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届かない想いに身を寄せて
閑話 誕生日……
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《これは、わざわざ誕生日を設定したのに、思った通りに話か進まなかったことと体調を崩したことにより誕生日を祝うことが出来なかった作者の懺悔である。
例のごとく、本編の進行には全く関係がない。よって、読まなくても何ら問題ない》
※※※
僕らはとある日の昼下がり、個性の塊'sに呼ばれていた。場所はクラーミルの中にあるちょっとおしゃれなカフェ。
普段通り話し合いーとか言う感じではなかったが……何をするつもりで。
「あいつらにしては珍しいよな、こういうところに呼ぶとか」
「ですよね。ジュノンさんの研究所とかでしたし……ウタさん、心当たりとかは?」
「ないなぁ……」
もしかして……と、ポロンくんが不安そうに眉を歪める。
「……おいらたち、なんか変なことしたっけ?」
「いや、それだったら逆に研究所だろう。街中で……ヤバイことは、しないはずだ、多分」
「きっと」
「もしかして」
「お主ら、不確かだ」
「でもカフェでしょ? 普通にお菓子食べるだけかもよ!」
スラちゃんの言葉に少しだけ苦笑いを返しつつ、僕らは待ち合わせ場所のカフェに向かった。
おしゃれな木製の扉。それを押し開けると、チリンチリンと軽やかな音が響いた。そして中では、僕らを招待した五人が先に座って待っていた。
「お、来ましたぜー、お客様!」
「来たねー」
「来たー!」
「まぁ呼んだからね」
「来た」
「……来ましたけど、え?」
僕は、なんとなく違和感に気がついて辺りをキョロキョロと見渡した。カフェがあったのは、そこそこ人通りのある道沿いだ。それにも関わらず、お客さんはこの五人以外にいない。さらに、なんと店員さんまでいないのだ。
「え……ここ、定休日とかなんじゃ」
「そういえば、誰もいないな」
「おいらたちだけ?」
「うん、私らと、君たち。個性の塊'sとUnfinishedだけだよ?」
そう言ってにこにこと笑うジュノンさん。……え、つまり?
「貸しきりー!」
「ふっふっふ……グッドオーシャンフィールドの手にかかれば、容易いことよ」
「お代官様……わたくしはお菓子をお持ちしましたぞ」
「ほぅ、どんな菓子だ?」
「……金の菓子でございます」
テラーさんは茶番を楽しみながら、どこからともなく金貨――の、色と形をしたクッキー――を取り出しておさくさんに渡す。
「ほぉ、これはこれは……。お主も悪よのぉ……」
「いえいえ、お代官様こそ」
「「はっはっは!」」
「……突っ込んで良いのか? これは」
「久々でテンション狂いますね」
……で、結局なんなんだ?
と、思った瞬間、テラーさんが手をパンっと叩く。とたんに辺りは真っ暗になった。
「うわっ?! く、くらい……」
「……ウタ、今さらこれ怖いとか言わないでくれよ?」
「そりゃ、前よりは慣れ」
「よーしいくぞ!」
おさくさんの威勢のいい声。それを合図に、個性の塊's全員の声が聞こえた。
「「「「「ファイヤ」」」」」
「……うわぁ」
思わず、言葉を失った。この部屋中に置かれていたキャンドルに一斉に火が灯り、部屋を照らす。そして、その部屋の中央、僕らの目の前には……
「すっごーい!」
「丹精込めて作り上げましたよ」
超巨大なケーキが置かれていた。フルーツが山のように乗せられ、こちらにもろうそくが立っている。
そして、ケーキの上には『ウタ アリア ポロン Happy Birthday!』の文字。
……そうだ、色々あって、ゆっくり誕生日祝えなかったんだ。だから……わざわざ、用意してくれたのだろうか?
「ケーキはテラー、ただしチョコプレートのチョコはアイリーンチョイスだよ。
ここを貸しきったのはおさくで、演出はドロウ。お金は私が半分、もう半分はレイナとロイン。二人は今日来れないらしいんだけどさ。それから今までUnfinishedが関わってきた人たち。
……例えば、エマさん、彰人さん、コックスさん、エドさん、サラさん。雪月花にも協力してもらったよ」
……名前を聞くたびに、思い出していく。あの日のこと。あのときのこと……。辛いことも、苦しいことも、もちろん、幸せで楽しいことも。
大切な人が、僕らのことを想ってくれたというだけでも……僕らにとって、大切な空間、大切な日になることは間違いなかった。
「……そっか、ポロンとウタさんとアリアさん。……ちゃんと、誕生日、祝う機会ありませんでしたね」
「そうだな……例の一件が終わるまで、気を抜いてはいられなかったからな」
「そーそー。でも」
「今ならどんちゃんできるー!」
……なんだかんだで。
「ウタ?」
なんだかんだで、個性の塊'sも僕らのこと、ある程度大切にしてくれてるのかなって……思ったら、なんだか嬉しくなった。普段、どうしても厳しいことも言われがちだから……。
なんだか、肩が軽くなる。……ずっと力が入っていたみたいだ。やっと抜けて、楽になった。
「……ありがとうございます」
「……いいえー」
「おいらもありがとう!」
「私も……ありがとう」
「さ、クリーム溶けるから、食べよ」
……いつか。
遠くない、いつの日か。
ここに……ここじゃなくてもいいけど、僕らが出会った色んな人を呼んで。
ディランさんも、呼んで。
それでみんなで、みんなの誕生日を、一緒にお祝いできたらって、いつか。
「乾杯は……ウタくん」
「僕ですか!? え、えっとじゃあ……。
祝ってくれて、ありがとうございました! これからもよろしくお願いします! 乾杯!」
「乾杯!」
柳原羽汰18歳。
19になるときは、もっとたくさんの人と一緒に。
例のごとく、本編の進行には全く関係がない。よって、読まなくても何ら問題ない》
※※※
僕らはとある日の昼下がり、個性の塊'sに呼ばれていた。場所はクラーミルの中にあるちょっとおしゃれなカフェ。
普段通り話し合いーとか言う感じではなかったが……何をするつもりで。
「あいつらにしては珍しいよな、こういうところに呼ぶとか」
「ですよね。ジュノンさんの研究所とかでしたし……ウタさん、心当たりとかは?」
「ないなぁ……」
もしかして……と、ポロンくんが不安そうに眉を歪める。
「……おいらたち、なんか変なことしたっけ?」
「いや、それだったら逆に研究所だろう。街中で……ヤバイことは、しないはずだ、多分」
「きっと」
「もしかして」
「お主ら、不確かだ」
「でもカフェでしょ? 普通にお菓子食べるだけかもよ!」
スラちゃんの言葉に少しだけ苦笑いを返しつつ、僕らは待ち合わせ場所のカフェに向かった。
おしゃれな木製の扉。それを押し開けると、チリンチリンと軽やかな音が響いた。そして中では、僕らを招待した五人が先に座って待っていた。
「お、来ましたぜー、お客様!」
「来たねー」
「来たー!」
「まぁ呼んだからね」
「来た」
「……来ましたけど、え?」
僕は、なんとなく違和感に気がついて辺りをキョロキョロと見渡した。カフェがあったのは、そこそこ人通りのある道沿いだ。それにも関わらず、お客さんはこの五人以外にいない。さらに、なんと店員さんまでいないのだ。
「え……ここ、定休日とかなんじゃ」
「そういえば、誰もいないな」
「おいらたちだけ?」
「うん、私らと、君たち。個性の塊'sとUnfinishedだけだよ?」
そう言ってにこにこと笑うジュノンさん。……え、つまり?
「貸しきりー!」
「ふっふっふ……グッドオーシャンフィールドの手にかかれば、容易いことよ」
「お代官様……わたくしはお菓子をお持ちしましたぞ」
「ほぅ、どんな菓子だ?」
「……金の菓子でございます」
テラーさんは茶番を楽しみながら、どこからともなく金貨――の、色と形をしたクッキー――を取り出しておさくさんに渡す。
「ほぉ、これはこれは……。お主も悪よのぉ……」
「いえいえ、お代官様こそ」
「「はっはっは!」」
「……突っ込んで良いのか? これは」
「久々でテンション狂いますね」
……で、結局なんなんだ?
と、思った瞬間、テラーさんが手をパンっと叩く。とたんに辺りは真っ暗になった。
「うわっ?! く、くらい……」
「……ウタ、今さらこれ怖いとか言わないでくれよ?」
「そりゃ、前よりは慣れ」
「よーしいくぞ!」
おさくさんの威勢のいい声。それを合図に、個性の塊's全員の声が聞こえた。
「「「「「ファイヤ」」」」」
「……うわぁ」
思わず、言葉を失った。この部屋中に置かれていたキャンドルに一斉に火が灯り、部屋を照らす。そして、その部屋の中央、僕らの目の前には……
「すっごーい!」
「丹精込めて作り上げましたよ」
超巨大なケーキが置かれていた。フルーツが山のように乗せられ、こちらにもろうそくが立っている。
そして、ケーキの上には『ウタ アリア ポロン Happy Birthday!』の文字。
……そうだ、色々あって、ゆっくり誕生日祝えなかったんだ。だから……わざわざ、用意してくれたのだろうか?
「ケーキはテラー、ただしチョコプレートのチョコはアイリーンチョイスだよ。
ここを貸しきったのはおさくで、演出はドロウ。お金は私が半分、もう半分はレイナとロイン。二人は今日来れないらしいんだけどさ。それから今までUnfinishedが関わってきた人たち。
……例えば、エマさん、彰人さん、コックスさん、エドさん、サラさん。雪月花にも協力してもらったよ」
……名前を聞くたびに、思い出していく。あの日のこと。あのときのこと……。辛いことも、苦しいことも、もちろん、幸せで楽しいことも。
大切な人が、僕らのことを想ってくれたというだけでも……僕らにとって、大切な空間、大切な日になることは間違いなかった。
「……そっか、ポロンとウタさんとアリアさん。……ちゃんと、誕生日、祝う機会ありませんでしたね」
「そうだな……例の一件が終わるまで、気を抜いてはいられなかったからな」
「そーそー。でも」
「今ならどんちゃんできるー!」
……なんだかんだで。
「ウタ?」
なんだかんだで、個性の塊'sも僕らのこと、ある程度大切にしてくれてるのかなって……思ったら、なんだか嬉しくなった。普段、どうしても厳しいことも言われがちだから……。
なんだか、肩が軽くなる。……ずっと力が入っていたみたいだ。やっと抜けて、楽になった。
「……ありがとうございます」
「……いいえー」
「おいらもありがとう!」
「私も……ありがとう」
「さ、クリーム溶けるから、食べよ」
……いつか。
遠くない、いつの日か。
ここに……ここじゃなくてもいいけど、僕らが出会った色んな人を呼んで。
ディランさんも、呼んで。
それでみんなで、みんなの誕生日を、一緒にお祝いできたらって、いつか。
「乾杯は……ウタくん」
「僕ですか!? え、えっとじゃあ……。
祝ってくれて、ありがとうございました! これからもよろしくお願いします! 乾杯!」
「乾杯!」
柳原羽汰18歳。
19になるときは、もっとたくさんの人と一緒に。
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