185 / 387
迷子の迷子の冒険者捜索!
おかえり
しおりを挟む
「……ポロン?」
吹き飛ばされるレクスを唖然とした表情で見ていたアリアさんが、レクスを睨み付けたままのポロンくんに、一歩近づく。
ポロンくんは、その声に気がつくと、くるりと後ろを振り返っていつものように笑って見せた。
「……へへ……ごめんな、アリア姉、フローラ」
「ポロン……っ!」
フローラがポロンくんにかけより、ぎゅっと抱き締める。少し頬を赤くしながら、ナイフの切っ先を向けないように気を付けながらそれに応えるポロンくんに、僕も歩み寄った。
「……操られて、なかったの?」
「ごめん、フローラ。あと……ウタ兄も。ごめん、怪我させちゃって。敵を騙すなら味方からっていうからさ。……信じてくれたの、嬉しかった!」
それから、ちょっと困ったように笑い、
「ウタ兄、最後の方気づいてただろ、おいらが操られてないって」
そう、図星をついてきた。
……まぁ、そりゃそうなのだ。そうでなきゃ、僕はポロンくんをレクスが呼んだ時点で、羽交い締めにしてでも止めていないとおかしいのだから。
「あはは、気づいてた?」
「やっぱバレてたんだ。おいら、結構上手いことやったけどなぁ……」
「ウタ……お前、気づいてたのか!?」
「まぁ、刃を交わさないと分かりませんでしたけどね」
それからポロンくんは、レクスをちらりと見て、僕に、持っていたナイフを差し出した。
「勇気、発動してるんだろ? おいらはあれくらいしか出来なかったからさ。ウタ兄……あとは、よろしくな!」
「…………」
僕はポロンくんからナイフを受け取ると、反対の手でポロンくんの頭をぽんぽんと撫でた。
「……ちょ、ウタ兄! おいらもう子供じゃないってば!」
「……おかえり」
「…………!」
僕が言うと、アリアさんが近くに歩みより、微笑みながらいう。フローラも、ポロンくんを抱き締めたまま言った。
「おかえりポロン」
「おかえりなさい……!」
あふれでる、何かの感情を圧し殺すようにして笑ったポロンくんは、ほんの少し、瞳を潤ませた。
「……うん! ただいま!」
僕はポロンくんから手を離すと、ナイフを握りしめ、起き上がりこちらに向かって来ているレクスの正面に立ちふさがった。
「っ……どけっ!」
「嫌だ」
どこからか取り出したナイフを、レクスは僕に向かって振り上げる。僕はそれを、ポロンくんのナイフで受け止めた。
……丈夫なナイフだ。切れ味はいいけれど…………。
(……僕の急所を狙ったことは、一度もなかったね)
狙われるのはいつも腕か足。首や胸といった急所は一切狙ってこなかった。
それも、僕に直接攻撃を仕掛けるときは、わざわざ『窃盗』を解除していた。見えない方が奇襲をかけやすいのに……。僕が避けられるようにしていたのだ。
どうやったのかは分からないけど、修羅場はくぐり抜けてきてるんだな。そう、痛いほど感じた。
――さて、
「どけっ! 『操り人形』のくせに主人に逆らいやがって……! この俺を攻撃しやがった! そんながらくたは、この世から棄ててしまえば」
「――いい加減にしろよ、レクス」
僕はレクスの刃をナイフで押し返し、それと同時に氷の槍を放った。
それはレクスの服の袖を捉え、背後の壁へと押し付ける。
「ソイル!」
初級土魔法で出来るかなと思ったけど、出来たみたいだ。植物の蔦が伸びてきて、レクスの体を壁に固定し、武器を奪い取った。
「…………」
僕は一歩ずつ、レクスに近づく。
「くっそ! こんな蔦、燃やしてしまえば……バーニング!」
しかし、蔦が消えることはない。熟練度50だもん。そりゃ無理だよ。
「なら……お前を操って……」
無理だったみたいだ。やはり、対人系のスキルは、レベル差による失敗というものがあとをたたない。例外はほぼないようだ。
自分の力が一切通じないと思ったのか、一転して怯えるような表情になったレクスに、僕は一言、言い放った。
「……ポロンくんはあなたのものじゃない。僕らものでもない。人間です」
「…………」
「これは……僕からの報復だ!」
僕はナイフを右から左に持ち変え、右手をぐっと握りしめた。そしてそれを、出来るだけ力一杯レクスの鳩尾に叩き込んだ。……それでレクスは意識を失う。おそろしや我が『勇気』
そうしてレクスが意識を失ったのを確認すると、ポロンくんはフローラから離れ、上の方を見て叫んだ。
「おーい! もういいよー!」
すると、上から二人の少年と一人の少女が飛び降りてくる。何事かとあっけにとられていると、その一人がポロンくんに話しかける。
「……一瞬、ポロンのことを倒さなきゃいけないかもって思ったけど、そんなことにならなくて本当によかったよ」
「うん、おいらもよかった!」
「……どういうことか、説明してくれる?」
僕がいうと、ポロンくんは三人を指差しながらいう。
「こいつが、おいらたちの探していたサイカ。で、他の二人がサイカのパーティーの仲間だな!
おいら、サイカにお願いしたんだ。絶対に先に逃がすから、そうしたら仲間と一緒にここに来て、アリア姉たちを助けてくれって」
「サイカです。こっちはラーラとミシャです。
……ポロンくんに、どうしてもアリアさんたちを守ってほしいって言われて来てました」
「……え? でもなんで」
「まぁ……あとでな!」
それから、倒したやつらをみんなギルドに預けて、僕らは場所を宿屋に移動させた。そこでゆっくりと話を聞く!
「……ほぅ。お主ら…………やるではないかのぉ」
吹き飛ばされるレクスを唖然とした表情で見ていたアリアさんが、レクスを睨み付けたままのポロンくんに、一歩近づく。
ポロンくんは、その声に気がつくと、くるりと後ろを振り返っていつものように笑って見せた。
「……へへ……ごめんな、アリア姉、フローラ」
「ポロン……っ!」
フローラがポロンくんにかけより、ぎゅっと抱き締める。少し頬を赤くしながら、ナイフの切っ先を向けないように気を付けながらそれに応えるポロンくんに、僕も歩み寄った。
「……操られて、なかったの?」
「ごめん、フローラ。あと……ウタ兄も。ごめん、怪我させちゃって。敵を騙すなら味方からっていうからさ。……信じてくれたの、嬉しかった!」
それから、ちょっと困ったように笑い、
「ウタ兄、最後の方気づいてただろ、おいらが操られてないって」
そう、図星をついてきた。
……まぁ、そりゃそうなのだ。そうでなきゃ、僕はポロンくんをレクスが呼んだ時点で、羽交い締めにしてでも止めていないとおかしいのだから。
「あはは、気づいてた?」
「やっぱバレてたんだ。おいら、結構上手いことやったけどなぁ……」
「ウタ……お前、気づいてたのか!?」
「まぁ、刃を交わさないと分かりませんでしたけどね」
それからポロンくんは、レクスをちらりと見て、僕に、持っていたナイフを差し出した。
「勇気、発動してるんだろ? おいらはあれくらいしか出来なかったからさ。ウタ兄……あとは、よろしくな!」
「…………」
僕はポロンくんからナイフを受け取ると、反対の手でポロンくんの頭をぽんぽんと撫でた。
「……ちょ、ウタ兄! おいらもう子供じゃないってば!」
「……おかえり」
「…………!」
僕が言うと、アリアさんが近くに歩みより、微笑みながらいう。フローラも、ポロンくんを抱き締めたまま言った。
「おかえりポロン」
「おかえりなさい……!」
あふれでる、何かの感情を圧し殺すようにして笑ったポロンくんは、ほんの少し、瞳を潤ませた。
「……うん! ただいま!」
僕はポロンくんから手を離すと、ナイフを握りしめ、起き上がりこちらに向かって来ているレクスの正面に立ちふさがった。
「っ……どけっ!」
「嫌だ」
どこからか取り出したナイフを、レクスは僕に向かって振り上げる。僕はそれを、ポロンくんのナイフで受け止めた。
……丈夫なナイフだ。切れ味はいいけれど…………。
(……僕の急所を狙ったことは、一度もなかったね)
狙われるのはいつも腕か足。首や胸といった急所は一切狙ってこなかった。
それも、僕に直接攻撃を仕掛けるときは、わざわざ『窃盗』を解除していた。見えない方が奇襲をかけやすいのに……。僕が避けられるようにしていたのだ。
どうやったのかは分からないけど、修羅場はくぐり抜けてきてるんだな。そう、痛いほど感じた。
――さて、
「どけっ! 『操り人形』のくせに主人に逆らいやがって……! この俺を攻撃しやがった! そんながらくたは、この世から棄ててしまえば」
「――いい加減にしろよ、レクス」
僕はレクスの刃をナイフで押し返し、それと同時に氷の槍を放った。
それはレクスの服の袖を捉え、背後の壁へと押し付ける。
「ソイル!」
初級土魔法で出来るかなと思ったけど、出来たみたいだ。植物の蔦が伸びてきて、レクスの体を壁に固定し、武器を奪い取った。
「…………」
僕は一歩ずつ、レクスに近づく。
「くっそ! こんな蔦、燃やしてしまえば……バーニング!」
しかし、蔦が消えることはない。熟練度50だもん。そりゃ無理だよ。
「なら……お前を操って……」
無理だったみたいだ。やはり、対人系のスキルは、レベル差による失敗というものがあとをたたない。例外はほぼないようだ。
自分の力が一切通じないと思ったのか、一転して怯えるような表情になったレクスに、僕は一言、言い放った。
「……ポロンくんはあなたのものじゃない。僕らものでもない。人間です」
「…………」
「これは……僕からの報復だ!」
僕はナイフを右から左に持ち変え、右手をぐっと握りしめた。そしてそれを、出来るだけ力一杯レクスの鳩尾に叩き込んだ。……それでレクスは意識を失う。おそろしや我が『勇気』
そうしてレクスが意識を失ったのを確認すると、ポロンくんはフローラから離れ、上の方を見て叫んだ。
「おーい! もういいよー!」
すると、上から二人の少年と一人の少女が飛び降りてくる。何事かとあっけにとられていると、その一人がポロンくんに話しかける。
「……一瞬、ポロンのことを倒さなきゃいけないかもって思ったけど、そんなことにならなくて本当によかったよ」
「うん、おいらもよかった!」
「……どういうことか、説明してくれる?」
僕がいうと、ポロンくんは三人を指差しながらいう。
「こいつが、おいらたちの探していたサイカ。で、他の二人がサイカのパーティーの仲間だな!
おいら、サイカにお願いしたんだ。絶対に先に逃がすから、そうしたら仲間と一緒にここに来て、アリア姉たちを助けてくれって」
「サイカです。こっちはラーラとミシャです。
……ポロンくんに、どうしてもアリアさんたちを守ってほしいって言われて来てました」
「……え? でもなんで」
「まぁ……あとでな!」
それから、倒したやつらをみんなギルドに預けて、僕らは場所を宿屋に移動させた。そこでゆっくりと話を聞く!
「……ほぅ。お主ら…………やるではないかのぉ」
0
お気に入りに追加
77
あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)
いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。
---------
掲載は不定期になります。
追記
「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。
お知らせ
カクヨム様でも掲載中です。

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜
犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。
馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。
大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。
精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。
人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!
珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。
3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。
高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。
これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!!
転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる