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迷子の迷子の冒険者捜索!

未完成

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「ジュノンは立場上、情報が入りやすいからさ? マルティネスから結構遠いとこにいたのに、ウタくんの存在に気がついた」


 そんなことを言いながら、おさくさんは、どこから取り出したのか、クッキーを口に放り込み、モグモグと食べる。


「あのときから……僕らを知っていたんですか? まだ、ポロンくんとすら会ってないのに」

「ん……。知ってたよ。定期的に塊'sはジュノンのとこに集まるからね。ちょうどそのときに、レベル1、転生して一日も経っていない転生者がドラゴンと戦って、勝ったって情報が入ってきたんだよ」

「それで、興味を持ったのか?」

「そそ。珍しくジュノンが食いついたからね。
 私たちと違って、初期ステータスに補正があるわけでもない。バフを自由にかけられるわけでもない。相手の動きを封じられるわけでもないし、大きなダメージを与えられるわけでもない」


 そこでおさくさんは、「食べる?」とクッキーを差し出してくる。僕らはちょっと躊躇ってから、一枚ずつ袋からもらった。


「ステータス100倍だってさ、私たちなら自由にできちゃうし、絶対その方が楽なのよ」

「まぁ……そうですよね。ウタさんのは半分運ですから」

「ただ一つ、私たちが持っていない能力……それは『蘇生』というものだけ。
 『蘇生スキル』は、そもそも蘇生師しか使えない特殊なスキル。神様からの加護って考えると、まぁ不自然ではないけど、それにしたって大きな力だった」


 まぁ、確かにそうだ。蘇生の力は大きい。人の理に反することでもあるのだから。


「それでも、たったそれだけの力を信じて、一人でダークドラゴンに挑んだ姿に、興味を引かれた。蘇生できたって、死ぬことには変わりないし、その恐怖は、きっとウタくんが一番知ってる」

「そっか、塊'sのやつらは、召喚されたんだもんな!」

「あまりにも力不足で、普通だったら負け試合。それなのに勝っちゃうんだからね。そりゃ興味持つでしょ」

「それで……僕らをつけ回してたんですか?」

「つけ回すって、言い方が悪いなぁ! 見守ってただけだよ! 気にかけてたの!
 ……ま、私の場合商売繁盛したけど?」


 うっ……、や、やっぱりおさくさんはおさくさんだった。何をどう考えてもおさくさんだ。


「マルティネスの王都を出たあとも、ずっと、自分達だけじゃ力不足なのに、なにか面倒後とがあると首を突っ込んで、何とかしてあげようとかしちゃってさ? そんなんじゃいつかパンクするよ?」

「……私たちは、バカっぽいか?」


 アリアさんが少し笑いながら訊ねると、おさくさんはその質問を笑い飛ばす。


「いやいや! うちらの方がバカっぽいって!
 力も仲間関係も、全部未完成の癖によくやってるなぁって思うよ?」

「……未完成?」

「そうそう。個性の塊'sは、もうだいぶ完成してるんだよね。カンスト間近だし、召喚前からの付き合いだし、修羅場とか乗り越えちゃったあとだし?」


 ……でも、僕らは違う。レベルなんて、半分の50にも至らない。魔法の熟練度も、まだまだ低い。
 修羅場や危機を乗り越えたこともあるけれど、それは助けがあったのもあるし、そもそも数が塊'sとは比べ物にならないはずだ。

 すべてが『未完成』で、すべてが中途半端。


「でも、まぁ……『未完成』っていいことだと思うよ? 完成までののびしろは、これからいくらでも伸ばせるってことじゃん?」


 『未完成』なのは、まだ成長できる証拠……。


「……未完成、か」

「なんか、私たちにあってる気がしてきたな」

「お? 参考になった? いやー、柄にもなく真面目な話をしたかいがあった! せっかくだし新商品を」

「買わないです!」

「ちぇっ、しょーがないなぁー。真夜中だし、今回は逃げますよーっと」


 おさくさんは出ていこうとして、ちょっととどまって、僕の方を見て言う。


「……あと、一人でドラくんに向かっていくウタくん…………なにか、償いでもしてるみたいな顔だったらしいからね」

「…………え」


 そういうと、おさくさんは再び窓を開け、そこから外に出ていき、夜の闇に消えた。他の人だったら心配するけど、塊'sはするだけ無駄だ。
 おさくさんの言葉……それに僕は、触れないことにした。


「……ね、ポロンくんとフローラ、どう思う? 『未完成』って言葉、僕らに合ってない?」

「未完成……おいら、いいと思う!
おいらたちっぽい言葉だと思う!」

「でも、パーティー名にそのまま使うのはちょっと……あれですね」

「そうだね。さすがに『パーティー名は未完成です!』っていうのはぱっとしないしねー」


 すると、アリアさんがハッとしたような顔で、アイテムボックスから単語帳をとりだし、僕の目の前に突きつけてきた。


「ウタ!」

「なっ、ななな、なんですか!?」

「これ、お前の世界の言語なんだろ!? この言語で意味が『未完成』のいい単語ないか!?」

「わ、分かりましたからちょっと顔から離してくださいー!」


 顔の前から単語帳が離れると、僕は考え込んだ。単語帳……載ってないじゃん! んんん……? 『未完成』って、英語でなんて言ったっけ……?

 …………あ。


「Unfinished」

「あんふぃにっしゅどぅ?」

「英語……この言語で、未完成は、『まだ終わっていない状態』つまり、終わりを表す『finish』に、否定の意味の『un』をつけて、『Unfinished』未完成……。

 ぼ、僕としては結構しっくり来たんだけど、どうかな?」


 僕が目で答えを求めると、アリアさんが大きくうなずいた。


「あぁ……いいんじゃないか? Unfinished……」

「響きもかっこいいし、意味もおいらたちにあってる。スッゴいいいよ!」

「じゃあ! これで決まりですね! 私たちのパーティー名!」


 僕らはUnfinished。未完成だからこそ、これからも、どんどん成長していくパーティーだ。
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