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俺のパンツは頻繁に盗難に遭う1
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国境にほど近い、そこそこ栄えた街で生まれた俺は、三歳から木剣を振り回して育った。
「うまいぞ!お前は兄弟の中で一番剣術の才能がある!」
警備隊の隊長だった父は、五兄弟の末っ子だった俺の剣才に喜び、せっせと指導してくれた。
父の言葉に喜んだ俺は、さらによく訓練に励み、七歳の頃に近所の剣術場に通い始めた。
「素晴らしい!わしが教え始めてからこの十年で、一番剣才がある」
あらゆる教えは染み渡るように身についた。一年後には十歳上の少年達と戦っても連戦連勝だった。三年後には、まともに撃ち合えるのは師範だけになった。
己の上達に喜んだ俺は更によく励んだ。
「もうわしに教えられることはない。さらに上を目指せ」
師範からの激励を胸に、俺は十歳で領都の剣術場に推薦されて向かった。
同じ頃に自分の第二性がアルファと判明し、俺はますます稽古に励んだ。
「アルファならば、筋肉も体力もつきやすい。もっと上に行けるはずだ」
領都でも、二年もしないうちに俺は師範と戦っても勝率が五分を超えるようになった。
「ここ五十年に一人の才能だ!王都でもお前より出来るやつは見たことがないよ!」
皆の絶賛に鼓舞され、領都中の激励を背に、俺は自信満々に王都へと向かった。
「お前は我が領の誇りだ!英雄となり、我が領の名を広めてこい!」
領主様が下さったお言葉を胸に、我が領の名を高らかに知らしめてやると心に決めて。
だが、そんなに甘くはなかった。
たしかに王都にも、俺と同年代で撃ち合えるような者はそうそういなかった。
けれど。
『不正出の天才』
『千年に一度の麒麟児』
『剣神の具現』
あらゆる言葉で賞賛と畏怖を集める、同じ年の少年がいた。
初めて剣を合わせた時から、俺は一度も勝てたことがなかった。
しかもそいつは。
「俺、オメガなんだよねぇ」
「……え?」
呑気な顔でさくらんぼを食べながら、俺に自分の性を教えたのだ。
「だから、そのうち君の方が強くなると思うよ」
にこっと、なんの気負いもなく笑って。
「うまいぞ!お前は兄弟の中で一番剣術の才能がある!」
警備隊の隊長だった父は、五兄弟の末っ子だった俺の剣才に喜び、せっせと指導してくれた。
父の言葉に喜んだ俺は、さらによく訓練に励み、七歳の頃に近所の剣術場に通い始めた。
「素晴らしい!わしが教え始めてからこの十年で、一番剣才がある」
あらゆる教えは染み渡るように身についた。一年後には十歳上の少年達と戦っても連戦連勝だった。三年後には、まともに撃ち合えるのは師範だけになった。
己の上達に喜んだ俺は更によく励んだ。
「もうわしに教えられることはない。さらに上を目指せ」
師範からの激励を胸に、俺は十歳で領都の剣術場に推薦されて向かった。
同じ頃に自分の第二性がアルファと判明し、俺はますます稽古に励んだ。
「アルファならば、筋肉も体力もつきやすい。もっと上に行けるはずだ」
領都でも、二年もしないうちに俺は師範と戦っても勝率が五分を超えるようになった。
「ここ五十年に一人の才能だ!王都でもお前より出来るやつは見たことがないよ!」
皆の絶賛に鼓舞され、領都中の激励を背に、俺は自信満々に王都へと向かった。
「お前は我が領の誇りだ!英雄となり、我が領の名を広めてこい!」
領主様が下さったお言葉を胸に、我が領の名を高らかに知らしめてやると心に決めて。
だが、そんなに甘くはなかった。
たしかに王都にも、俺と同年代で撃ち合えるような者はそうそういなかった。
けれど。
『不正出の天才』
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あらゆる言葉で賞賛と畏怖を集める、同じ年の少年がいた。
初めて剣を合わせた時から、俺は一度も勝てたことがなかった。
しかもそいつは。
「俺、オメガなんだよねぇ」
「……え?」
呑気な顔でさくらんぼを食べながら、俺に自分の性を教えたのだ。
「だから、そのうち君の方が強くなると思うよ」
にこっと、なんの気負いもなく笑って。
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