チート能力解放するにはヘタレを卒業しなきゃいけない

植木鉢たかはし

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魔王だよ! 全員集合!

いいこと?

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名前 スライム

種族 スライム族

年齢 ???

職業 ――

レベル 23(使役者と共通)

HP 3300

MP 1800

スキル アイテムボックス・透視・剣術(初級)・体術(初級)・初級魔法(熟練度3)・水魔法(熟練度2)・氷魔法(熟練1)・光魔法(熟練度1.5)

ユニークスキル 劇薬

称号 心はいつでもぷるぷる・ウタの使役魔物・癒し


 ……言いたいことは色々あるが、擬人化されたスラちゃんのステータスはこんな感じだ。
 そうだね、心はいつでもぷるぷるだね! どうしちゃったのかな、この称号は!

 ジュノンさんから言われた注意点は、大きく分けて三つ。
 まず、スラちゃんは基本的に、あのスライムの姿に戻ることはできないということ。


「ウルフとかで試したときは、自分の意思で戻ることができたけど、元々の体が小さいのと、力が弱いので、戻ることはまず無理かなー」

「じゃあ、ずっとこのまま?」

「基本的にはね」


 基本的には。つまりは、例外があるときの言い方である。その例外と言うのは注意点の二つ目、『極端にHP、MPが減ったとき』だった。


「人でいるよりも元の姿の方が体に負担が少ないって判断されるのかもね。とにかく、HPかMPが9割減るとスライムに戻る可能性があるよ。時間経過でまた人になると思うけど。
 『劇薬』とか使うとき注意したら?」


 そして最後の注意点。それは、


「スラちゃんは、元々スライムじゃん?」

「う、うん……」

「擬人化することで、魔法における、自分の得意分野は格段に能力を伸ばせる。でもその分、弱点となる部分が完全に穴になる」

「……っていうと? どういうことなんだ?」

「スライムはそもそも水に強いから、水魔法とかは強いけど、そもそも弱かった炎とかは致命的なくらいの弱点だよって」


 なるほど。とりあえず注意する点は分かった。スラちゃんはまだ魔法の熟練度も高くないし、しばらくは僕らがしっかり守らないと。


「……えーっと、ジュノンのどっきり大作戦も終わったから、お城いきますか」

「そーだねー」

「めんどくさぁ」

「ジュノン、魔王倒すため、ね?」

「はぁーい」


 ゆるいなぁ、個性の塊's。ジュノンさん、第一印象よりは怖くなくなったな。今はスラちゃん擬人化してくれたお礼の方が大きい。


「じゃーお城行こっか。ウタくんたちも来るよね?」

「……え?」

「来・る・よ・ね?」

「行きます」


◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈


 なぜ僕らも一緒なのかは意味が分からないが、とりあえずお城に舞い戻ってきた。レイナ様とロイン様と、本日二回目のこんにちはだ。
 ついでにスラちゃんのことも紹介した。レイナさんが不意に近づいてきて、スラちゃんの頭を撫でたのはビックリした。


「――ま、そんなわけだから船貸してほしいんだよねー」


 ところでジュノンさん、国のトップに対して、それでいいのか。ま、まぁダメだとしてもジュノンさんはオッケーだよな。殺しても死ななそうだしなぁ。


「お話はわかりました。ですが、今ちょうど貿易のためにほとんどの船が出てしまっていて、貸せる船は残念ながらないんです。
 船が国に戻ってくるのに、一週間は少なくともかかるかと……」

「ほらね? 言ったでしょジュノン」

「ちぇっ」


 舌打ちはどうなんですか舌打ちは。偉い人の前……あ、でもこの人たち、神様に反抗してたもんな。そんな人たちだったね、はい。


「…………」

「ん、姉さん? どうかした?」


 不意に、レイナ様がロイン様の腕を軽く引く。そして、手話でなにかを話す。それを見たジュノンさんは、にっこりと笑って僕らを見た。


「いいねぇ、それ! じゃあお願い!」

「え……え?」

「あの、アリア姫たちは、船でクラーミルまで来られたんですよね? 姉が、その船を貸したらどうかと。おそらく個性の塊'sならばそう時間はかからないでしょうし」

「な、なるほど……」

「……聞く必要もないと思うが、どうするんだ、ウタ」


 そういうことならもちろん貸そう。別に急いでいるわけでもないし、クラーミルは広いらしい。ここから移動するまでに個性の塊'sなら魔王を倒してくるだろう。


「はい、もちろん貸し」

「ちなみにその場合、みんなついてきてもらうからね?」

「……え」


 そう声をあげたのは、僕らじゃない。


「え、待って待って、ジュノン? え、ウタくんたち連れてくつもり?」

「そうだけど?」

「いやいやいや、ね、私たちなら大丈夫だけどさ、ウタくんたちジュノンの魔法耐えらんないよ? 本当に」

「行くって行為自体が死亡フラグだな」

「死ぬー!」

「さっきから会話が物騒すぎません!?」

「それはさー、テラーとか守ってあげてよー」

「……ジュノンの防ぐの、さすがにきっついんだけど」


 え、そもそもなんで僕らがついていくんだ? 個性の塊'sだけでよくないか? そんな僕の思考を読み取ったようにジュノンさんが笑う。


「船の操縦、出来ないからさ!」

「えええええっ?!」


 ふ、船の操縦出来ないのに、船で行こうとしてたんですか!?


「船がほとんど出てるってことは、操縦士もいないんでしょー?」

「そう……ですが、しかし」

「一緒に来て、くれるよね?」

「…………ハイ」


 ジュノンさんに言いくるめられたその場の一同。なすすべなく僕らは魔王城へ同行することになりました。


「…………っていうか、前にも魔王城行ったんですよね? その時は、どうやって?」

「船で……あ、忘れて」

「あの」

「忘れろ」

「ハイ」
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