チート能力解放するにはヘタレを卒業しなきゃいけない

植木鉢たかはし

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魔王だよ! 全員集合!

いざ出陣!

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「……ウタくん、なんか疲れてる?」

「腕は疲れても心はハッピーなのでも問題ないですよ」

「何があったんだ昨日」


 次の日、腕はめっちゃ疲れた。さすがに痛いし痺れたし……。世の男性は頑張ってたんだなぁ、と、心の底から思いました。


「……その、悪いな。腕、抜かせてやればよかったんだが……」

「安心しすぎて、みんなあのあとガチ寝しちゃったもんね」

「ごめんなさい……」

「ごめん、ウタ兄……」

「いやいや! 言い出したの僕だし、なんだかんだで、僕も安心して寝れたからさ。大丈夫だよ。
 ……まぁ、今後は一回につき一人でお願いします」

「よし、じゃんけんしようか」

「勝った順ですよ!」

「申し訳ないんじゃなかったの!?」


 というかそのじゃんけん、アリアさん参加しちゃダメじゃね?! 昨日は一人挟んでたからいいとして、一人ずつってことはその分顔も近……うわぁぁぁぁぁぁ! 発言取り消したい!


「自分の発言にはー、責任持たないとー!」

「そうですね! しれっと心読むのやめてくれませんか?! そしてそうなるとホテル・チョコレートの宿賃、マジな方でチョコレートの銀貨二枚になりますよ!?」

「願ったり叶ったり」

「ちょいちょーい!」


 あぁ……ここはどこかって? 魔王城へ向かう船の中だよ! 今、船はアリアさんが操縦していて、あと15分ほどで着くと言う。
 操縦室と繋がっている少し広い部屋。操縦室とその部屋の間の扉を開け放ち、僕らはそこで会話をしていた。


「……でもさー? ウタくん、そんなこと言いつつ、前よりアリアさんに慣れたよねー」

「なれっ……え!?」

「だって前はー、少し話すだけで照れてたしー、もっとおどおどーってしてたし?」

「えー……慣れたんですかね」

「慣れたー!」


 んんー……ビミョーな気持ち。
 でもまぁ、その分『仲間』になれてるの……かな。だったら良いんだけど。


「……まぁ、その分隠し事出来なくなるから、気をつけてね」

「…………」


 アイリーンさんが小声で言った言葉に、僕はなにも返せなかった。そして、そんな僕を横目で見ていたアリアさんに、気づかなかった。


◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈


「魔王城……って、いかにもだな」


 ポロンくんが呟く。目の前にはそびえ立つ巨大な黒々とした城。それを見て、目を輝かせていたジュノンさんが、不意にテラーさんに問う。


「さーて、テラー? ここから入ったら君に案内してもらおうか?」

「出れなくなりますがよろしいでしょうか」

「一回来たでしょ!?」

「一回しか来てないし、それ四年前だし、私だよ!?」

「テラー……って、そういえば、初めてあったとき、サワナルに住んでるのに、サワナルの森で迷ってたよな」

「『方向音痴極』だからね」

「なんか極めてる」

「まぁ大丈夫だよ。出れなくなったら適当に壁壊せば出れるから」

「壊す気満々だな!?」

「あ、それならいっか」

「良くないですよテラーさん」


 よし、じゃあ乗り込もう! ……となったのに、急に先頭を歩くテラーさんが足を止めた。


「あ、下準備」

「忘れてたね」

「とりあえずウタくんたち、はい」

「はい……魔属性球体ですね?」


 渡されたのは丸っこいそれを5つ。


「一人ひとつね。その中に、ガーディア三回分入ってるから」

「私たちでもー、自分守るので精一杯っこともあるからねー」

「そういうときに、これで何とかしてくれるかな」

「ひ……はい」


 や、やっぱり魔王戦は違うなぁ……! 塊'sでも大変なんだもんなぁ……。僕は震えつつ魔属性球体をみんなに渡す。


「……ウタ、しっかりしてよ」

「リーダーだろ、ウタ」

「だ、だって……」

「全く、変わってるんだか、変わっていないんだか……」


 僕らがそんなやり取りをしているなか、個性の塊'sの方はというと……。


「三時のおやつかける2、短期間ゴリラ」

「火事場の馬鹿力、それは残像だ」

「アンドロイド、打撃半減」

「ブラックサンダー! ……モグモグ」

「鉄壁の要塞」


 着々とバフをかけまくってました。……ん? なんか、聞いたことないのが最後に……。


「鉄壁の要塞?」

「……あー、そういえば『マーラー』としてのステータスしか見せてなかった」

「なにやってるのジュノン」

「えーだってー、なんか探されてるみたいだったしー、すぐにバレたら面白ろくないじゃーん!
 ……え、鑑定したい?」


 僕が激しくうなずくと、ジュノンさんはちょっとうーんと考えて、


「今バフかかってる状態だから、ビックリしないでね? 別に良いけど」

「やった!」

「ウタ! 教えてくれよ!?」

「分かってます! よーし……鑑定!」



名前 ジュノン

種族 人間

年齢 22

職業 化学教師(勇者?)

レベル 1000

HP 6000000

MP 4000000

スキル アイテムボックス・偽装・威圧(鬼級)・暗視・剣術(超上級)・体術(超上級)・初級魔法(熟練度50)・炎魔法(熟練度40)・水魔法(熟練度45)・氷魔法(熟練45)・風魔法(熟練度35)・雷魔法(熟練度40)・土魔法(熟練度40)・光魔法(熟練度30)・闇魔法(熟練度50)・回復魔法(熟練度35)

ユニークスキル ステータス上限無効化・魔力向上・魔王の微笑み・どうでもいいし・侵略す・鉄壁の要塞・化学式

称号 元最強の勇者?・真の魔王・敵にまわしたら危険・無慈悲・個性の塊's



「…………」

「……ウタ?」

「これは十倍、これは十倍、十分の一しても……あ、あかん。大体『鬼』ってなんだ『鬼』って」

「ウタ?」


 うん……ちょっと落ち着こう。今までで一番ひどいぞ。
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