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魔王だよ! 全員集合!
ジュノンを探して三千里
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ジュノンさんが研究所に行ったと聞いて、僕らはどうしようもなくそちらに向かうことにした。
「……学校、ってのは、なんなんだ? あんなにヤバイやつがいるところなのか?」
「アリアさん……あんな人、普通はいませんからね?」
「そうなのか……。ウタがいた学校は?」
「同じくそんな人いません。普通は」
隣の研究所は、学校よりもずっとずっと多きい。まず、中に入れてくれるのだろうか? 入ったところでジュノンさんを見つけられる気がまっっったくしない。
取り敢えず入り口の方に向かい、入れてもらえるかどうか聞いてみることにした。そして、今まさに入ろうかと言うとき、
「……ん?」
「どうした、ウタ?」
僕の視界の端に映ったのは、一人の人間。……なのだが、その人は研究所の向かいの建物の屋根の上にいて、研究所に向かって走り、そして、
「ふぁっ?!」
そのまま研究所へ飛び移った。いや、これ伝わらないかもしれないけど、その建物と研究所の間が狭かった訳じゃない。むしろ大きな通りを一つ挟んでいるし、普通の家だから、もちろん研究所の方が高い。どんなにざっくり考えても、普通は無理だろ!? ってレベルだ。
「……ウタ兄? なんか変なの見たか?」
「あ……ひ、人が! 人が! 屋根から! びゅーんって!」
「……は?」
「ポロンくん! びゅーんって! ね!? びゅーんって!」
「うんうん、待って待って待って? ウタ兄? 語彙力喪失しすぎてて、何をどう言いたいのか全くわからないよ?」
「だって! だってぇ!」
「……人が向こうの建物からこの研究所の屋上に飛び移ったのか?」
「そうなんですっ!」
「よくわかりましたね、アリアさん」
「ウタが私の色々を解読できるようになってきたからな。一方的だとなんかムカつくだろ? だから練習した」
「いや練習するものなのか、それ」
「まぁいいや、とりあえずは落ち着け、ウタ。ひっひっふーだぞ」
「ひっ、ひっ、ふー……ひっ、ひっ、ふー……」
「なに生む気だよ!」
なんとか落ち着いて、冷静に考える。……あれだなぁ。どっかの誰かならぴょーんといけそうだな。というか、塊'sのあれを見てきたのに、こんなんで取り乱すのか、僕は。
……いや、違うな。塊'sはすごすぎてもう放心状態だったけど、今回は人ができそうな感じですごいことしてたから驚いただけだな。うん。
「……ウタ、お前は忘れてるかもしれないが、お前はそれをやってたんだぞ?」
「え……いやいやいや、さすがにそれはないですよぉ」
「マルティネスでのことを忘れたか」
……正直必死すぎて覚えてない。え、なにやったっけ、僕。
「言っとくけどな? 初級風魔法で空を飛ぶとか、普通あり得ないからな?」
「えっ、そうなんですか!?」
「そうだぞ!? 土魔法だって、属性魔法として、リヴィーが使用できるようになるから、蔦が伸ばせるんだ。お前がやってるのも十分人外だからな?」
あぅ……やっぱり、『勇気』は尋常じゃないのか……って、
「アリアさんだって発動させてたじゃないですか! 『勇気』!」
「私はあれ一回だけだ! お前は一回じゃないだろ!?」
「はいはーい、二人とも言い合っててもしょうがないからさ? 早くいこうよ。おいらたち、先行っちゃうよ?」
「「置いてかないで!」」
「喧嘩するほど仲がいいってことですね!」
「はぁ……」
喧嘩した訳じゃないのだが……うん。
まぁ言い合っていてもしょうがない。入り口の方に向かっていって、入れてもらえるか聞いてみよう! おー!
「……いかにもな感じだな」
そう、いかにも『研究所』って感じで、機械や工業の街といえど、ちょっと浮いてる。
白く高い壁。壁が分厚いようで、中の音は全く聞こえない。一ヶ所だけガラス戸になっていて、それが入り口のようだ。
近づいてみると自動的に扉が開く。ゆっくりと足を踏み入れると、右側に、受付のような場所があった。
そこにいた女性がにこりとこちらに微笑みかける。……もちろん、あんな悪寒は走りませんでした、はい。
「えっ……と、僕ら、Unfinishedって言うんですけど、ジュノンさんを探していて……こちらに、いらっしゃいますか?」
僕が受け付けに行き、遠慮がちにそう訊ねると、女性は手元のファイルのようなものに目を落とし、なんページか捲ると、僕らを見て意外なことを言った。
「Unfinished……ヤナギハラ・ウタ、マルティネス・アリア、ポル・ポロン、セリエ・フローラ。この四人のパーティーで間違いありませんね?」
「え!? ……あ、は、はい! そうです! 僕が柳原羽汰です!」
「みなさんがおっしゃるように、ジュノンさんはこちらにいらっしゃいます。ジュノンさんの研究所は地下ですね」
「は、はぁ……」
「そして」
女性は僕らと目を合わせ、真剣な表情で言う。
「みなさんに、ジュノンさんから伝言が届いています」
「……え」
「ジュノンが?」
「読みますね。
『私に会いに来るってことは、それ相応の覚悟をしてるってことだよね? 敵陣じゃないからって、油断してたら痛い目みるよ?』……と」
「……え、えええええっ?!」
こっわ! なにこれこわっ! え、個性の塊'sってこんなに怖い人いたっけ!? いや、確かに敵に向ける目は怖かったけどさ、え!? 怖いよ! なんなの!?
「では、向こうに地下へ続く階段がありますので」
「ちょっと落ち着いてから行きませんか!?」
「さすがリーダー、私も同意見だ!」
「お、おいらも!」
「私もです!」
「よしじゃあ、みんなでひっひっふーひっひっふー」
「「「ひっひっふー、ひっひっふー」」」
「……学校、ってのは、なんなんだ? あんなにヤバイやつがいるところなのか?」
「アリアさん……あんな人、普通はいませんからね?」
「そうなのか……。ウタがいた学校は?」
「同じくそんな人いません。普通は」
隣の研究所は、学校よりもずっとずっと多きい。まず、中に入れてくれるのだろうか? 入ったところでジュノンさんを見つけられる気がまっっったくしない。
取り敢えず入り口の方に向かい、入れてもらえるかどうか聞いてみることにした。そして、今まさに入ろうかと言うとき、
「……ん?」
「どうした、ウタ?」
僕の視界の端に映ったのは、一人の人間。……なのだが、その人は研究所の向かいの建物の屋根の上にいて、研究所に向かって走り、そして、
「ふぁっ?!」
そのまま研究所へ飛び移った。いや、これ伝わらないかもしれないけど、その建物と研究所の間が狭かった訳じゃない。むしろ大きな通りを一つ挟んでいるし、普通の家だから、もちろん研究所の方が高い。どんなにざっくり考えても、普通は無理だろ!? ってレベルだ。
「……ウタ兄? なんか変なの見たか?」
「あ……ひ、人が! 人が! 屋根から! びゅーんって!」
「……は?」
「ポロンくん! びゅーんって! ね!? びゅーんって!」
「うんうん、待って待って待って? ウタ兄? 語彙力喪失しすぎてて、何をどう言いたいのか全くわからないよ?」
「だって! だってぇ!」
「……人が向こうの建物からこの研究所の屋上に飛び移ったのか?」
「そうなんですっ!」
「よくわかりましたね、アリアさん」
「ウタが私の色々を解読できるようになってきたからな。一方的だとなんかムカつくだろ? だから練習した」
「いや練習するものなのか、それ」
「まぁいいや、とりあえずは落ち着け、ウタ。ひっひっふーだぞ」
「ひっ、ひっ、ふー……ひっ、ひっ、ふー……」
「なに生む気だよ!」
なんとか落ち着いて、冷静に考える。……あれだなぁ。どっかの誰かならぴょーんといけそうだな。というか、塊'sのあれを見てきたのに、こんなんで取り乱すのか、僕は。
……いや、違うな。塊'sはすごすぎてもう放心状態だったけど、今回は人ができそうな感じですごいことしてたから驚いただけだな。うん。
「……ウタ、お前は忘れてるかもしれないが、お前はそれをやってたんだぞ?」
「え……いやいやいや、さすがにそれはないですよぉ」
「マルティネスでのことを忘れたか」
……正直必死すぎて覚えてない。え、なにやったっけ、僕。
「言っとくけどな? 初級風魔法で空を飛ぶとか、普通あり得ないからな?」
「えっ、そうなんですか!?」
「そうだぞ!? 土魔法だって、属性魔法として、リヴィーが使用できるようになるから、蔦が伸ばせるんだ。お前がやってるのも十分人外だからな?」
あぅ……やっぱり、『勇気』は尋常じゃないのか……って、
「アリアさんだって発動させてたじゃないですか! 『勇気』!」
「私はあれ一回だけだ! お前は一回じゃないだろ!?」
「はいはーい、二人とも言い合っててもしょうがないからさ? 早くいこうよ。おいらたち、先行っちゃうよ?」
「「置いてかないで!」」
「喧嘩するほど仲がいいってことですね!」
「はぁ……」
喧嘩した訳じゃないのだが……うん。
まぁ言い合っていてもしょうがない。入り口の方に向かっていって、入れてもらえるか聞いてみよう! おー!
「……いかにもな感じだな」
そう、いかにも『研究所』って感じで、機械や工業の街といえど、ちょっと浮いてる。
白く高い壁。壁が分厚いようで、中の音は全く聞こえない。一ヶ所だけガラス戸になっていて、それが入り口のようだ。
近づいてみると自動的に扉が開く。ゆっくりと足を踏み入れると、右側に、受付のような場所があった。
そこにいた女性がにこりとこちらに微笑みかける。……もちろん、あんな悪寒は走りませんでした、はい。
「えっ……と、僕ら、Unfinishedって言うんですけど、ジュノンさんを探していて……こちらに、いらっしゃいますか?」
僕が受け付けに行き、遠慮がちにそう訊ねると、女性は手元のファイルのようなものに目を落とし、なんページか捲ると、僕らを見て意外なことを言った。
「Unfinished……ヤナギハラ・ウタ、マルティネス・アリア、ポル・ポロン、セリエ・フローラ。この四人のパーティーで間違いありませんね?」
「え!? ……あ、は、はい! そうです! 僕が柳原羽汰です!」
「みなさんがおっしゃるように、ジュノンさんはこちらにいらっしゃいます。ジュノンさんの研究所は地下ですね」
「は、はぁ……」
「そして」
女性は僕らと目を合わせ、真剣な表情で言う。
「みなさんに、ジュノンさんから伝言が届いています」
「……え」
「ジュノンが?」
「読みますね。
『私に会いに来るってことは、それ相応の覚悟をしてるってことだよね? 敵陣じゃないからって、油断してたら痛い目みるよ?』……と」
「……え、えええええっ?!」
こっわ! なにこれこわっ! え、個性の塊'sってこんなに怖い人いたっけ!? いや、確かに敵に向ける目は怖かったけどさ、え!? 怖いよ! なんなの!?
「では、向こうに地下へ続く階段がありますので」
「ちょっと落ち着いてから行きませんか!?」
「さすがリーダー、私も同意見だ!」
「お、おいらも!」
「私もです!」
「よしじゃあ、みんなでひっひっふーひっひっふー」
「「「ひっひっふー、ひっひっふー」」」
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