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王様との内緒話1
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「で?此度は何が望みだ?」
国王の私室。
泰然と頬杖をつきながら愉快げに尋ねる国王に、クロードはにっこり笑って答えた。
「もちろん、我が高潔の騎士へ、更なる栄華を」
「ほぉ。お前は男の立身出世など、興味がないのかと思っていたが。やはりお前も、己の男の地位は気になるものか」
「私にとっては無価値でも、世間的にはそうでもございませんからね。それに」
にっこりと無邪気にすら見える笑みを浮かべ、クロードはすらすらと話した。
「順当に参りますと、次の役職は、国境警備隊の隊長でしょう?国境付近など、危ないことだらけですし、もちろん私もついて参りますね。しばしのお暇となりますので後はどうぞよしなに」
「なっ……お前、それが目的か!?復帰どころか隠居するつもりかっ!」
綺麗に一礼をしてみせたクロードに、慌てた国王が矢継ぎ早に訊ねる。
「隠居も何もありませんよ。どこにいようと私は品行方正におとなしく、清く正しく美しく生きて参ります。何か妙な動きを見つけたらなんとかしつつご連絡しますから。これ以上蜜月の恋人達の邪魔をするのはご勘弁ください。そろそろ国王様といっても、馬で蹴り上げますよ」
「そんなに怒っていたのか!?」
丁寧な口調ながらも、国王への敬意がかけらも感じられない苦情に、国王は泡を食った。
クロードは国王の手駒の中で最も小回りが利き、仕事が早く、ついでに四方八方で面白いものを見つけては愉快な情報や物証を持ってきてくれる、なかなか手放し難い部下なのだ。
ここ最近は頼みごとをしようと呼び出しても、なかなか出向いてくれないもので、つい簡単な手段に出てしまっていた。
「アルベルトにばかりやたらと面倒で危険で、ついでに裏が真っ黒な案件ばかり回しておいて、怒らないわけないでしょう?」
「いや、お前のところ送り込んでおけば、つつがなく迅速に処理されるからな、ついな」
つまり、クロードに任せたかった案件を男に命じ、間接的にクロードを働かせる、ということなのだが。
それがどうやら、怒りを買っていたらしい。
「つい、じゃありませんよ。私だってそんな案件を察して、放っておけませんからね。思い切り手を出してしまいましたよ。表の世界で生きているアルベルトが片付けられるような中身じゃないでしょアレ。思い切り私の範疇の仕事でしたよね。本当にふざけたことがお好きでいらっしゃる。おかげさまでアルベルトは現在自信喪失中です」
よほど鬱憤が溜まっていたのか、大雨の日の激流のような勢いで文句をぶちまけるクロードに、身に覚えがあった国王はとりあえず謝ることしかできなかった。
「そ、それはすまなかった」
「都から引き離して、彼自身の力を存分に発揮、そして再認識してもらいます。それに」
国の最高権力者の前で、クロードは忌々しそうに舌打ちを隠しもせずに吐き捨てた。
「都にいると、香水くさい女どもの処理が大変なんですよ」
まったく腹立たしい、と怒りを零せば、国王はギョッとしたように顔を引きつらせた。
「まさか……、最近若い令嬢たちの不祥事が続いているのはお前の仕業か!?」
国王の私室。
泰然と頬杖をつきながら愉快げに尋ねる国王に、クロードはにっこり笑って答えた。
「もちろん、我が高潔の騎士へ、更なる栄華を」
「ほぉ。お前は男の立身出世など、興味がないのかと思っていたが。やはりお前も、己の男の地位は気になるものか」
「私にとっては無価値でも、世間的にはそうでもございませんからね。それに」
にっこりと無邪気にすら見える笑みを浮かべ、クロードはすらすらと話した。
「順当に参りますと、次の役職は、国境警備隊の隊長でしょう?国境付近など、危ないことだらけですし、もちろん私もついて参りますね。しばしのお暇となりますので後はどうぞよしなに」
「なっ……お前、それが目的か!?復帰どころか隠居するつもりかっ!」
綺麗に一礼をしてみせたクロードに、慌てた国王が矢継ぎ早に訊ねる。
「隠居も何もありませんよ。どこにいようと私は品行方正におとなしく、清く正しく美しく生きて参ります。何か妙な動きを見つけたらなんとかしつつご連絡しますから。これ以上蜜月の恋人達の邪魔をするのはご勘弁ください。そろそろ国王様といっても、馬で蹴り上げますよ」
「そんなに怒っていたのか!?」
丁寧な口調ながらも、国王への敬意がかけらも感じられない苦情に、国王は泡を食った。
クロードは国王の手駒の中で最も小回りが利き、仕事が早く、ついでに四方八方で面白いものを見つけては愉快な情報や物証を持ってきてくれる、なかなか手放し難い部下なのだ。
ここ最近は頼みごとをしようと呼び出しても、なかなか出向いてくれないもので、つい簡単な手段に出てしまっていた。
「アルベルトにばかりやたらと面倒で危険で、ついでに裏が真っ黒な案件ばかり回しておいて、怒らないわけないでしょう?」
「いや、お前のところ送り込んでおけば、つつがなく迅速に処理されるからな、ついな」
つまり、クロードに任せたかった案件を男に命じ、間接的にクロードを働かせる、ということなのだが。
それがどうやら、怒りを買っていたらしい。
「つい、じゃありませんよ。私だってそんな案件を察して、放っておけませんからね。思い切り手を出してしまいましたよ。表の世界で生きているアルベルトが片付けられるような中身じゃないでしょアレ。思い切り私の範疇の仕事でしたよね。本当にふざけたことがお好きでいらっしゃる。おかげさまでアルベルトは現在自信喪失中です」
よほど鬱憤が溜まっていたのか、大雨の日の激流のような勢いで文句をぶちまけるクロードに、身に覚えがあった国王はとりあえず謝ることしかできなかった。
「そ、それはすまなかった」
「都から引き離して、彼自身の力を存分に発揮、そして再認識してもらいます。それに」
国の最高権力者の前で、クロードは忌々しそうに舌打ちを隠しもせずに吐き捨てた。
「都にいると、香水くさい女どもの処理が大変なんですよ」
まったく腹立たしい、と怒りを零せば、国王はギョッとしたように顔を引きつらせた。
「まさか……、最近若い令嬢たちの不祥事が続いているのはお前の仕業か!?」
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