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超美味しい裏設定って、何それ!?

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「……っえ!?」

思いがけない発言に硬直する。
なんでそんな……え?なんで急にそんな告白を!?
そんな私の内心の動揺など知らず、ユリアは一通り叫んで気が済んだようで、「そう言えば」と呟いてあっさりと話を変えた。

「カミーユの先祖って精霊だっていう裏設定あったわよね」
「え!?なんで知ってるの!?それ、王家でも陛下しか知らないはずなんだけど……!?」
「だからファンブックだってば」

ファンブックとやら、個人情報保護の観点からあり得ないのでは?
そう思いつつも、ユリアの興味津々の眼差しに負けて、私はユリアが知りたいのならば、と我が家の秘密を話すことにした。

「カミーユの精霊の特性って何なの?」
「え……と…………中性であること、かな」
「ちゅうせい?中立ってこと?」
「それもある。誰にも何にも寄らない、あらゆる属性のど真ん中の存在であること」

ユールセンは、あらゆる派閥、属性から中立であることを運命づけられている一族なのだ。

「へぇー、でも、女の子じゃん。性別は関係ないの?」
「……あるよ」
「へ?」

初めてかもしれない。ユリアがこんなに驚いた顔をして、言葉をなくしているなんて。愉快になって、私はさっきの仕返しとばかりに、悪戯っぽく笑い返した。

「だから、私は両性でも無性でもなく、本来は中性なの。精霊の血を濃く引くユールセンの直系は、成人の儀の時に性別を固定するのよ。それまではどちらにもなれるの。まぁ、大体はその時の時勢に合わせて生まれた時から一貫しておいて、そのまま固定するんだけれどね」
「え?え!?て、ことは、カミーユって」
「男にもなれるわ」
「えええええっ!?そんなッ、裸見られちゃった!」

動揺したように叫ばれた台詞に、私は首を傾げる。

「私の裸も見てるじゃない」
「いやそうだけど!そうだけど!うそぉおお」

急に真っ赤になったユリアに首を傾げる。

「なんでそんなに?私はこのままいけば女に性を固定されるから、気にすることはないのよ?」
「でも!でも!自分が好きな子が男にもなれるって聞いたら意識しちゃうじゃない!」
「……へ?」

決定的発言に、私たちの間の空気が固まる。時間が止まった気すらした。しかし一瞬の膠着の後、ユリアが絶叫してシリアスな空気をかき消した。

「あーーーっ、今のなし!聞かなかったことにして!私たちは親友よそうでしょ!?」
「え、あ、いや、あの、……う、うん」
「あーびっくりした!そんなのファンブックに書いてなかったし!もー!そんな裏設定あるなら教えてよ神様!」

赤い顔のままブツブツと天井を見上げて呟いていたユリアは、ハッと何かに気付いたようにこちらを向いた。

「え、あの、まさかと思うけど」

そして恐る恐る、ついでにトキメキとワクワクが込められた目で私を見つめてきた。

「好きになった相手によってがムクムク生えてきたりする?カミーユの好きな相手が男の子だから、今は女性になってるてこと?」
「は!?」

何よその気の狂った仮説!
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