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迷子の迷子の冒険者捜索!
追跡開始!
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次の日、僕らが港にやって来るよりもずっと前から、そこにはたくさんの人でがいた。前にアリアさんと二人でここを出たときも、同じような反応だったなぁ。ふとそんなことを思い、懐かしくなってしまう。
でも、確実に前とは違うことがあった。
ほとんどがアリアさんに向けられた声。でも、その中の一部に、僕に向けられたものがあったのだ。あの騒動があってから……当たり前かもしれないが、街の人の僕をみる目が変わった。ちょっと見直してくれたのかもしれない。
船はというと、昨日エドさんとアリアさんが突然いったにも関わらず、漁師の人が少し古いものをそのままくれたのだ。国の船を持っていく訳にもいかなかったから、とってもありがたい! きちんとお礼をして、その船をもらった。
「よし……じゃあそろそろ出発するか!」
「そうですね。それじゃあ――」
「おーい! 羽汰ぁ! 待ってくれぇ!」
僕らがまさに街を出ようとしたその時、遠くの方から彰人さんが駆けてきた。……60を越えた白髪頭のおじいちゃんなのに、本当に元気だ。
「彰人さん……! またどうしたんですか? もしかしてまた……今回は僕ら、ご飯は大丈夫って言いましたよね? 彰人さんの負担になっちゃうからって」
「い、いや! 違うんだって! はぁ、はぁ……ちょ、ちょっと待ってくれ」
彰人さんは一生懸命息を整えると、僕をみた。
「お前に言うの忘れててな」
「なにをですか?」
そして、にかっと笑うと、僕にだけ聞こえるように……というよりは、他のみんなに聞こえないように言った。
「アリア様と一緒にいてやってくれよ?」
「…………!」
……いつか、同じことを言われた気がする。初めて彰人さんに会った、その時だろうか?
僕のその時の答えは、確か、『考えさせてください』だ。僕は弱くて、アリアさんのお荷物になっちゃうからって。アリアさんを頼りっぱなしになっちゃうからって。
(…………でも、)
僕は横目でちらりとアリアさんをみた。……大丈夫なように振る舞ってはいるけれど、一度どん底まで引きずり落とされた心は、そう簡単にもとには戻らない。まだ引きずっている。ミーレスのことも、エヴァンさんのことも。
そしてたぶん、ディランさんのことも勘づいている。
だから僕は…………。
「……はい、ディランさんを見つけるまで、ずっと一緒にいます。ディランを見つけて、それで、アリアさんが本来の居場所にいられるようになるまでは」
「……よし、よく言ったぞ、羽汰。頑張ってこい!」
「はい!」
その後、僕らは船に乗り込み、たくさんの人々に見送られながら国を旅だった。
船での旅は、馬車やドラくんとは違ってのんびりとしている。ハンレルには、一眠りして、明日の昼間くらいにつく予定だ。あちらの港にはもう連絡をしてあるらしく、船の置き場にも困ることはない。
操縦はアリアさん。「船はなんども操縦したことあるんだ! 馬車とは違う! 任せてくれ!」と張り切っていた。
ちょっと大きめの船だ。フローラはアリアさんの方で操縦の見学。自分もできるようになって、アリアさんを手伝いたいんだとか。
幸いにもみんな船酔いとかは大丈夫そうだ。天気もいいし、波も低い。
「気持ちいいね」
「ぷるるー」
そんなことを考えながら空を眺めていると、ふと、後ろから服の裾を引っ張られた。
「ウタ兄」
「ん? どうしたのポロンくん?」
ポロンくんはちょっと視線を下にやってから、不安げに僕の方をみた。
「あ……のさ、おいら、思うんだけどさ…………。ディランって人、灰色の髪に黒い目だったんだろ? もしかして、もう一つの『勇気』って」
「それは分からないよ」
僕はあえてそういう。実際そうだ。決めつけるには早すぎる。灰色の髪に黒い瞳……そんな人、今まで行ってきた国にも山ほどいた。むしろ、そう考える方が不自然だろう。
それでも、僕らがそう思うのにもいくつか理由がある。まずはディランさんの圧倒的な力。
時間を操る『未来永劫』それを使っている瞬間は干渉できずとも、止まっている間に背後に回ったり、剣をギリギリまで持っていったり……。物に干渉できるのかはわからないが、とにかけ有利なことに変わりはない。
もう一つの『勇気』がドラゴンを……それもドラくんのような高位のドラゴンさえ簡単に操るのだとしたら、それは相当な力の持ち主であるはず。
「……確かに、まだ絶対とは言えないよ? でも、可能性はある気がするんだ、おいら」
「…………」
それでも、僕には納得できないことがあった。
「仮にそうだとして……僕は、ディランさんから『闇』の力を全く感じなかったんだ」
ドラくんの時、この間のワイバーンの時、両方とも、今だからわかるが、他の魔物とは全く違う気配をまとっていた。
まさに『闇』そのものとも言えるようなおぞましい気配……。それをまとわせた人からも、その気配がしてしかるべきなのだ。
でも、あの優しい笑顔からはなにも感じなかった。
「……なにか、ある気がする。僕にはディランさんが悪い人には見えないんだ」
「…………」
何はともあれ、僕らの旅の目的は変わらない。ディランさんのあとを追いかけ、見つけて……。
そして、本当のことを知りたい。
本当は、アリアさんが心配で戻ってきていたくせに。
会わないで帰らなきゃいけない、事情があったのだろうか? それが『勇気』と関係あるのか?
……知りたい。
でも、確実に前とは違うことがあった。
ほとんどがアリアさんに向けられた声。でも、その中の一部に、僕に向けられたものがあったのだ。あの騒動があってから……当たり前かもしれないが、街の人の僕をみる目が変わった。ちょっと見直してくれたのかもしれない。
船はというと、昨日エドさんとアリアさんが突然いったにも関わらず、漁師の人が少し古いものをそのままくれたのだ。国の船を持っていく訳にもいかなかったから、とってもありがたい! きちんとお礼をして、その船をもらった。
「よし……じゃあそろそろ出発するか!」
「そうですね。それじゃあ――」
「おーい! 羽汰ぁ! 待ってくれぇ!」
僕らがまさに街を出ようとしたその時、遠くの方から彰人さんが駆けてきた。……60を越えた白髪頭のおじいちゃんなのに、本当に元気だ。
「彰人さん……! またどうしたんですか? もしかしてまた……今回は僕ら、ご飯は大丈夫って言いましたよね? 彰人さんの負担になっちゃうからって」
「い、いや! 違うんだって! はぁ、はぁ……ちょ、ちょっと待ってくれ」
彰人さんは一生懸命息を整えると、僕をみた。
「お前に言うの忘れててな」
「なにをですか?」
そして、にかっと笑うと、僕にだけ聞こえるように……というよりは、他のみんなに聞こえないように言った。
「アリア様と一緒にいてやってくれよ?」
「…………!」
……いつか、同じことを言われた気がする。初めて彰人さんに会った、その時だろうか?
僕のその時の答えは、確か、『考えさせてください』だ。僕は弱くて、アリアさんのお荷物になっちゃうからって。アリアさんを頼りっぱなしになっちゃうからって。
(…………でも、)
僕は横目でちらりとアリアさんをみた。……大丈夫なように振る舞ってはいるけれど、一度どん底まで引きずり落とされた心は、そう簡単にもとには戻らない。まだ引きずっている。ミーレスのことも、エヴァンさんのことも。
そしてたぶん、ディランさんのことも勘づいている。
だから僕は…………。
「……はい、ディランさんを見つけるまで、ずっと一緒にいます。ディランを見つけて、それで、アリアさんが本来の居場所にいられるようになるまでは」
「……よし、よく言ったぞ、羽汰。頑張ってこい!」
「はい!」
その後、僕らは船に乗り込み、たくさんの人々に見送られながら国を旅だった。
船での旅は、馬車やドラくんとは違ってのんびりとしている。ハンレルには、一眠りして、明日の昼間くらいにつく予定だ。あちらの港にはもう連絡をしてあるらしく、船の置き場にも困ることはない。
操縦はアリアさん。「船はなんども操縦したことあるんだ! 馬車とは違う! 任せてくれ!」と張り切っていた。
ちょっと大きめの船だ。フローラはアリアさんの方で操縦の見学。自分もできるようになって、アリアさんを手伝いたいんだとか。
幸いにもみんな船酔いとかは大丈夫そうだ。天気もいいし、波も低い。
「気持ちいいね」
「ぷるるー」
そんなことを考えながら空を眺めていると、ふと、後ろから服の裾を引っ張られた。
「ウタ兄」
「ん? どうしたのポロンくん?」
ポロンくんはちょっと視線を下にやってから、不安げに僕の方をみた。
「あ……のさ、おいら、思うんだけどさ…………。ディランって人、灰色の髪に黒い目だったんだろ? もしかして、もう一つの『勇気』って」
「それは分からないよ」
僕はあえてそういう。実際そうだ。決めつけるには早すぎる。灰色の髪に黒い瞳……そんな人、今まで行ってきた国にも山ほどいた。むしろ、そう考える方が不自然だろう。
それでも、僕らがそう思うのにもいくつか理由がある。まずはディランさんの圧倒的な力。
時間を操る『未来永劫』それを使っている瞬間は干渉できずとも、止まっている間に背後に回ったり、剣をギリギリまで持っていったり……。物に干渉できるのかはわからないが、とにかけ有利なことに変わりはない。
もう一つの『勇気』がドラゴンを……それもドラくんのような高位のドラゴンさえ簡単に操るのだとしたら、それは相当な力の持ち主であるはず。
「……確かに、まだ絶対とは言えないよ? でも、可能性はある気がするんだ、おいら」
「…………」
それでも、僕には納得できないことがあった。
「仮にそうだとして……僕は、ディランさんから『闇』の力を全く感じなかったんだ」
ドラくんの時、この間のワイバーンの時、両方とも、今だからわかるが、他の魔物とは全く違う気配をまとっていた。
まさに『闇』そのものとも言えるようなおぞましい気配……。それをまとわせた人からも、その気配がしてしかるべきなのだ。
でも、あの優しい笑顔からはなにも感じなかった。
「……なにか、ある気がする。僕にはディランさんが悪い人には見えないんだ」
「…………」
何はともあれ、僕らの旅の目的は変わらない。ディランさんのあとを追いかけ、見つけて……。
そして、本当のことを知りたい。
本当は、アリアさんが心配で戻ってきていたくせに。
会わないで帰らなきゃいけない、事情があったのだろうか? それが『勇気』と関係あるのか?
……知りたい。
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