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迷子の迷子の冒険者捜索!
別行動
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「アリア姉ー! ウタ兄ー! フローラー! もう、どこ行っちまったんだよ、おいら置いて」
ポロンくんはそう大声をあげながら僕らを探しているふりをして歩く。そして、周りが見えていないように振る舞いながら大人たちに近づき、一人の男にぶつかった。
「うわっ! な、なんだよ!」
「……ガキか?」
「どうしました?」
「いやなに、ガキが一人迷い込んだみたいでなぁ。仲間に入れてやるか」
「へい」
一人の男がポロンくんの腕を乱暴につかみ、ロープで縛り上げる。僕は気が気じゃなかったが、そうなるだろうと言うのは、ポロンくんもいっていた。仮にそういうことが起こっても、何もしないでほしいとも言われた。
「ポロン……」
心配なのは、みんな同じ。それでもポロンくんの『作戦』を信じてじっと見守っている。
「ったいなぁ! 離せよ! おいらはアリア姉たちを探してるんだよ!」
「はっ、お前の姉さんなんて見てねぇなぁ? おとなしく俺たちの仲間になろうぜ?」
「……おい、待て。アリア姉、だ?」
「……そ、そうだよ!」
「アニキ、なにかあるんすか?」
「少し前に、マルティネスの姫がこちらに向かったと言う情報があった。そして、そのマルティネスの姫の名前くらい、お前も知っているだろう?」
「……ま、マルティネス・アリア!」
「そしてその姫のパーティーには、気の弱そうな男と、ガキが二人……。一人は男で、一人は女だと聞いている」
僕らの情報、そんなに広がっているんだ……。少し恐ろしさを感じつつも、ここまではポロンくんの作戦通り。ここで僕らはここからあいつらの住みかを見つけなきゃならない。
そうそう、ポロンくんの作戦と言うのは、こういうものだった。
『あいつらは、キルナンスの生き残りとかじゃないんだと思うんだい。もしそうなら、四天王が捕まったあとなのに平気でうろうろなんて出来ないやい』
『まぁ、それはそうだろうな。……それで、ポロンの考えはなんなんだ?』
『まず優先するのは捕まってる人の命、だよな?』
『そうだね。捕まってる人は、出来るだけ逃がしたい』
『ちゃんとした……ってのも変だけど、売人なら、高い商品は欲しいはずだし、それに関する情報も持ってる。
例えば、マルティネスの姫が再び国を出た、とか』
確かにそうだろう。キルナンスの四天王も言っていた。マルティネスの姫ならば、高く売れるだろうと。
姫と言う立場に加え、アリアさんはこの容姿だ。もし仮に買い手の方にミーレスのような人間がいれば、金貨を何百、何千枚積んででも買いたいと思うだろう。
『アリア姉の情報が入ってるってことは、パーティーのことも少なからず情報があると思う。最低でも、人数と性別くらいは。
そんなやつらが、例えば、パーティーの条件が合うおいらが「アリア姉」って言葉を口にしていたら、それを「マルティネス・アリア」と結びつけてもおかしくないと思うんだ』
『そうだね……えっ、ポロン、何考えてるの?』
ポロンくんは僕らをじっとみて、そして告げる。
『おいらが囮になる。おいらが捕まればアリア姉が来るってあいつらも思うだろうし、そうじゃなくてもおいらから情報が聞き出せるって思う。間違いなく捕まえるよ。
高額商品が入る可能性が高いなら、出荷は遅らせる。その間に、おいらが捕まってる人を逃がす。「窃盗」を使えばそんなに難しくないと思う。
ウタ兄たちは、おいらが捕まってもなにもしないで、あいつらのあとをつけて。まさかここで寝泊まりしてる訳じゃなくて、今日の獲物を見せあってるだけだと思う。
つけていったら、絶対に他の商品があるところに行く。その近くであいつらも寝泊まりしてる。
少人数だろうから、真夜中には見張りは少なくなる。多くて六人。寝ている人たちを先に蔦か何かで拘束して、そのあと見張りを倒せたらオッケー。
捕まってる人とおいらが逃げて、売人たちはギルドにポイだい』
『でも、囮になるって……ポロンが何かされる可能性は』
『無くはないよ』
『『それなら』』
『僕が』
『私が』
利にかなってはいるこの作戦。さすが元キルナンスといったところだ。この情報が正しければ、僕らでも十分にやりとげられる。
フローラの『レインボー』もあるし、少人数ならレベルが高くてもどうにか出来る。人身売買のことを伝えてハンレルの方に助けを求めても良いかもしれない。
それでも、ポロンくんの身に危険が生じることは間違いないのだ。
『おいらじゃなきゃ駄目なんだよ、ウタ兄。おいらじゃなきゃ、駄目なんだよ……アリア姉』
それでも送り出したのは……その言葉の奥にある心を、無意識のうちに悟ったからかもしれない。
「……おいガキ、てめぇには聞きたいことができた。あとでたっぷり時間をやるから、せいぜい泣き叫ぶんじゃねーよ」
「な、なんだよ! おいらに何するんだよ!」
ポロンくんの腕と、何人もの子供を連れて、彼らは森の奥へと歩き出した。
僕らは目配せさせて、そっと追いかける。と、男の一人――さっきアニキと呼ばれていた――が振り向き、他の人にストップをかける。
「待て。……誰かいるな?」
「っ……!?」
き、気づかれた?!
「まさか、罠か? 最近国の方に俺らのことが伝わってると聞いたが……その差し金か?」
男が、こちらに向かって歩いてくる。場所までは分かってはいないのか、キョロキョロと辺りを見渡し、誰かいないかとみている。
ど、どうする……?!
すると、アリアさんが隣で呟いた。
「お歳暮をコープでうまく対処する!」
何かと思ってそちらを見ると、単語帳を開いていた。
cope うまく対処する
《語呂合わせ》お歳暮をコープでうまく対処する
コープ! いいよね! 楽だよね! 便利だよね! でもね、変わった感じしないよ!? ほらほら! 男の人目の前まで来てるしぃ!
「ウタさん……!」
「ぼぼぼ、僕にどうしろと!?」
「大丈夫だ……多分きっともしかして」
「不確かだぁ!」
しかし、確かに目の前まで来た男は、こちらに気づいていない。僕らは僕らでビックリしてキョロキョロすると、僕らの影ができていなかった。
「消えてるのか……? 声も聞こえていないっぽいな」
消えるという行動で、この危機に『うまく対処した』のか……。便利だ。
「……気のせいか。行くぞ」
単語帳のおかげで事なきを得た僕らは、そのままポロンくんとは別行動で、作戦を続行した。
……なんだかんだで助けられてる。
にくいね! グッドオーシャンフィールド! 略してGOF!
ポロンくんはそう大声をあげながら僕らを探しているふりをして歩く。そして、周りが見えていないように振る舞いながら大人たちに近づき、一人の男にぶつかった。
「うわっ! な、なんだよ!」
「……ガキか?」
「どうしました?」
「いやなに、ガキが一人迷い込んだみたいでなぁ。仲間に入れてやるか」
「へい」
一人の男がポロンくんの腕を乱暴につかみ、ロープで縛り上げる。僕は気が気じゃなかったが、そうなるだろうと言うのは、ポロンくんもいっていた。仮にそういうことが起こっても、何もしないでほしいとも言われた。
「ポロン……」
心配なのは、みんな同じ。それでもポロンくんの『作戦』を信じてじっと見守っている。
「ったいなぁ! 離せよ! おいらはアリア姉たちを探してるんだよ!」
「はっ、お前の姉さんなんて見てねぇなぁ? おとなしく俺たちの仲間になろうぜ?」
「……おい、待て。アリア姉、だ?」
「……そ、そうだよ!」
「アニキ、なにかあるんすか?」
「少し前に、マルティネスの姫がこちらに向かったと言う情報があった。そして、そのマルティネスの姫の名前くらい、お前も知っているだろう?」
「……ま、マルティネス・アリア!」
「そしてその姫のパーティーには、気の弱そうな男と、ガキが二人……。一人は男で、一人は女だと聞いている」
僕らの情報、そんなに広がっているんだ……。少し恐ろしさを感じつつも、ここまではポロンくんの作戦通り。ここで僕らはここからあいつらの住みかを見つけなきゃならない。
そうそう、ポロンくんの作戦と言うのは、こういうものだった。
『あいつらは、キルナンスの生き残りとかじゃないんだと思うんだい。もしそうなら、四天王が捕まったあとなのに平気でうろうろなんて出来ないやい』
『まぁ、それはそうだろうな。……それで、ポロンの考えはなんなんだ?』
『まず優先するのは捕まってる人の命、だよな?』
『そうだね。捕まってる人は、出来るだけ逃がしたい』
『ちゃんとした……ってのも変だけど、売人なら、高い商品は欲しいはずだし、それに関する情報も持ってる。
例えば、マルティネスの姫が再び国を出た、とか』
確かにそうだろう。キルナンスの四天王も言っていた。マルティネスの姫ならば、高く売れるだろうと。
姫と言う立場に加え、アリアさんはこの容姿だ。もし仮に買い手の方にミーレスのような人間がいれば、金貨を何百、何千枚積んででも買いたいと思うだろう。
『アリア姉の情報が入ってるってことは、パーティーのことも少なからず情報があると思う。最低でも、人数と性別くらいは。
そんなやつらが、例えば、パーティーの条件が合うおいらが「アリア姉」って言葉を口にしていたら、それを「マルティネス・アリア」と結びつけてもおかしくないと思うんだ』
『そうだね……えっ、ポロン、何考えてるの?』
ポロンくんは僕らをじっとみて、そして告げる。
『おいらが囮になる。おいらが捕まればアリア姉が来るってあいつらも思うだろうし、そうじゃなくてもおいらから情報が聞き出せるって思う。間違いなく捕まえるよ。
高額商品が入る可能性が高いなら、出荷は遅らせる。その間に、おいらが捕まってる人を逃がす。「窃盗」を使えばそんなに難しくないと思う。
ウタ兄たちは、おいらが捕まってもなにもしないで、あいつらのあとをつけて。まさかここで寝泊まりしてる訳じゃなくて、今日の獲物を見せあってるだけだと思う。
つけていったら、絶対に他の商品があるところに行く。その近くであいつらも寝泊まりしてる。
少人数だろうから、真夜中には見張りは少なくなる。多くて六人。寝ている人たちを先に蔦か何かで拘束して、そのあと見張りを倒せたらオッケー。
捕まってる人とおいらが逃げて、売人たちはギルドにポイだい』
『でも、囮になるって……ポロンが何かされる可能性は』
『無くはないよ』
『『それなら』』
『僕が』
『私が』
利にかなってはいるこの作戦。さすが元キルナンスといったところだ。この情報が正しければ、僕らでも十分にやりとげられる。
フローラの『レインボー』もあるし、少人数ならレベルが高くてもどうにか出来る。人身売買のことを伝えてハンレルの方に助けを求めても良いかもしれない。
それでも、ポロンくんの身に危険が生じることは間違いないのだ。
『おいらじゃなきゃ駄目なんだよ、ウタ兄。おいらじゃなきゃ、駄目なんだよ……アリア姉』
それでも送り出したのは……その言葉の奥にある心を、無意識のうちに悟ったからかもしれない。
「……おいガキ、てめぇには聞きたいことができた。あとでたっぷり時間をやるから、せいぜい泣き叫ぶんじゃねーよ」
「な、なんだよ! おいらに何するんだよ!」
ポロンくんの腕と、何人もの子供を連れて、彼らは森の奥へと歩き出した。
僕らは目配せさせて、そっと追いかける。と、男の一人――さっきアニキと呼ばれていた――が振り向き、他の人にストップをかける。
「待て。……誰かいるな?」
「っ……!?」
き、気づかれた?!
「まさか、罠か? 最近国の方に俺らのことが伝わってると聞いたが……その差し金か?」
男が、こちらに向かって歩いてくる。場所までは分かってはいないのか、キョロキョロと辺りを見渡し、誰かいないかとみている。
ど、どうする……?!
すると、アリアさんが隣で呟いた。
「お歳暮をコープでうまく対処する!」
何かと思ってそちらを見ると、単語帳を開いていた。
cope うまく対処する
《語呂合わせ》お歳暮をコープでうまく対処する
コープ! いいよね! 楽だよね! 便利だよね! でもね、変わった感じしないよ!? ほらほら! 男の人目の前まで来てるしぃ!
「ウタさん……!」
「ぼぼぼ、僕にどうしろと!?」
「大丈夫だ……多分きっともしかして」
「不確かだぁ!」
しかし、確かに目の前まで来た男は、こちらに気づいていない。僕らは僕らでビックリしてキョロキョロすると、僕らの影ができていなかった。
「消えてるのか……? 声も聞こえていないっぽいな」
消えるという行動で、この危機に『うまく対処した』のか……。便利だ。
「……気のせいか。行くぞ」
単語帳のおかげで事なきを得た僕らは、そのままポロンくんとは別行動で、作戦を続行した。
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