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おばけ? 妖怪? 違います!
化け物
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「まずー、ポロンくんたちが見た人影だけどー、もしかしたら幻だったかもしれない」
開口一番、アイリーンさんはそう言った。僕らはもちろん、追いかけていった二人が一番動揺を隠せないでいた。
「そ、そんなわけないやい! おいら、ちゃんと見たよ!?」
「そうですよ! 私、足音だって聞きましたし、草が踏まれているところとかを追って行ったんですから、幻な訳ありません!」
「それがさー、出来るんだよね、そういうことー」
そう言いながら、アイリーンさんは手のひらを上に向ける。
「メイドール」
すると、その手のひらの上に僕とそっくりな人形が出来上がった。大きさは手のひらサイズだが、見た目はぼくそっくりだ。
「わ……ウタ兄!?」
「メイドールは水魔法と土魔法と光魔法の合わせ技だよー。土魔法で形をつくって、光と水で、光に色をつけて、そっくりに仕上げられるんだー。まぁー化学と魔法の合わせ技ー? みたいなー?
これをー、えいっ!」
「わわっ?!」
アイリーンさんが掛け声と同時に腕を大きく振ると、手のひらサイズだった『僕』が僕のとなりに並ぶ。上から下までそっくりだし、動いている。
「目の前の人真似したから結構そっくりだねー! コナンの犯人みたいのも出来るよー!」
「犯人……」
「声だけは再現できないけど、それ以外ならこれで完璧! さわれるしねー!
人を表現するのは色々方法があるけど、一番オーソドックスなのがこれだよー! これが、二人の追いかけてった正体じゃないかなー?」
「じゃあ……だとしたら、おいらたちにあれを見せたのはなんでなんだろう」
アイリーンさんは『僕』を消し、人差し指を一本たてた。
「可能性としてはー、ギルドからずっとその人たちがついてきていて、ドラくんがいなくなるタイミングを狙っていた、とかねー。ギルドで話を聞いていたなら、ドラゴンわざわざ相手にはしようと思わないでしょー、レベル100だしねー!」
魔王レベル10000なの? えー、手応えなーい、とか言ってたのはどこのパーティーでしたっけ? 個性の塊'sですよね? そんなこと言えた立場じゃないですよ?
ともかく、まぁ、普通の人の感覚からすれば、なんの違和感もない。ドラくんと戦うのは避けたいだろう。
「で、さっきのグランスなんだけど、魔方陣の範囲が狭いんだー。そうすると、折角罠にはめても、誰か一人くらいはみ出して、回復薬とか飲ませちゃうかもしれないじゃーん?
それが嫌だったから、頭数を減らすために、囮として人影を出したのかなー? スラちゃんを一人にするわけないし、スラちゃん引っ張って人影を追いかけることもないよね」
「そうだ、それでそのあと、ワイバーンが……」
残った僕らはワイバーンと戦った。そして勝った。拘束した。
……はず、だったのに。
「まぁー、ウタくんたちが気を失ったあと、冷静に脱出したんだろうねー」
「で、でも、僕リヴィーで……ワイバーンは炎魔法は……」
「頭はやわらかーくしなきゃいけないんだよー?
炎で焼く以外にも、例えば、氷魔法で凍らせて、それを砕くってやり方もあるんだよー」
「なるほど……」
「待て」
アイリーンさんの意見に、ドラくんが口を挟む。
「確かに、その方法ならばリヴィーから脱出することは可能だろう。しかし、自らに巻き付いている蔦を凍らせようとすれば、気をつけないと自分の身も傷つける。
ワイバーンの力は大きい。知能も高い。しかし、それだけの繊細な動きが出来るとは到底思えない」
「でもさ……ウタくん、スラちゃんを連れてったの、どんな人たちだと思ってる?」
「え……スラちゃんが生まれた研究施設か何かの…………あ」
「だとすればー?」
「……スラちゃんと同じように、人間の知能を植えつけられている可能性」
「うん、正解!」
「なら……あの人影も、罠も、ワイバーンが?」
「その可能性は低いかな。水、土、光、闇……。4つの属性魔法を使いこなすって、相当難しいと思うよ?
そもそもワイバーンがよく使うのは氷魔法と雷魔法だけだしね」
つまり……どういうことだ? 人影や罠をかけたのは人で、それは別にいて、スラちゃんの実験施設にいた人。で、その人たちが、おそらく実験で生まれたであろう人の知能を持ったワイバーンとなぜか協力している……?
目的は、スラちゃんを拐うこと。でも、拐ったところでなんになるのか。人の心を持っているスラちゃんがおとなしく従うとは考えにくい。
「……あいつらの、目的なんだけど、ほぼ100%実験対象だよね」
「あれ以上何を実験するっていうんだ?」
「スラちゃんは、たぶん、その施設の唯一の生き残り。そして、たまたま成功した検体。さらにジュノンの気まぐれで人にまでなっちゃってるときたんだよー。
……次の段階に進むにはもってこいだよね」
「次の段階……?」
「『化け物の育成』……ってことかな」
嫌な感じが背筋を駆ける。僕が感じたそれは、決して間違いではなかった。
「人でなく、魔物でなく、誰の力も及ばない存在……それこそ、魔王に匹敵するほどの。
……でも、そのために、多分潜在的な力を強制的に拡張する。感情なんて気にせずに」
「じゃあ……」
「止めないと、スラちゃんはスラちゃんじゃなくなるよ」
開口一番、アイリーンさんはそう言った。僕らはもちろん、追いかけていった二人が一番動揺を隠せないでいた。
「そ、そんなわけないやい! おいら、ちゃんと見たよ!?」
「そうですよ! 私、足音だって聞きましたし、草が踏まれているところとかを追って行ったんですから、幻な訳ありません!」
「それがさー、出来るんだよね、そういうことー」
そう言いながら、アイリーンさんは手のひらを上に向ける。
「メイドール」
すると、その手のひらの上に僕とそっくりな人形が出来上がった。大きさは手のひらサイズだが、見た目はぼくそっくりだ。
「わ……ウタ兄!?」
「メイドールは水魔法と土魔法と光魔法の合わせ技だよー。土魔法で形をつくって、光と水で、光に色をつけて、そっくりに仕上げられるんだー。まぁー化学と魔法の合わせ技ー? みたいなー?
これをー、えいっ!」
「わわっ?!」
アイリーンさんが掛け声と同時に腕を大きく振ると、手のひらサイズだった『僕』が僕のとなりに並ぶ。上から下までそっくりだし、動いている。
「目の前の人真似したから結構そっくりだねー! コナンの犯人みたいのも出来るよー!」
「犯人……」
「声だけは再現できないけど、それ以外ならこれで完璧! さわれるしねー!
人を表現するのは色々方法があるけど、一番オーソドックスなのがこれだよー! これが、二人の追いかけてった正体じゃないかなー?」
「じゃあ……だとしたら、おいらたちにあれを見せたのはなんでなんだろう」
アイリーンさんは『僕』を消し、人差し指を一本たてた。
「可能性としてはー、ギルドからずっとその人たちがついてきていて、ドラくんがいなくなるタイミングを狙っていた、とかねー。ギルドで話を聞いていたなら、ドラゴンわざわざ相手にはしようと思わないでしょー、レベル100だしねー!」
魔王レベル10000なの? えー、手応えなーい、とか言ってたのはどこのパーティーでしたっけ? 個性の塊'sですよね? そんなこと言えた立場じゃないですよ?
ともかく、まぁ、普通の人の感覚からすれば、なんの違和感もない。ドラくんと戦うのは避けたいだろう。
「で、さっきのグランスなんだけど、魔方陣の範囲が狭いんだー。そうすると、折角罠にはめても、誰か一人くらいはみ出して、回復薬とか飲ませちゃうかもしれないじゃーん?
それが嫌だったから、頭数を減らすために、囮として人影を出したのかなー? スラちゃんを一人にするわけないし、スラちゃん引っ張って人影を追いかけることもないよね」
「そうだ、それでそのあと、ワイバーンが……」
残った僕らはワイバーンと戦った。そして勝った。拘束した。
……はず、だったのに。
「まぁー、ウタくんたちが気を失ったあと、冷静に脱出したんだろうねー」
「で、でも、僕リヴィーで……ワイバーンは炎魔法は……」
「頭はやわらかーくしなきゃいけないんだよー?
炎で焼く以外にも、例えば、氷魔法で凍らせて、それを砕くってやり方もあるんだよー」
「なるほど……」
「待て」
アイリーンさんの意見に、ドラくんが口を挟む。
「確かに、その方法ならばリヴィーから脱出することは可能だろう。しかし、自らに巻き付いている蔦を凍らせようとすれば、気をつけないと自分の身も傷つける。
ワイバーンの力は大きい。知能も高い。しかし、それだけの繊細な動きが出来るとは到底思えない」
「でもさ……ウタくん、スラちゃんを連れてったの、どんな人たちだと思ってる?」
「え……スラちゃんが生まれた研究施設か何かの…………あ」
「だとすればー?」
「……スラちゃんと同じように、人間の知能を植えつけられている可能性」
「うん、正解!」
「なら……あの人影も、罠も、ワイバーンが?」
「その可能性は低いかな。水、土、光、闇……。4つの属性魔法を使いこなすって、相当難しいと思うよ?
そもそもワイバーンがよく使うのは氷魔法と雷魔法だけだしね」
つまり……どういうことだ? 人影や罠をかけたのは人で、それは別にいて、スラちゃんの実験施設にいた人。で、その人たちが、おそらく実験で生まれたであろう人の知能を持ったワイバーンとなぜか協力している……?
目的は、スラちゃんを拐うこと。でも、拐ったところでなんになるのか。人の心を持っているスラちゃんがおとなしく従うとは考えにくい。
「……あいつらの、目的なんだけど、ほぼ100%実験対象だよね」
「あれ以上何を実験するっていうんだ?」
「スラちゃんは、たぶん、その施設の唯一の生き残り。そして、たまたま成功した検体。さらにジュノンの気まぐれで人にまでなっちゃってるときたんだよー。
……次の段階に進むにはもってこいだよね」
「次の段階……?」
「『化け物の育成』……ってことかな」
嫌な感じが背筋を駆ける。僕が感じたそれは、決して間違いではなかった。
「人でなく、魔物でなく、誰の力も及ばない存在……それこそ、魔王に匹敵するほどの。
……でも、そのために、多分潜在的な力を強制的に拡張する。感情なんて気にせずに」
「じゃあ……」
「止めないと、スラちゃんはスラちゃんじゃなくなるよ」
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