上 下
189 / 387
迷子の迷子の冒険者捜索!

次は?

しおりを挟む
「で、このあとどこに行く? ウタ兄!」


 ポロンくんが聞いてくる。が……、


「え、僕に聞く?」

「だって、ウタ兄、Unfinishedのリーダーだろ?」

「あれ? 結局それ継続?」

「男だろ?!」

「そうだけど!」


 なんか……決めてよかったな、パーティー名。言われるだけでちょっとぐっとくる。Unfinished……うん、好きだ。


「……でもまぁ、どこに行こうか。
 今日は……って、もう夜が明けてきたな」

「そういえば、真夜中でしたね」

「サイカんとこではメロウ、もう寝てただろ?」

「……まぁ、夜更かししたってことで、一旦寝ますか」

「そうですね。……ふぁあ……思い出したら、急に眠くなってきました……」

「あはは……」

「寝るか」

「ですね」


 深夜4時を回ったところだった。とりあえず僕らは布団の上で眠ることにしたのだ。


◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈


 さすがに疲れてたのだろう。ぐっすり眠った。次の日、起きたのは12時過ぎだった。ポロンくんとフローラはまだすやすやと眠っていて、アリアさんの布団だけは空だった。


「…………」


 償いでもしてるみたいな顔……か。僕はそんなに分かりやすいのだろうか。


「……ウタ」

「あ」


 僕が部屋の入り口の方を見ると、髪を濡らし、肩にタオルをかけたアリアさんが入ってきた。……うう、ちょっと目のやり場に困る……。


「お……お風呂でも入ってきたんですか?」

「あぁ! ここの風呂すごいんだぞ。めちゃくちゃ大きい!」

「温泉みたいなことですかね……」

「効能とかはないらしいから、銭湯に近いかな」

「あ、温泉は温泉であるんですか」

「ハンレルの北の方は温泉の街だぞ。お前も入ってきたらどうだ? 他の宿だとシャワーだけっていうのも珍しくないからな。ゆっくりできるうちにしておけ」

「そうですね……。入ってこようかな」


 アリアさんは、手首にいつもの髪留めをつけ、きちんと整えられた布団の上に座ると、タオルで綺麗な金髪を拭き始めた。


「……次、行く場所のことなんだが」

「あぁ、まだ全然考えてなくて。どうしましょうか? 結局ディランさんの情報もありませんし」

「とりあえず今日、このあとギルドに行こう。以来完了の知らせがまだ出来てないだろ?」

「あ、そうですね」

「それでそのとき……クラーミルに連絡を取ってもらおうかと思うんだ」

「クラーミル……前、行くはずだった国ですよね」


 アリアさんは頷くと、手首につけた紫の蝶を見つめる。


「ハンレルで、まだ行ってない街もたくさんあるが、ディランはきっとここにはいない。私が行きづらい場所にいるはずだ。たぶん……私に会いたくないんだ」

「それは……」


 それは分からない、そう言おうとしたけれど、だとしたらどうしてあのとき、アリアさんに会わなかったのか……。


「クラーミルは、私の立場としても、立地としても行きづらい。だから、きっとそっちの方に向かったと思う。
 前にも言ったかもしれないが、ハンレルは山と海に囲まれている。クラーミルとの国境も山だ。越えるよりは、貰った船で行く方が楽だろう。船で行くなら、連絡が必要だ」

「…………」


 ちょっと、考えた。クラーミルは、昔対立していたという国だ。マルティネスは今はあんな感じだし、もしかしたら良くないイメージを持たれているかもしれない。

 でも……アリアさんはそれ以上に、ディランさんに会いたいんだ。だから、こういう案を出している。


「……どう思う? やっぱり、リーダーの意見は聞いておくべきだと思ってな」


 僕がUnfinishedのリーダーだから。それもあるかもしれない。でも、アリアさんが僕に聞いているのは、きっとその向こうにある質問の答えだ。


「……良いと思いますよ。
 それに、僕は仲間が傷つくようなことにはしませんよ、リーダーとして」

「…………」

「そろそろ、二人も起こしましょうか。僕もちょっとお風呂浸かってくるんで、そしたらギルド、行きましょう!」

「あぁ」


◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈


「クラーミルか……。いいだろう、連絡を取ってやる」


 ハルさんは僕らに報酬の金貨10枚を渡しながら言った。ギルドに来る前、僕とアリアさんはポロンくんとフローラに次の予定を伝えた。二人とも概ね賛成してくれたので、予定通りギルドに来たわけだ。
 僕らが来ると、すぐにギルドマスター室に通され、ハルさんに会うことが出来たのだ。


「あちらのギルドマスターは皇族とも繋がっていたはずだ。言われなくてもそうするだろうが……一言二言、声をかけておけ。
 船の方はギルドが所有している港がある。そこのスペースを貸してもらうように言っておこう」

「ありがとうございます、助かります!」

「それと、少しお前らのギルドカードを貸してくれ」

「……え、はい」


 僕らは唐突に言われたことに少し戸惑いつつも、カードをハルさんに渡した。


「えっと……おいらたち、何か悪いこととか、した?」

「してないと思うけど……してません、よね?」

「心配するな。悪いようにはしない」


 ハルさんはそういうと、後ろの、よく分からない機械に僕らのカードを乗せる。それから少し振り向き、僕に訊ねる。


「パーティー名……決まったのか?」

「あ、Unfinished、です」

「……字が分からん。悪いが、その机の上にメモがある。書いてくれ」


 僕がそれを書いて渡すと、ハルさんはそれを見て、機械を操作する。そしてほんの一分も経たないうちに、僕らにカードを返した。


「……あっ」


 受け取ったカードを見ると、ランクがCからBに上がっているのに気がついた。それに、白地のカードに、『Unfinished』とパーティー名も刻まれているのだ。


「今後、こういうことはないぞ。なにせ、BからAに上がるのは至難の技だ。相当のことがなければ、大体の冒険者はBで終わる。パーティー名は入れる決まりだったから、入れただけだ」

「あ、ありがとうございます!」

「それと……」


 ハルさんは振り向き、僕らをじっと見ると、こんなことを言うのだった。


「クラーミルには、お前たちが会っていない個性の塊's、最後の一人がいるはずだ。訪ねてみればいい。きっと、お前らが欲しい情報を持っている」

「…………」


 最後の一人、個性の塊'sリーダー、ジュノン。
 それから三日後、クラーミルと連絡がとれたとハルさんから告げられ、僕らは二日間船に揺られることになった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました

taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件 『穢らわしい娼婦の子供』 『ロクに魔法も使えない出来損ない』 『皇帝になれない無能皇子』 皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。 だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。 毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき…… 『なんだあの威力の魔法は…?』 『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』 『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』 そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)

いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。 --------- 掲載は不定期になります。 追記 「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。 お知らせ カクヨム様でも掲載中です。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

飯屋の娘は魔法を使いたくない?

秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。 魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。 それを見ていた貴族の青年が…。 異世界転生の話です。 のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。 ※ 表紙は星影さんの作品です。 ※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。

侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!

珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。 3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。 高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。 これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!! 転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

処理中です...