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初めての発情期休暇
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初めての発情期休暇は、酷く朦朧としたものだった。
「んっ……っちゅ、あッ、……ンッ」
「アベル……ハァッ、ふぅ、んむッ」
真っ赤な顔で股の間から愛液を垂らして震えているアベルに誘われるまま、俺は酩酊したような心地で、気がつけば目の前の紅唇に噛みついていた。
「アベル、アベッん」
「はぁっ、はっ、ん……ロドリグぅ……ッ」
涙目で求めてくる火照った顔を押さえつけ、乱暴に舌を突っ込んでかき回す。唾液がぐちゅぐちゅと、あさましい音を立てた。互いの唾液を交換して、欲望のままに口を吸い合う。
「はぁっ、はぁっ」
「あっ、んんっ、ぅううーッ」
「くっ、ははっ」
口付けだけで体を震わせているアベルの感じやすさに笑いながら、俺は甘い唇から離れ、徐々に舌を動かしていった。
首筋、耳裏、耳の穴、喉仏、鎖骨。
この下にはまだ桃色に染まった乳首と、天を衝かんばかりに勃ち上がった愛らしい陰茎も待ち構えている。
あぁ、どこもかしこも美味そうだ。
すべてを喰らい尽くしてやりたい。
「あっ、アァッそんな変なとこばっか、舐めるなッ」
「無理、止められん」
はぁはぁと瀕死の獣のような荒い息を吐きながら、俺は上から順に舐め回し、ひたすらに体液を舐め取り続ける。
「ひっ、ぃ、ヒィッ」
脇をペロペロと舐め、薄い脇毛をしゃぶれば、アベルは奇妙な悲鳴を漏らした。次第に喘ぎ声へと戻っていくそれは、鼓膜を扇情的に震わせる。
「アベル……アベル……ッ」
早く下も味わいたいのに、あちらこちらからねっとりとした汗の香りがして、思わず引き寄せられてしまう。三日水を与えられていない渇いた犬のように、あちらこちらを舐めまくった。しょっぱいはずの汗も涙も、あらゆる体液が甘く感じて、頭がおかしくなりそうだ。
「ハァッ、甘い……」
「はぁっ、ん、なにが?」
思わず呟いた俺に、アベルが不思議そうに問い返す。
「甘い。甘くて仕方ない。お前の汗も、唾液も、涙も、ぜんぶ」
「嘘だろ」
「嘘じゃねぇ……こんなことあるか?オメガはみんな甘いのか?」
まるで媚薬でも飲んだように頭がぼんやりして、思考が定まらない。甘い味が体の中をまわる。嚥下した液体が体の隅々まで行き渡り、俺を支配しようとしてきた。
「な、んか、おかしくなりそう……自分がコントロールできなくなっちまいそうだ」
弱音のように懺悔すると、アベルは目を丸くしてから、吹き出した。
「っ、ふふ、あはは」
「ん、なんだよ」
「それ、たぶんフェロモンが混ざってるんだよ」
「は?」
火照った顔で、やけに楽しそうに笑いながら、アベルは悪戯っぽい顔で俺の頬を突いた。
「ロドリグ、においを味として認識するタイプなんじゃない?」
「……どういうことだ?たしかに、料理はにおいも味のうちだけど」
甘えるようにしなだれかかってきた体はやけにうまそうだ。頭から丸ごと、パクりと食べてしまいたくなる。きっと血も骨も、内臓なんかもとろけるような甘さに違いない。
そんな危険な思考に頭を占拠されそうになっている俺に、アベルはおかしそうに話を続けた。
「んー、そもそも君、僕以外のオメガと接したことある?」
「あるけど、ほとんどねぇな。領主様の御母堂様と、剣術場の師範の孫息子しか知らねぇ。王都でも、アルファと判明してからは怖がらせないように、オメガが多い場所には近づかないし」
「じゃあ、性成熟期のオメガと接したことがなかったから、気づかなかったんじゃない?」
そう言い切ると、アベルはうっとりと微笑み、俺に囁く。
「これが、フェロモンだよ」
「……あぁ、そうなのか」
蠱惑的な微笑に思考を侵され、何も考えられないままに、俺は納得した。あぁ、そうか、だから。
「だから時々、噛みつきたくなってたんだな」
「え?」
「肌が白いし、なんか、うまそうだなって……食欲なんだと思ってたよ」
訥々と語る俺に、アベルは呆れ半分で眉を吊り上げて声を荒げた。
「それ性欲だよ!!食欲と混同しないで!?」
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