チート能力解放するにはヘタレを卒業しなきゃいけない

植木鉢たかはし

文字の大きさ
上 下
187 / 387
迷子の迷子の冒険者捜索!

パーティー名

しおりを挟む
「うーん……」

「どうしたものかな……」

「ぜんっぜん分かんないなぁ……」

「どうしましょうか……」


 僕らは絶賛、パーティー名考え中なのだ! サイカくんの家でおさくさんに言われてハッと気がついた。

 そうだ、僕たちパーティー名ないじゃん!

 おさくさん、アイリーンさん、テラーさん、ドロウさん、あと、会ったことないけどジュノンさんの五人は『個性の塊's』というパーティー名。
 ……絶妙にダサい。しかし、こだわりも強いようで、由来やらなんやらを聞いたら、


『いやー、LINEのグループ名だったんだけどね? いいと思うんだよねー。私が作ったグルなんだけどさ!
 この、アポストロフィがね、大切なのよ。この、ちょんってやつが! ね!?』


 ……個性の塊'sの『'』これ。この記号。これに妙にこだわっているようである。……ってか、このsってなんのsなんだろう。複数形? いや、複数だったらアポストロフィいらないか……。
 あ、個性の塊のグループってことで、『個性の塊's』ってことか?

 サイカくんたちのパーティーは『雪月花』どういう由来かをその流れで聞いてみたところ、


『僕らの特徴、なんとなく表してみたんです。ミシャは雪みたいに、なんか落ち着いてて大人っぽい感じで、ラーラは明るいから花のイメージで』

『不思議と、サイカは「太陽」って感じじゃないんだよなぁ』

『しない。「月」っていうイメージの方が、しっくりきた。だから「雪月花」』


 どんなパーティーでも、名前は大切にする傾向があるみたいだ。一通り話をしたあと、サイカくんたち三人はメロウちゃんを連れて、ギルドに今回のことの詳細を伝えに行くっていってた。だから、それと同時に僕らは宿に戻り、考え込んでいたわけだ。


「……いいの思い付きましたか?」

「ダメだ。全くもってさっぱりだ」

「ポロンくんは?」

「アリア姉率いるヘタレ軍団……は、ちょっとな」

「さすがになぁ……。フローラは?」

「スラちゃん愛好団体……」

「ある意味正しい」

「ぷるぷるっ!(ぼくの名前!) ぷるるるっ!(超早く決めたくせに!)」

「……嫉妬してる?」

「…………ぷにゅ」


 どこかむすっとした感じで、スラちゃんは横を向く。……か、かわいい。


「もうスラちゃん愛好団体でいい気がしてきた」

「私もだ」

「私もです」

「ダメだからな!?」

「ぷるっ?!」

「目、キラキラさせんな! ダメだからなーーーっ!?」


 はぁ、にしても、このまんまじゃパーティー名決まらないよぉ……。僕らの特徴……とか、入れたらいいのかな?


「僕らの特徴って……?」

「やっぱ、ウタ兄の『勇気』? かなぁ」

「でもそれは、僕の特徴だしなぁ」


 そうしてまた悩んでいると、不意に、フローラがぽつりと呟く。


「……そもそも、私たちって、パーティー組んでから、自分達だけで何かを成し遂げたことって、ありましたっけ?」

「あっ……」


 そういえば……ないなぁ。どんなときでも、おさくさんからのヒントや、周りからの助けがあった。

 キルナンスの時は、アイリーンさんの千里眼に助けられて、チョコレートでカーターのことも助けてもらって。
 メヌマニエの時は、テラーさんが奇襲を仕掛けてきた信者の人たちをみんな倒してくれて、そのあと、魔物もおさくさんと二人で倒してくれて。
 ベリズの時は、途中で襲ってきた敵はドロウさんが助けてくれたし、なによりサラさんが、僕らを、アリアさんを守るために攻撃から庇い、助けてくれて。

 ……ミーレスの時だって、僕は、一度は殺されかけて、呪いもかけられて、一歩も歩けないくらいの状態まで追い込まれた。
 助けにいかなきゃいけないのに、体が全く言うことを効かなくなって、悔しくて、動きたくて、でも、動けなくて……。
 瀕死だった僕のことも、助けてくれた。今回だって、やっぱり……。

 本当に……たくさんたくさん、助けられてきた。
 助けられすぎなくらいに。


「僕らが……僕らだけでやれたことって、なんなんでしょうか」

「それは…………」


 アリアさんは言おうとして、言葉が出てこなかったようだった。


「そもそもどうして、みんな僕らを助けてくれるんでしょうか……?」

「そういえば……何でなんだろうな」


 サラさんやエドさんたちなんかはまだ分かるとして、個性の塊'sは、言ってしまえば赤の他人である。僕と出身が同じってことくらいしか共通点がない。


「助けてる理由が知りたい?」

「は……うわぁぁぁぁぁぁぁっ?!」


 突然窓からおさくさんがひょっこりはん! び、ビックリしたー……。おさくさんはそのまま部屋に入ってくると――靴は脱いだ――その場にあぐらをかいて座り、優しく微笑みながら話す。


「ま、面白そうっていうのが一番だよね」

「かなり初めの方からいましたよね、おさくさん。それに、なんか他の皆さんも僕らのことを知ってたみたいに……」

「知ってたよ? だって『勇気』なんて珍しいスキル、気になるじゃん」

「やっぱり、『勇気』に興味を持ったから、私たちを?」


 すると、おさくさんは首を横に振る。


「だけど、それだけじゃない」


 そして、何かを思い出すように上を見上げ、僕らについてのことを話始めた。


「……面白そうって言ったのは、ジュノンだったんだよね」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)

いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。 --------- 掲載は不定期になります。 追記 「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。 お知らせ カクヨム様でも掲載中です。

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

プラス的 異世界の過ごし方

seo
ファンタジー
 日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。  呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。  乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。 #不定期更新 #物語の進み具合のんびり #カクヨムさんでも掲載しています

処理中です...