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ユリアの好みがカミーユ……って、え?私?1
しおりを挟む「別に私は逃げてもいいのよ。でも、知っていて逃げたくはないの。だからこれが精一杯。私だって命かかってるんだもの。それも、自分の命だけじゃなくて、この国の人間全員の命が。……本当にふざけているけど」
神様とやらに怒りをぶつけるように天を睨みつけて、ユリアは吐き捨てる。
「婚約者さん達だって、そもそも魔の力になんて頼らなければいいし、それ以前にガッチリ婚約者の心を掴んでおけばいい話じゃない。ぽっと出てきた平民女によこから掻っ攫われるような関係性じゃ、一夫多妻が常識のこの国じゃ結婚したってそのうち浮気されるわよ。そこまで責任とれないわ」
ハッと鼻で笑って、ユリアは片手をヒラヒラと振る。そんなこと知るか、と、まるで悪役そのもののような顔で、この国を救うためにやりたくないけど自分はやるのだと言い切る。
「魔に取り入る隙を与えて、挙句の果てに国家存亡の危機にさせる人間の面倒まで見られないわ」
愚かで甘い令嬢達。
ユリアの中で彼女達は苛立ちの種でしかないのだろう。彼女のストーリーとやらに必要な端役だとしても。
「でもねー、今はただのお貴族様だし、そのイベントがルートの中では不可欠だし。魔に取り入られる前に倒してしまうってわけにもいかないし」
「倒すって……殺すってことでしょ?」
「そうよ。でも、そんな簡単な話じゃないのよ」
あっさりと言うユリアは、自分の絶大な魔力と圧倒的な魔術があれば、人の命を簡単に左右できるという自覚があるのだろう。ユリアの言葉に気負いはない。単なる事実を話すようにして続けた。
「人には皆、この世界での役割があるのよ。婚約者さんたちは、最後に王太子たちを完全な私の味方にするためのイベントであり、私への愛情を試す踏み絵みたいなもの。愚か者にしかできない大事な役目よ?」
光の魔力に愛されるだけあって、清らかで美しい容姿なのに、ユリアはまるで悪女そのもののような台詞を吐く。
「……でもまぁ、彼女たちが自分の力で魔の誘いを断ち切り、こちら側に踏みとどまれるのであれば良し、そうでなければ知らないわ」
無言で見つめる私に、少しだけ気まずげに言葉を継ぎ足してから、ユリアはキッと私を睨み付けてきた。
「世界を救えとか、ふざけた使命を与えられちゃってる私からしたら、婚約者の心が離れたくらいで闇堕ちしちゃうような、甘ったれたお嬢ちゃま達なんか……知らないわよッ!」
た、たしかに。
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