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幸せな夜の秘め事

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押し開かれる感覚に、身体の奥から脳天を貫くような快感が走る。
つい思いのままに腰を揺らめかせたくなるが、クロードはゆっくりと息を吐いて衝動を治めた。

「ん、ふ」
「ぅあ、っ、すまない、ッく、痛かったか?」
「ふっ、いえ」

気遣わしげな声の見当違いぶりに、クロードは色に濡れた瞳に苦笑を浮かべた。

潔癖が過ぎて、経験のなかったアルベルトだ。
百戦錬磨のクロードにとって、不慣れなアルベルトの躊躇いや不器用さは、むしろ新鮮だっだ。
抱かせろ、なんて言うくせに、与えられる気遣いは、呆れるほど。

まったく、何度体を重ねていると思っているのか。
クロードがこれまでしてきたことを、忘れているのか。

どこか遣る瀬無いような切なさを感じ、身体の芯がキュンと疼く。

「いえ、平気です……ねぇ、もっと激しくても大丈夫ですよ?」
「だ、だが、ッォア、やめッ」
「ほら、アルベルト様ッ」

交わったまま動きを止めた腰を、揶揄うように揺らせば、焦ったように腰が引かれる。

「だ、ダメだ!ダメだと言ってるだろう、待てッ、あっ」

蕩けた目で喘ぎ、理性をなくしたように腰を振り始めたアルベルトに、クロードは愉悦の笑みを浮かべる。
高潔の騎士から、今宵も理性を奪い去ることができたことに、満足して。

「ん、ぁん、もう、げんかい?ぼくの騎士さまァ」
「そ、そんなことはな、ぁ、ぉ、う」

歯を食いしばりながら強がろうとした男を、きゅっと締め付ければ、ぶるりと震え、固まった。
必死に耐えているのだろう。
蠢くナカで、アルベルトの一部が更なる膨張を示し、全身に力が入り、筋肉が盛り上がっている。

あまりの他愛なさに笑いそうになりながらも、クロードは情けを見せて動きを止めた。
クロードより先に達するまいと、涙ぐましい努力をするアルベルトを……楽しむために。

「どうしたの?アルベルトさま」

無邪気を装って、けれど声に色を含んで尋ねれば、それだけで中の怒張がびくりと跳ねる。

「っは、ハァ、くろー、ど、たのむ、まってくれ」
「待つ?なにを?」
「ぁ、う、バッ、バカっ、動くなッ、あ」

ぐにゃぐにゃと蠕動する内腔に、アルベルトは悲鳴に近い呻き声を上げる。
あまりに甘い拷問に、それは喘ぎ声に近かったが。

「んふっ、アルベルトさま、もう、出ちゃう?」
「やッ、止めろッ!」

キュッと締め付けられ、アルベルトが必死にクロードを制止する。
その懸命さを可愛らしく感じながらも、……クロードは、容赦なく体を駆使し、内腔を波打たせ、限界に近く張り詰めたアルベルトの熱を責め立てた。

「ぁ、あぁんっ、ンッ」
「ぅあっ、ダメだっ、イクッ!!」
「あッ、ぁああっ、アルベルトさまァッ」

煮え滾るような体液が最奥に叩きつけられるのを感じながら、クロードも自らの熱を解放した。
余裕な顔をしていたクロードも、本当はもう我慢の限界だったので。

「ん……」
「はぁ……あいしてる……」

絶頂の余韻に蕩けていれば、力尽きたように倒れ込んでくる重い体。
譫言のような甘い愛の囁きを鼓膜に落とされ、クロードは幸福感に蕩然としたのだった。





「だいぶ我慢できるようになったねぇ、明日はもっと長く頑張ろうね?」

早々に回復したクロードが余裕を見せながら水差しとコップを手に微笑めば、アルベルトは「子供扱い……」と呟いて悔しげに呻く。

「畜生……今夜も負けた……この淫魔め……絶対いつか打ち負かしてやる……!」
「はいはい。いつかね、下剋上できるとイイデスネェ」

下剋上の使い方がおかしい、とブツブツ呟いている負けず嫌いな騎士を笑って眺めながら、クロードは先ほど取り上げた紙を返してやった。

「あぁ、ありがとう」

するりと礼の言葉を返す育ちの良い男に、クロードは小さく吹き出しつつ、得意げに口を開いた。

「ね。ぼく、役に立つでしょう?」
「あぁ、とても、な。おかげで俺は出世続き。……なんだか、俺の方が男娼になった気分だ」

情報と手柄を引き換えに、身を売っているようだ、と。
嘆くアルベルトに、クロードは眉を上げた。

「おや、失礼な。私とて、あなたに身を売った覚えなどありませんよ。……そうですね、いわばこれは」

ペロリ、とアルベルトの唇を舐めて、クロードは妖艶に笑んだ。

「内助の功、というやつですよ。騎士様の役に立ちたいという、健気でいじらしい恋人の、涙ぐましい努力じゃないですか。もうちょっと、感じ入ってもいいんですよ?」
「……顔と言葉と行動を一致させてくれ、頼むから」

上目遣いにアルベルトを見つめながら、チロチロと赤い舌を汗の滲んだ塩辛い肌に這わせれば、心ではなくカラダが感じ入ったらしく、アルベルトの分身は再び起ち上りを見せた。

「元気がおありなら……もう一回します?」

少し触れただけでブルリと膨らんだ怒張を揶揄うように訊ねれば、アルベルトは獰猛な笑みを閃かせ、即答した。

「もちろん」
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