生まれる前から一緒の僕らが、離れられるわけもないのに

トウ子

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僕らはどうすればよかったのだろうか。あぁ、いっそのこと、生まれる前に戻れたら。

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「……全部、察してるんだね」

僕の顔を見た悠はポツリと呟いて、儚く微笑んだ。
俯いた頬に、ぽろりと透明な涙が伝う。ひとつだけ残った、真っ黒な瞳から。

「死ねなかった……ごめんなさい」

呻くような謝罪の言葉を皮切りに、血の気をなくした悠の唇からは、次々と絶望の悲鳴がこぼれ落ちる。

「僕は罰を受けるべきなんだ」
「あのナイフは正しかったのに」
「誰かに僕を消して欲しかった」
「自分で消えることはできなくて」
「弱虫で」
「僕は卑怯だ」

悠が口を開くたびに、僕の心臓は切り裂かれていく。
切れ切れの言葉から正答を理解して、僕は立ち尽くした。

「せっかく瞬に運命の番が現れたのに。瞬に相応しい相手が、現れたのに。喜べなくて。送り出せなくて。見たくなくて」
「ゆ、う」

違う、その感情には何も問題なんかない。
だって、僕だって、あんな男いらないんだ。
僕は、僕も、僕こそ、悠さえいればいいと思っているんだ。

そう言いたいのに、ほろほろと泣き続ける悠の前で、僕は凍りついたように立ち尽くす事しかできなかった。
あまりにも悠がぼろぼろで、何かひとつでも間違えたら、今にも砕け散ってしまいそうで。

「瞬が僕だけのもので居てくれないのならば、いっそ……瞬の中に消えない傷となって残りたいと思ってしまったんだ」

透明な悲しみの中で、悠は自嘲するように泣き笑う。
僕にそっくりの顔で、僕よりもずっと美しく。

「そのせいで、……僕の我が儘のせいで、瞬にまで傷を負わせてしまった」

美しい肌だったのに、と悠は唇を噛み締め、悔やみ切れないとでも言うように懺悔する。
悲しみの中で完結し、絶望してしまった悠に、僕は何を言えばいいのか分からなかった。

グッと拳を握りしめて目を閉じれば、雪那の笑い顔が瞼の裏に浮かぶ。

あぁ、確かにあいつの言う通りだ。
雪那は、この件については何もしていない。
けれど悠を壊したのは、間違いなくあいつだ。

あいつが小細工をして悠を引き摺り下ろそうとしたから。
あいつが僕らを引き離そうとしたから。
いや、そもそも、あいつが僕と出会ったからだ。
あの時から僕らは、少しずつ狂い始めてしまったのだ。
僕らしかいなかった世界に、無理矢理に異物が入り込んだから。

あぁ憎い。
あの男が憎い。
悠を、僕らを壊したあの男が!

「チ、クショウッ」

でも、この事態を止められなかった自分、悠を守れなかった自分も同じくらい腹立たしくて、悲しく、憎らしいのだ。

「どうして、こんなことに」

僕から悠を奪おうとするものなんて、全部、消えてしまえばいい。
そう願っていたのに。
僕から悠を奪おうとしたのが、悠本人だったなんて。
僕はどうしたらいいんだ。

「な、んで……」

ああ、神様。
僕は、僕らは、何を間違えたんだ。
僕らはどうすればよかったのだろうか。
どうしたら、僕らは壊れずにいられたのだろうか。

「悠、ゆう、ゆ、ぅ、……っ」

あぁ、いっそのこと、生まれる前に戻れたら。
何も考えず、ただ悠と二人だけで揺蕩っていられた、あの幸せな時間に。

「ぁ……あぁぁっ、うああああああっ」

マグマのように蠢く負の感情に、僕は呻くような声で泣いた。
真っ白なベッドに突っ伏して、言葉もなくただ泣き続ける僕を、悠はそっと撫でる。
まるで幼い頃、眠れない夜にそうしていたように。
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