235 / 387
おばけ? 妖怪? 違います!
実は
しおりを挟む
もう、ワイバーンと男たちのことはみんなに任せた。僕は、スラちゃんにだけ集中すれば良い。
そんなことを感じつつ、僕はそっとステータスを確認した。
名前 ウタ
種族 人間
年齢 17
職業 冒険者
レベル 2300
HP 3450000
MP 1840000
スキル 言語理解・アイテムボックス・鑑定・暗視・剣術(超上級)・体術(超上級)・初級魔法(熟練度50)・光魔法(熟練度35)・炎魔法(熟練度30)・氷魔法(熟練度20)・水魔法(熟練度15)・風魔法(熟練度10)・土魔法(熟練度10)・回復魔法(熟練度20)・使役(超上級)・ドラゴン召喚
ユニークスキル 女神の加護・勇気・陰陽進退・化学
称号 転生者・ヘタレ・敵前逃亡・B級冒険者・Unfinished
……ポロンくんの時と同じ、このステータスじゃ、ほんの少しの攻撃も、スラちゃんにとって致命傷になりかねない。なるべく、攻撃をしないで、スラちゃんを助ける。
「っ……」
スラちゃんは、氷の槍を放って攻撃してくる。シエルトや魔法で打ち消して、なんとかそれを防ぐ。
「スラちゃん……! 僕だよ! 羽汰だよっ!」
「――――」
「ねぇ分からない!? 僕と、ずっと……ずっと一緒に! 旅をしてきたじゃん!」
氷の槍で、剣が弾き飛ばされる。と同時に、僕に、小さな小さな声が聞こえてきた。
「……タ…………」
「スラちゃん……?!」
「ウ……タ…………」
僕は思わず、防御を緩めた。……しかし、その隙を見逃さず、スラちゃんは僕に向かって氷の槍を次々に飛ばす。
……自分のMP、考えているのか? 攻撃のしすぎで死なないか? ……そう思うほど、その攻撃は異常だった。
名前 スライム
種族 スライム族
年齢 ???
職業 ――
レベル 特殊
HP 7000
MP 2275/4000
スキル アイテムボックス・透視・剣術(中級)・体術(中級)・初級魔法(熟練度6)・水魔法(熟練度4)・氷魔法(熟練2)・光魔法(熟練度3)
ユニークスキル 劇薬
称号 実験体
心配になって鑑定してみれば、それは僕の知っているステータスとまるで違っていた。……このままじゃ、MPが尽きて、スラちゃんが……!
ふと、スラちゃんか僕の落とした剣を拾い上げ振りかぶる。僕はアイテムボックスからもう一振りの……おさくさんにもらった剣をとりだし、それを受け止める。
「スラちゃ……!」
「……ウタ」
ハッとしてその顔をみると、スラちゃんはぽろぽろと涙を流しながら、僕に剣を向けていた。
「スラちゃん……大丈夫? 痛くない?」
「……実験、不十分だったね…………。体は、言うこと聞かないのに、動いたら、頭が戻ってきちゃった……。ワイバーンとは、違ったみたいだね……」
「…………」
お互いに一度、剣を弾き返し、もう一度打ち合う。固い金属の音の向こうに、嗚咽混じりのスラちゃんの声がする。
「ウタと、戦いたくないよ……。傷つけたく、ないよ……。でも、体が言うこと聞かなくて……心も、身体も、すごくしんどくて……」
僕とスラちゃんの間でせめぎ合う刃。その力強さや残酷さと真逆であり、本心である、スラちゃんの言葉。
「死にたくない……死なせたくない……」
「…………うん」
「ぼくはっ……あのワイバーンみたいになりたくない! みんなと、まだまだ旅をしていたい! 見ていないものは見てみたいし、食べたことがないのは食べてみたい! いったことがない場所に行ってみたい……。
戦いたくない……戦いたくないよ……ウタ…………」
でも、と、小さくスラちゃんは告げる。
「ウタを殺すくらいなら……ぼくは……」
「――大丈夫」
僕は、震えるその手にそっと触れて、突き返し、距離をとる。
「僕は、『勇気』を持っているんだから。そう簡単に殺されないよ」
再び、攻防が始まる。僕はその間、どうすればスラちゃんの動きが止まるのか、ずっと考えた。
……ちらりと後ろをみる。アリアさんたちはもう、男たちを追い詰めにかかってる。スラちゃんの動きを止める方法は、男の指示の有無ではないようだ。それなら……?
『スラちゃん』の目的はなんだ? ――僕を殺すことだ。僕を殺したら、動きは止まる……。でも、僕は殺される気なんてさらさらない。スラちゃんも、望んではいない。
そのとき、僕の目に、自分の使っている剣が飛び込んできた。……これは、おさくさんにもらった剣。グッドオーシャンフィールド製の、聖剣。
……グッドオーシャンフィールド?
(……そうだ!)
スラちゃんが、僕に剣を突き刺そうと駆けてくる。
振りかぶり、勢いをつけ、僕に突き刺そうとしたその剣を
「――大丈夫」
「…………ぇ」
その勢いのまま、体に受けた。衝撃があり、剣からスッと力が抜け、スラちゃんは急激に脱力し、重心がグラッと傾く。
僕は、その体を受け止めた。
「……スラちゃん」
「ウタっ……なん、で……避け…………」
「よかった、上手くいって」
「…………へ?」
ハッとして僕をみるスラちゃん。確かに命中した剣の傷は、僕の体にはちっともなかったのだ。血の一滴も流れていない。
「衝撃で多少痛かったけどね」
「……え? なんで……」
「……実はこのシャツ、」
僕は着ていたワイシャツを指でつまみ、笑って見せた。
「グッドオーシャンフィールド製なんだ」
一瞬きょとんとしたスラちゃんだったが、やがて、その表情は笑顔に変わった。
「……なんだ、よかった」
そんなことを感じつつ、僕はそっとステータスを確認した。
名前 ウタ
種族 人間
年齢 17
職業 冒険者
レベル 2300
HP 3450000
MP 1840000
スキル 言語理解・アイテムボックス・鑑定・暗視・剣術(超上級)・体術(超上級)・初級魔法(熟練度50)・光魔法(熟練度35)・炎魔法(熟練度30)・氷魔法(熟練度20)・水魔法(熟練度15)・風魔法(熟練度10)・土魔法(熟練度10)・回復魔法(熟練度20)・使役(超上級)・ドラゴン召喚
ユニークスキル 女神の加護・勇気・陰陽進退・化学
称号 転生者・ヘタレ・敵前逃亡・B級冒険者・Unfinished
……ポロンくんの時と同じ、このステータスじゃ、ほんの少しの攻撃も、スラちゃんにとって致命傷になりかねない。なるべく、攻撃をしないで、スラちゃんを助ける。
「っ……」
スラちゃんは、氷の槍を放って攻撃してくる。シエルトや魔法で打ち消して、なんとかそれを防ぐ。
「スラちゃん……! 僕だよ! 羽汰だよっ!」
「――――」
「ねぇ分からない!? 僕と、ずっと……ずっと一緒に! 旅をしてきたじゃん!」
氷の槍で、剣が弾き飛ばされる。と同時に、僕に、小さな小さな声が聞こえてきた。
「……タ…………」
「スラちゃん……?!」
「ウ……タ…………」
僕は思わず、防御を緩めた。……しかし、その隙を見逃さず、スラちゃんは僕に向かって氷の槍を次々に飛ばす。
……自分のMP、考えているのか? 攻撃のしすぎで死なないか? ……そう思うほど、その攻撃は異常だった。
名前 スライム
種族 スライム族
年齢 ???
職業 ――
レベル 特殊
HP 7000
MP 2275/4000
スキル アイテムボックス・透視・剣術(中級)・体術(中級)・初級魔法(熟練度6)・水魔法(熟練度4)・氷魔法(熟練2)・光魔法(熟練度3)
ユニークスキル 劇薬
称号 実験体
心配になって鑑定してみれば、それは僕の知っているステータスとまるで違っていた。……このままじゃ、MPが尽きて、スラちゃんが……!
ふと、スラちゃんか僕の落とした剣を拾い上げ振りかぶる。僕はアイテムボックスからもう一振りの……おさくさんにもらった剣をとりだし、それを受け止める。
「スラちゃ……!」
「……ウタ」
ハッとしてその顔をみると、スラちゃんはぽろぽろと涙を流しながら、僕に剣を向けていた。
「スラちゃん……大丈夫? 痛くない?」
「……実験、不十分だったね…………。体は、言うこと聞かないのに、動いたら、頭が戻ってきちゃった……。ワイバーンとは、違ったみたいだね……」
「…………」
お互いに一度、剣を弾き返し、もう一度打ち合う。固い金属の音の向こうに、嗚咽混じりのスラちゃんの声がする。
「ウタと、戦いたくないよ……。傷つけたく、ないよ……。でも、体が言うこと聞かなくて……心も、身体も、すごくしんどくて……」
僕とスラちゃんの間でせめぎ合う刃。その力強さや残酷さと真逆であり、本心である、スラちゃんの言葉。
「死にたくない……死なせたくない……」
「…………うん」
「ぼくはっ……あのワイバーンみたいになりたくない! みんなと、まだまだ旅をしていたい! 見ていないものは見てみたいし、食べたことがないのは食べてみたい! いったことがない場所に行ってみたい……。
戦いたくない……戦いたくないよ……ウタ…………」
でも、と、小さくスラちゃんは告げる。
「ウタを殺すくらいなら……ぼくは……」
「――大丈夫」
僕は、震えるその手にそっと触れて、突き返し、距離をとる。
「僕は、『勇気』を持っているんだから。そう簡単に殺されないよ」
再び、攻防が始まる。僕はその間、どうすればスラちゃんの動きが止まるのか、ずっと考えた。
……ちらりと後ろをみる。アリアさんたちはもう、男たちを追い詰めにかかってる。スラちゃんの動きを止める方法は、男の指示の有無ではないようだ。それなら……?
『スラちゃん』の目的はなんだ? ――僕を殺すことだ。僕を殺したら、動きは止まる……。でも、僕は殺される気なんてさらさらない。スラちゃんも、望んではいない。
そのとき、僕の目に、自分の使っている剣が飛び込んできた。……これは、おさくさんにもらった剣。グッドオーシャンフィールド製の、聖剣。
……グッドオーシャンフィールド?
(……そうだ!)
スラちゃんが、僕に剣を突き刺そうと駆けてくる。
振りかぶり、勢いをつけ、僕に突き刺そうとしたその剣を
「――大丈夫」
「…………ぇ」
その勢いのまま、体に受けた。衝撃があり、剣からスッと力が抜け、スラちゃんは急激に脱力し、重心がグラッと傾く。
僕は、その体を受け止めた。
「……スラちゃん」
「ウタっ……なん、で……避け…………」
「よかった、上手くいって」
「…………へ?」
ハッとして僕をみるスラちゃん。確かに命中した剣の傷は、僕の体にはちっともなかったのだ。血の一滴も流れていない。
「衝撃で多少痛かったけどね」
「……え? なんで……」
「……実はこのシャツ、」
僕は着ていたワイシャツを指でつまみ、笑って見せた。
「グッドオーシャンフィールド製なんだ」
一瞬きょとんとしたスラちゃんだったが、やがて、その表情は笑顔に変わった。
「……なんだ、よかった」
0
お気に入りに追加
77
あなたにおすすめの小説

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

元ゲーマーのオタクが悪役令嬢? ごめん、そのゲーム全然知らない。とりま異世界ライフは普通に楽しめそうなので、設定無視して自分らしく生きます
みなみ抄花
ファンタジー
前世で死んだ自分は、どうやらやったこともないゲームの悪役令嬢に転生させられたようです。
女子力皆無の私が令嬢なんてそもそもが無理だから、設定無視して自分らしく生きますね。
勝手に転生させたどっかの神さま、ヒロインいじめとか勇者とか物語の盛り上げ役とかほんっと心底どうでも良いんで、そんなことよりチート能力もっとよこしてください。

伯爵家の三男は冒険者を目指す!
おとうふ
ファンタジー
2024年8月、更新再開しました!
佐藤良太はとある高校に通う極普通の高校生である。いつものように彼女の伶奈と一緒に歩いて下校していたところ、信号無視のトラックが猛スピードで突っ込んで来るのが見えた。良太は咄嗟に彼女を突き飛ばしたが、彼は迫り来るトラックを前に為すすべも無く、あっけなくこの世を去った。
彼が最後に見たものは、驚愕した表情で自分を見る彼女と、完全にキメているとしか思えない、トラックの運転手の異常な目だった...
(...伶奈、ごめん...)
異世界に転生した良太は、とりあえず父の勧める通りに冒険者を目指すこととなる。学校での出会いや、地球では体験したことのない様々な出来事が彼を待っている。
初めて投稿する作品ですので、温かい目で見ていただければ幸いです。
誤字・脱字やおかしな表現や展開など、指摘があれば遠慮なくお願い致します。
1話1話はとても短くなっていますので、サクサク読めるかなと思います。

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ
如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白?
「え~…大丈夫?」
…大丈夫じゃないです
というかあなた誰?
「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」
…合…コン
私の死因…神様の合コン…
…かない
「てことで…好きな所に転生していいよ!!」
好きな所…転生
じゃ異世界で
「異世界ってそんな子供みたいな…」
子供だし
小2
「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」
よろです
魔法使えるところがいいな
「更に注文!?」
…神様のせいで死んだのに…
「あぁ!!分かりました!!」
やたね
「君…結構策士だな」
そう?
作戦とかは楽しいけど…
「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」
…あそこ?
「…うん。君ならやれるよ。頑張って」
…んな他人事みたいな…
「あ。爵位は結構高めだからね」
しゃくい…?
「じゃ!!」
え?
ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

王太子に転生したけど、国王になりたくないので全力で抗ってみた
こばやん2号
ファンタジー
とある財閥の当主だった神宮寺貞光(じんぐうじさだみつ)は、急病によりこの世を去ってしまう。
気が付くと、ある国の王太子として前世の記憶を持ったまま生まれ変わってしまうのだが、前世で自由な人生に憧れを抱いていた彼は、王太子になりたくないということでいろいろと画策を開始する。
しかし、圧倒的な才能によって周囲の人からは「次期国王はこの人しかない」と思われてしまい、ますますスローライフから遠のいてしまう。
そんな彼の自由を手に入れるための戦いが今始まる……。
※この作品はアルファポリス・小説家になろう・カクヨムで同時投稿されています。



この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる