あの方、私とあなたが師弟関係にあると勘付いているらしいですよ」
「は!?どうやって?」
「さぁ、女の勘だとか」
アウエルの部下もかなり驚いていた。そして、なぜか「さすがセンスの塊!尊敬せざるを得ません!新作も楽しみです!」と。……怖いので詳しくは聞かなかったが。
「……人間側の間者では」
強張った顔で危機感を募らせるランズには悪いが、多分違う。輝く笑顔で「信頼する騎士団長を(観察したいから)護衛に寄越せ」とか言ってくる狂人だ。あれは正気を失った芸術家とかと同類の人間である。
「危険なのでは?」
「うーん、どうも違うようですが……」
だが、ランズに自分が性根の腐った芸術家の餌食にされていると教えてやるのも可哀想だ。これから妃殿下からの視線に慌てふためくことになってしまうだろう。なんなら公的な場でも妃殿下がいると、受け答えがしどろもどろになりかねない。
「まぁ、大丈夫だと思いますよ。我が国に害はなさそうです」
「アウエル様が仰るなら、そうなのでしょうが……」
困惑しながらも、ランズは受け入れた。昔からアウエルの言うことは疑わず聞く良い仔なのだ。
「……そんなことより、アウエル様」
「ん?」
「今夜は、ご一緒できるのですか?」
「……ふふ、さすが、若いですねぇ」
期待に満ちた熱い目で見つめられ、アウエルもじわりと腰が疼く。熱が籠り始めた瞳に、アウエルは悠然と笑みを返した。
「君が望むなら、いくらでも」
「アッ、あ……あうえるさ、まっんンッ」
「ふふっ、可愛いですよ、ランズ」
逞しいカラダを赤い縄で縛り上げられて、恍惚と微笑むランズに、アウエルは優しく囁いた。
「この国で最強を謳われる大熊のあなたが、こんな恥ずかしい趣味をお持ちだなんて、とても表では言えませんねぇ」
「いやだっ、いわな、いでッ」
「ふふ、照れるのも恥じらうのも、愛いですね」
「んんっ」
ちゅう、と濡れた音を立てて臍の横に吸い付けば、ランズの巨躯はびくりと打ち震えた。
「あぁ……ッ!アウエルさま、どうか、どうかっ!」
「おや、もう我慢出来ませんか?」
「っ、は、いっ!お願いしますッ」
もじもじと腰をくねらせているランズの耳元で優しく囁けば、ランズは泣き出しそうな顔で懇願した。
「どうか、どうか私の堪え性のない雌穴に、アウエル様の陽根を埋めて下さいッ」
体の自由が効かないよう縛られながらも、鍛え上げた腹筋で両脚を高く掲げ、疼く後孔を曝け出し、ランズは必死に乞うた。
「お願いします、アウエルさ……ッアァア!」
「うっ、グッ」
扇状的すぎる誘惑に、アウエルは予告もなく深く己の切先を突き刺した。そのまま激しく抽送し、ランズを気遣うこともなく、ひたすら己の快感を追う。けれど。
「あははっ、随分と興奮しているようだッ!あなたのナカは、搾り取ろうと喰らい付いてきますよ!」
「あっ、ぐっ……ぅがっ」
どのような乱暴で身勝手な動きからでも、躾けられたランズの体は勝手に快感を拾ってしまう。
「ああ…んぁああッ、アウエルさぁあ、あーーーッ」
ランズは喘ぎながら、ひたすら快感に泣き叫ぶのだった。
***
「は!?そういう趣味!?いや悪くないよ!?悪くないけど……ッ」
遠くでくんずほずれつしているアハンなお二人を眺めながら、私は愕然と呟いた。
「えー!なんでここも逆なの!?」
この二人も、私の予想と逆CPだったのだ!衝撃である。マジか。
「ドSの受けで良くない!?この世界の創造主とはトコトン趣味が合わないわぁー!」
赤い鞭と赤い縄が似合うアウエル文官は、大層受け受けしい美しさなのに!勿体無い……いや、これはこれで良いんだけどね?でもなぁ。
「どうしよ、騎士団長攻めで二作書いちゃったよぉー!」
私は頭を抱えるしかない。もう書いてしまったのに。既にお仲間に頒布済みなのに。まぁいっか。これは妄想であり事実には基づきませんって注意書きつけたしね。
「私の脳内カプは、違う世界線の話ってことで!ね!」
どっかのパラレルワールドには、きっと縄で縛った騎士団長に乗っかって、アンアン喘ぐ受けアウエルがいるはずだ。アウエル受けの世界線もきっとある。そう己を納得させた。
「まぁ細かいことは気にせず、ヨシとしましょう。それにしても……」
部屋の机で書き始めている次回作に思いを馳せる。この流れだと、アレも逆なのだろうか。
「もしや、あそこの二人は侍従長攻めか?えー、経験豊富なスパダリは攻めより受けでしょうに」
件の二人がそもそもカップルではないという可能性は考えない。腐女子というのは勝手で思い込みが強い生き物なのだ。
「ま、次のお楽しみね」
覗く気満々の私は晴れやかな笑顔で呟いた。常識がない発想だなと今更なツッコミが頭の片隅を掠めたが無視する。
人生楽しんだもの勝ちなのだ。
せっかく意味不明な世界に転生したのだから、楽しまなくてはね!
「いやぁ、妃殿下は恐ろしい方ですねぇ」
「え?」
ランズとアウエルは、表と裏の情報交換を終えて一時の雑談に興じていた。しかしアウエルは、ふと何か思いついた様子で含み笑って口を開く。
「あの方、私とあなたが師弟関係にあると勘付いているらしいですよ」
「は!?どうやって?」
「さぁ、女の勘だとか」
アウエルの部下もかなり驚いていた。そして、なぜか「さすがセンスの塊!尊敬せざるを得ません!新作も楽しみです!」と。……怖いので詳しくは聞かなかったが。
「……人間側の間者では」
強張った顔で危機感を募らせるランズには悪いが、多分違う。輝く笑顔で「信頼する騎士団長を(観察したいから)護衛に寄越せ」とか言ってくる狂人だ。あれは正気を失った芸術家とかと同類の人間である。
「危険なのでは?」
「うーん、どうも違うようですが……」
だが、ランズに自分が性根の腐った芸術家の餌食にされていると教えてやるのも可哀想だ。これから妃殿下からの視線に慌てふためくことになってしまうだろう。なんなら公的な場でも妃殿下がいると、受け答えがしどろもどろになりかねない。
「まぁ、大丈夫だと思いますよ。我が国に害はなさそうです」
「アウエル様が仰るなら、そうなのでしょうが……」
困惑しながらも、ランズは受け入れた。昔からアウエルの言うことは疑わず聞く良い仔なのだ。
「……そんなことより、アウエル様」
「ん?」
「今夜は、ご一緒できるのですか?」
「……ふふ、さすが、若いですねぇ」
期待に満ちた熱い目で見つめられ、アウエルもじわりと腰が疼く。熱が籠り始めた瞳に、アウエルは悠然と笑みを返した。
「君が望むなら、いくらでも」
「アッ、あ……あうえるさ、まっんンッ」
「ふふっ、可愛いですよ、ランズ」
逞しいカラダを赤い縄で縛り上げられて、恍惚と微笑むランズに、アウエルは優しく囁いた。
「この国で最強を謳われる大熊のあなたが、こんな恥ずかしい趣味をお持ちだなんて、とても表では言えませんねぇ」
「いやだっ、いわな、いでッ」
「ふふ、照れるのも恥じらうのも、愛いですね」
「んんっ」
ちゅう、と濡れた音を立てて臍の横に吸い付けば、ランズの巨躯はびくりと打ち震えた。
「あぁ……ッ!アウエルさま、どうか、どうかっ!」
「おや、もう我慢出来ませんか?」
「っ、は、いっ!お願いしますッ」
もじもじと腰をくねらせているランズの耳元で優しく囁けば、ランズは泣き出しそうな顔で懇願した。
「どうか、どうか私の堪え性のない雌穴に、アウエル様の陽根を埋めて下さいッ」
体の自由が効かないよう縛られながらも、鍛え上げた腹筋で両脚を高く掲げ、疼く後孔を曝け出し、ランズは必死に乞うた。
「お願いします、アウエルさ……ッアァア!」
「うっ、グッ」
扇状的すぎる誘惑に、アウエルは予告もなく深く己の切先を突き刺した。そのまま激しく抽送し、ランズを気遣うこともなく、ひたすら己の快感を追う。けれど。
「あははっ、随分と興奮しているようだッ!あなたのナカは、搾り取ろうと喰らい付いてきますよ!」
「あっ、ぐっ……ぅがっ」
どのような乱暴で身勝手な動きからでも、躾けられたランズの体は勝手に快感を拾ってしまう。
「ああ…んぁああッ、アウエルさぁあ、あーーーッ」
ランズは喘ぎながら、ひたすら快感に泣き叫ぶのだった。
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「は!?そういう趣味!?いや悪くないよ!?悪くないけど……ッ」
遠くでくんずほずれつしているアハンなお二人を眺めながら、私は愕然と呟いた。
「えー!なんでここも逆なの!?」
この二人も、私の予想と逆CPだったのだ!衝撃である。マジか。
「ドSの受けで良くない!?この世界の創造主とはトコトン趣味が合わないわぁー!」
赤い鞭と赤い縄が似合うアウエル文官は、大層受け受けしい美しさなのに!勿体無い……いや、これはこれで良いんだけどね?でもなぁ。
「どうしよ、騎士団長攻めで二作書いちゃったよぉー!」
私は頭を抱えるしかない。もう書いてしまったのに。既にお仲間に頒布済みなのに。まぁいっか。これは妄想であり事実には基づきませんって注意書きつけたしね。
「私の脳内カプは、違う世界線の話ってことで!ね!」
どっかのパラレルワールドには、きっと縄で縛った騎士団長に乗っかって、アンアン喘ぐ受けアウエルがいるはずだ。アウエル受けの世界線もきっとある。そう己を納得させた。
「まぁ細かいことは気にせず、ヨシとしましょう。それにしても……」
部屋の机で書き始めている次回作に思いを馳せる。この流れだと、アレも逆なのだろうか。
「もしや、あそこの二人は侍従長攻めか?えー、経験豊富なスパダリは攻めより受けでしょうに」
件の二人がそもそもカップルではないという可能性は考えない。腐女子というのは勝手で思い込みが強い生き物なのだ。
「ま、次のお楽しみね」
覗く気満々の私は晴れやかな笑顔で呟いた。常識がない発想だなと今更なツッコミが頭の片隅を掠めたが無視する。
人生楽しんだもの勝ちなのだ。
せっかく意味不明な世界に転生したのだから、楽しまなくてはね!
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