164 / 387
迷子の迷子の冒険者捜索!
京都……?
しおりを挟む
「――タ、おいウタ!」
「…………ぅん? あれ? うわぁっ?!」
目を開けると、目の前にアリアさんの顔があった。驚いて飛び退けそちらを見ると、アリアさんは手を腰に当て、僕を見下ろして仁王立ちしていた。
「全く……。中をみても、お前だけいないもんだからどこに行ったのかとおもったら、甲板で居眠りしてるとはな……」
言われてぼんやりと空を見ると、もう星がキラキラと瞬いていた。さっき横になったのは昼御飯食べたあとだったから……うわ、ずいぶん寝てたなぁ。
「あ、すみません。天気もよくて、あったかくて、うとうとしちゃって……。ちょっと横になってたら寝ちゃったみたいです。あはは」
「あははって……お前なぁ? 昼間はいいとして、空みてみろ? 夜だぞ? 星出てるんだぞ? 気温も下がってる。風邪引くぞ」
……お母さんだ。
「……アリアさん、やっぱりちょっと過保護になってません?」
「普通に心配してるだけだ! って、そうじゃない!
今は船、止めてあるんだ。夕飯できてるから、中入ってこいよ。遅かったら先に食べちゃうからな」
「あ、待ってくださいよ!」
アリアさんを追いかけて船の中の部屋にはいる。僕はあまり船の造りとかに詳しくないのだが、元々が漁船なこともあって、ミニキッチンや簡易的なベッド、魚を捕まえておくのに使ってたのであろう生け簀などがある。
色んな部屋があるが、僕らはその中で大きめの机と椅子がある部屋にはいる。アリアさんが扉を開けると、ふわっと、甘いような、クリーミーな感じの匂いが鼻孔をくすぐる。
見ると、机の上には木製のうつわが四つ置いてあって、そこにシチューのようなものが入っていた。椅子に座ってまじまじと見ると、それは本当にシチューで、とっても美味しそうだ。
「ウタ兄、待ってたんだぞ!」
「あぁ、ごめん!」
ちょっとむすっとした表情でこちらを見るポロンくんに軽く謝ると、フローラが嬉しそうにいう。
「これ! 私とポロンとで作ったんです! 上手く出来たと思うんですけど……」
「え!? 二人が作ったの? 一から?」
「なんでも、私たちが色々やっている間に、アイリーンたちに料理を教わっていたらしい。それで、二人だけで初めて私たちに振る舞うのが、このシチューってことだ!」
「シチューってこっちにもあったんですね」
「ん? あぁ、わりと転生者から伝わってる食べ物も多いしな。シチューはみんな大好き家庭の味だ!」
「お! おい! 早く食べてくれよ!」
ポロンくんがそう急かす。……僕らの喜んだ顔が見たかったのかな? それは僕の理想?
(……それでもいっか。二人が作ってくれたんなら嬉しいし)
僕はアリアさんと顔を見合わせ、手を合わせた。
「「いただきます!」」
そして、スプーンに一口すくって飲む。
「…………」
やば、お世辞なしに超美味い……。
「……アリアさん、」
「あぁ……これは、ヤバイな」
「え!?」
「美味しくなかった……ですか?」
不安げなフローラと、今にも泣き出しそうなポロンくんをみて、僕らは全力で否定した。
「美味しすぎてヤバイ!」
「……本当かよ」
「本当本当! お世辞なしに本当に美味しくて!」
二人の顔に笑顔が咲く。……これだから、もう。二人のことがかわいくて仕方ない。
その日は、美味しいシチューに舌鼓を打ったのち、そのままみんなで寝てしまった。
……ちなみに、例のごとく部屋は一緒である。アリアさん……あんなことがあったあとなのに……。
◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈
次の日の昼。
「着いたーーー!」
ようやく僕らはハンレルに到着した。敷地内にはギルドカードでいれてもらえた。港に船を止めさせてもらい、一度、ギルドに寄って、あの船が僕たちのものだということを伝えにいく。
そのあとハンレルの国王、女王に挨拶をして、宿を探して、それからディランさんについての情報収集だ! やることは多いけどがんばらなくちゃ!
…………でもここ、
「京都……?」
「今日と? 何が今日なんだ?」
「いや、僕がいたところに『京都』って場所があるんですよ」
ハンレルの町並みは、まさしく、中学三年の修学旅行で行った京都そのものだった。
古風な建物。一昔前の『和』を感じさせるような……。探したら清水寺とか三十三間堂とかあるんじゃないかと思ってしまうほど京都の町並みにそっくりだった。
しかし歩いてる人たちは現代的な洋服を着て、髪や目の色は他の国と同じくカラフル。なんとなーく帯刀している人が多い気がしなくもないけど、そこは他の国と同じなのだ。
何て言えば伝わるだろうか……。見た目バリバリ海外の人が、流行とかトレンドを取り入れた洋服を着て、ペラペラの日本語を喋りながら、京都を歩いている、という感じ?
あ、分かった! 京都でカリフォルニアロール頼んだら、すっごく美味しい鮪の握りが出てきたよー! みたいな! ……余計分かりにくいか。
とにかく! 初めてくるところなのに、なんだか懐かしさを覚えてしまうような感覚。ちょっと不思議だ。
「とりあえず、アリア姉! ギルド、行くんだよな?」
「あぁ。先に寄っておかないと約束違反だからな。約束は守るに越したことはないさ」
何はともあれ、僕らはそうして、荷物をもって、ハンレルの港町、タークのギルドへと向かった。
僕らがギルドの扉を開けると、そこには
「や、やめてくださいぃー!」
「あぁ? なめてんのかくそガキが!」
「ひいっ!」
小さくなって、今にも泣き出しそうな女の子と、それを怒鳴り付ける男の姿があった。
「…………ぅん? あれ? うわぁっ?!」
目を開けると、目の前にアリアさんの顔があった。驚いて飛び退けそちらを見ると、アリアさんは手を腰に当て、僕を見下ろして仁王立ちしていた。
「全く……。中をみても、お前だけいないもんだからどこに行ったのかとおもったら、甲板で居眠りしてるとはな……」
言われてぼんやりと空を見ると、もう星がキラキラと瞬いていた。さっき横になったのは昼御飯食べたあとだったから……うわ、ずいぶん寝てたなぁ。
「あ、すみません。天気もよくて、あったかくて、うとうとしちゃって……。ちょっと横になってたら寝ちゃったみたいです。あはは」
「あははって……お前なぁ? 昼間はいいとして、空みてみろ? 夜だぞ? 星出てるんだぞ? 気温も下がってる。風邪引くぞ」
……お母さんだ。
「……アリアさん、やっぱりちょっと過保護になってません?」
「普通に心配してるだけだ! って、そうじゃない!
今は船、止めてあるんだ。夕飯できてるから、中入ってこいよ。遅かったら先に食べちゃうからな」
「あ、待ってくださいよ!」
アリアさんを追いかけて船の中の部屋にはいる。僕はあまり船の造りとかに詳しくないのだが、元々が漁船なこともあって、ミニキッチンや簡易的なベッド、魚を捕まえておくのに使ってたのであろう生け簀などがある。
色んな部屋があるが、僕らはその中で大きめの机と椅子がある部屋にはいる。アリアさんが扉を開けると、ふわっと、甘いような、クリーミーな感じの匂いが鼻孔をくすぐる。
見ると、机の上には木製のうつわが四つ置いてあって、そこにシチューのようなものが入っていた。椅子に座ってまじまじと見ると、それは本当にシチューで、とっても美味しそうだ。
「ウタ兄、待ってたんだぞ!」
「あぁ、ごめん!」
ちょっとむすっとした表情でこちらを見るポロンくんに軽く謝ると、フローラが嬉しそうにいう。
「これ! 私とポロンとで作ったんです! 上手く出来たと思うんですけど……」
「え!? 二人が作ったの? 一から?」
「なんでも、私たちが色々やっている間に、アイリーンたちに料理を教わっていたらしい。それで、二人だけで初めて私たちに振る舞うのが、このシチューってことだ!」
「シチューってこっちにもあったんですね」
「ん? あぁ、わりと転生者から伝わってる食べ物も多いしな。シチューはみんな大好き家庭の味だ!」
「お! おい! 早く食べてくれよ!」
ポロンくんがそう急かす。……僕らの喜んだ顔が見たかったのかな? それは僕の理想?
(……それでもいっか。二人が作ってくれたんなら嬉しいし)
僕はアリアさんと顔を見合わせ、手を合わせた。
「「いただきます!」」
そして、スプーンに一口すくって飲む。
「…………」
やば、お世辞なしに超美味い……。
「……アリアさん、」
「あぁ……これは、ヤバイな」
「え!?」
「美味しくなかった……ですか?」
不安げなフローラと、今にも泣き出しそうなポロンくんをみて、僕らは全力で否定した。
「美味しすぎてヤバイ!」
「……本当かよ」
「本当本当! お世辞なしに本当に美味しくて!」
二人の顔に笑顔が咲く。……これだから、もう。二人のことがかわいくて仕方ない。
その日は、美味しいシチューに舌鼓を打ったのち、そのままみんなで寝てしまった。
……ちなみに、例のごとく部屋は一緒である。アリアさん……あんなことがあったあとなのに……。
◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈
次の日の昼。
「着いたーーー!」
ようやく僕らはハンレルに到着した。敷地内にはギルドカードでいれてもらえた。港に船を止めさせてもらい、一度、ギルドに寄って、あの船が僕たちのものだということを伝えにいく。
そのあとハンレルの国王、女王に挨拶をして、宿を探して、それからディランさんについての情報収集だ! やることは多いけどがんばらなくちゃ!
…………でもここ、
「京都……?」
「今日と? 何が今日なんだ?」
「いや、僕がいたところに『京都』って場所があるんですよ」
ハンレルの町並みは、まさしく、中学三年の修学旅行で行った京都そのものだった。
古風な建物。一昔前の『和』を感じさせるような……。探したら清水寺とか三十三間堂とかあるんじゃないかと思ってしまうほど京都の町並みにそっくりだった。
しかし歩いてる人たちは現代的な洋服を着て、髪や目の色は他の国と同じくカラフル。なんとなーく帯刀している人が多い気がしなくもないけど、そこは他の国と同じなのだ。
何て言えば伝わるだろうか……。見た目バリバリ海外の人が、流行とかトレンドを取り入れた洋服を着て、ペラペラの日本語を喋りながら、京都を歩いている、という感じ?
あ、分かった! 京都でカリフォルニアロール頼んだら、すっごく美味しい鮪の握りが出てきたよー! みたいな! ……余計分かりにくいか。
とにかく! 初めてくるところなのに、なんだか懐かしさを覚えてしまうような感覚。ちょっと不思議だ。
「とりあえず、アリア姉! ギルド、行くんだよな?」
「あぁ。先に寄っておかないと約束違反だからな。約束は守るに越したことはないさ」
何はともあれ、僕らはそうして、荷物をもって、ハンレルの港町、タークのギルドへと向かった。
僕らがギルドの扉を開けると、そこには
「や、やめてくださいぃー!」
「あぁ? なめてんのかくそガキが!」
「ひいっ!」
小さくなって、今にも泣き出しそうな女の子と、それを怒鳴り付ける男の姿があった。
0
お気に入りに追加
77
あなたにおすすめの小説

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

転生しても山あり谷あり!
tukisirokou
ファンタジー
「転生前も山あり谷ありの人生だったのに転生しても山あり谷ありの人生なんて!!」
兎にも角にも今世は
“おばあちゃんになったら縁側で日向ぼっこしながら猫とたわむる!”
を最終目標に主人公が行く先々の困難を負けずに頑張る物語・・・?

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる