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ワクワク! ドキドキ! 小人ライフ!
命を懸けて
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「というか、結局なんの役にも立てなかったみたいで……」
ドロウさんが申し訳なさそうにそういうが、僕らは首を振った。
「いえいえ! なにかとありがとうございました!」
「でもなー……あ、フローラちゃん、こっち! こっち!」
「こっち……?」
フローラが近づくと、ドロウさんはすっと右手を差し出す。フローラは戸惑いつつも、その手をとった。……この展開知ってる。このあと白い光が溢れて……って、ほらぁぁぁぁぁ! やっぱりぃぃぃぃぃ!
「え、あの?」
「『レインボー』伝授したんで、よかったら使ってねー。一回はMP免除だからー。
……よし、解散! サンー、背中乗っけてほしいなー」
「巻かせろ主! ナイルとビャクはどうする?」
「やることもない。ついていこう」
「一緒にいく。じゃ、検討を祈りまーす!」
「あ、はい!」
「ダーク、久しぶりに話せてよかったぜ!」
そう言い残すと、ドロウさんたちはどこかへ飛び去っていってしまった。ドラくんは少しの間空を見ていたけど、すぐに向き直った。
「では、行くか」
◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈
相手の力量は、どう頑張っても分からなかった。だから、ぶっつけ本番。一発勝負で挑まなければならない。そのこともあって、僕らの目には少しの不安があった。
「…………」
「…………?
……どうしたの?」
「おいらたち……大丈夫、だよな?」
不安げな瞳をこちらへ向けて、懇願するように問いかけるポロンくん。……何て答えたらいいのかわからない。僕にも、どうなるか分からない。
「……ウタさん、大丈夫、ですよね?」
フローラも心配そうに言う。
正直なところ、僕も不安だ。だって、もしもこれで失敗なんてしたら……。
「……我もいる心配するな」
ドラくんはそういうけど、僕は、他のなにかが気になって仕方がなかった。そのなにかは分からないけど……。いや、本当は、分かっていた。
「……大丈夫だよ、きっと」
アリアさんが言う。……その『大丈夫』って、本当に、『大丈夫』なのか? 僕は、アリアさんのことが一番心配だった。
「――大丈夫だ」
「…………え?」
……聞こえるはずのない声がした。聞こえてはいけない声がした。どうして、ここに? どうして?
視線の先には、小さな人影。魔法が解けている今、その姿はあまりにも小さく、それなのに、赤い髪は燃えるように熱く、そしてその視線は、僕らを串刺しにしていた。
「絶対に、大丈夫だ。だってお前らは、そこに辿り着く前に膝をつく。そう決まっているんだ」
「……サラ姉さん…………」
サラさんは鋭い視線で僕らを見つめ、そしてあまりにも冷たい声でいい放つ。
「ウタ、アリア……言っただろう? いざとなったら、私がお前らの進路を塞いでやる、ってな」
「どうして……ここに……。だって、お城でラトさんが」
「ラト? あいつの監視なんかさっさと抜け出してきたに決まってるだろ? お前らがまだ上に登っていなくてラッキーだった」
うっすらと笑いを浮かべるサラさん。僕は、笑えなかった。
「……ところでお主。まさか我の姿が見えていないわけではあるまいな?」
「そりゃそうさ。いやー、でかいなぁーって見てたよ」
「我はウタ殿に遣える身。その道を塞ぐのであれば、お主を敵に回すこともあるだろう。小人族がドラゴンに勝てるとでも?」
……戦いを避けるためだろうか? ドラくんはあえて強い口調で言う。が、サラさんも引く気は全くない。
「勝てなくても問題ないさ。お前はウタに使役されている。なら、主であるウタを叩けばいい。そうすれば引かざるを得ないだろう?」
「……やってみろ。我には主君であるウタ殿を守る義務がある」
「……ウタ」
サラさんが僕をしっかりと見据える。それだけで、僕はすこし後ずさった。
「私を鑑定しろ」
「え……それは、その」
「私のステータスを見ろ。そして、それを読み上げるんだ」
なにも言えず、僕は言われるがままに鑑定した。
名前 サラ
種族 小人族
年齢 94
職業 皇女
レベル 133
HP 37000
MP 14000
スキル アイテムボックス・鑑定・暗視・威圧(超上級)・剣術(超上級)・体術(上級)・初級魔法(熟練度10)・光魔法(熟練度10)・炎魔法(熟練度9)・風魔法(熟練度7)・雷魔法(熟練度7)・回復魔法(熟練度5)
ユニークスキル 森の加護・守護
称号 時期女王・強き意思・天真爛漫・侮ると危険
……どういう、ことだ? 個性の塊'sの影響で感覚が麻痺していたが、このステータスが異常なのはすぐに分かった。
レベル133……?
だって、レベルの上限は100なんじゃ……。
僕は戸惑いつつも、ステータスを一つ一つ読み上げた。だんだんと、みんなの目の色が変わる。
「……レベルに驚いているのか? そりゃそうだ。普通は100が最高だ。
でも、私の場合『森の加護』の影響がある。……ユニークスキル、鑑定してみろ」
「は、はい……。
森の加護……森を知り尽くした者に大地から与えられる加護。レベル上限プラス50、常にMPが最大値の10%回復する……。
それと、守護……守りたい者が見えている場合、またはその者の顔と名前が一致している場合、その者を守ることができる。
自分にたいして使った場合、防御力が3倍になる……」
「どうする? 今なら無駄な戦いを避けられるが、一歩前に出たら私はお前らを殺すつもりで守るぞ」
サラさんと戦えば、向こうもこちらも、被害は免れないだろう。……どうすればいい? どうしたらいい?
「……ウタ、私は戦うぞ」
「アリアさん……」
「ポロン、フローラ、ドラくん、スラちゃん……私に、付き合ってくれるか?」
……アリアさん、本当は辛いはずなのに……それでも…………。
さすが『不屈の精神』という称号を持った人だ。断る理由もない。無謀かもしれない。でも……。
僕らは、強くうなずいた。
ドロウさんが申し訳なさそうにそういうが、僕らは首を振った。
「いえいえ! なにかとありがとうございました!」
「でもなー……あ、フローラちゃん、こっち! こっち!」
「こっち……?」
フローラが近づくと、ドロウさんはすっと右手を差し出す。フローラは戸惑いつつも、その手をとった。……この展開知ってる。このあと白い光が溢れて……って、ほらぁぁぁぁぁ! やっぱりぃぃぃぃぃ!
「え、あの?」
「『レインボー』伝授したんで、よかったら使ってねー。一回はMP免除だからー。
……よし、解散! サンー、背中乗っけてほしいなー」
「巻かせろ主! ナイルとビャクはどうする?」
「やることもない。ついていこう」
「一緒にいく。じゃ、検討を祈りまーす!」
「あ、はい!」
「ダーク、久しぶりに話せてよかったぜ!」
そう言い残すと、ドロウさんたちはどこかへ飛び去っていってしまった。ドラくんは少しの間空を見ていたけど、すぐに向き直った。
「では、行くか」
◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈
相手の力量は、どう頑張っても分からなかった。だから、ぶっつけ本番。一発勝負で挑まなければならない。そのこともあって、僕らの目には少しの不安があった。
「…………」
「…………?
……どうしたの?」
「おいらたち……大丈夫、だよな?」
不安げな瞳をこちらへ向けて、懇願するように問いかけるポロンくん。……何て答えたらいいのかわからない。僕にも、どうなるか分からない。
「……ウタさん、大丈夫、ですよね?」
フローラも心配そうに言う。
正直なところ、僕も不安だ。だって、もしもこれで失敗なんてしたら……。
「……我もいる心配するな」
ドラくんはそういうけど、僕は、他のなにかが気になって仕方がなかった。そのなにかは分からないけど……。いや、本当は、分かっていた。
「……大丈夫だよ、きっと」
アリアさんが言う。……その『大丈夫』って、本当に、『大丈夫』なのか? 僕は、アリアさんのことが一番心配だった。
「――大丈夫だ」
「…………え?」
……聞こえるはずのない声がした。聞こえてはいけない声がした。どうして、ここに? どうして?
視線の先には、小さな人影。魔法が解けている今、その姿はあまりにも小さく、それなのに、赤い髪は燃えるように熱く、そしてその視線は、僕らを串刺しにしていた。
「絶対に、大丈夫だ。だってお前らは、そこに辿り着く前に膝をつく。そう決まっているんだ」
「……サラ姉さん…………」
サラさんは鋭い視線で僕らを見つめ、そしてあまりにも冷たい声でいい放つ。
「ウタ、アリア……言っただろう? いざとなったら、私がお前らの進路を塞いでやる、ってな」
「どうして……ここに……。だって、お城でラトさんが」
「ラト? あいつの監視なんかさっさと抜け出してきたに決まってるだろ? お前らがまだ上に登っていなくてラッキーだった」
うっすらと笑いを浮かべるサラさん。僕は、笑えなかった。
「……ところでお主。まさか我の姿が見えていないわけではあるまいな?」
「そりゃそうさ。いやー、でかいなぁーって見てたよ」
「我はウタ殿に遣える身。その道を塞ぐのであれば、お主を敵に回すこともあるだろう。小人族がドラゴンに勝てるとでも?」
……戦いを避けるためだろうか? ドラくんはあえて強い口調で言う。が、サラさんも引く気は全くない。
「勝てなくても問題ないさ。お前はウタに使役されている。なら、主であるウタを叩けばいい。そうすれば引かざるを得ないだろう?」
「……やってみろ。我には主君であるウタ殿を守る義務がある」
「……ウタ」
サラさんが僕をしっかりと見据える。それだけで、僕はすこし後ずさった。
「私を鑑定しろ」
「え……それは、その」
「私のステータスを見ろ。そして、それを読み上げるんだ」
なにも言えず、僕は言われるがままに鑑定した。
名前 サラ
種族 小人族
年齢 94
職業 皇女
レベル 133
HP 37000
MP 14000
スキル アイテムボックス・鑑定・暗視・威圧(超上級)・剣術(超上級)・体術(上級)・初級魔法(熟練度10)・光魔法(熟練度10)・炎魔法(熟練度9)・風魔法(熟練度7)・雷魔法(熟練度7)・回復魔法(熟練度5)
ユニークスキル 森の加護・守護
称号 時期女王・強き意思・天真爛漫・侮ると危険
……どういう、ことだ? 個性の塊'sの影響で感覚が麻痺していたが、このステータスが異常なのはすぐに分かった。
レベル133……?
だって、レベルの上限は100なんじゃ……。
僕は戸惑いつつも、ステータスを一つ一つ読み上げた。だんだんと、みんなの目の色が変わる。
「……レベルに驚いているのか? そりゃそうだ。普通は100が最高だ。
でも、私の場合『森の加護』の影響がある。……ユニークスキル、鑑定してみろ」
「は、はい……。
森の加護……森を知り尽くした者に大地から与えられる加護。レベル上限プラス50、常にMPが最大値の10%回復する……。
それと、守護……守りたい者が見えている場合、またはその者の顔と名前が一致している場合、その者を守ることができる。
自分にたいして使った場合、防御力が3倍になる……」
「どうする? 今なら無駄な戦いを避けられるが、一歩前に出たら私はお前らを殺すつもりで守るぞ」
サラさんと戦えば、向こうもこちらも、被害は免れないだろう。……どうすればいい? どうしたらいい?
「……ウタ、私は戦うぞ」
「アリアさん……」
「ポロン、フローラ、ドラくん、スラちゃん……私に、付き合ってくれるか?」
……アリアさん、本当は辛いはずなのに……それでも…………。
さすが『不屈の精神』という称号を持った人だ。断る理由もない。無謀かもしれない。でも……。
僕らは、強くうなずいた。
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