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ワクワク! ドキドキ! 小人ライフ!
好きなように
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地下に降り、そこにあった通路を歩いていくと、大きな扉があった。厳重そうな重い扉……しかし、その奥からは音がしていた。
「……誰か、いるんでしょうか?」
「そうだな」
『誰か』と、僕は言ったが、ここを普段使っているのは一人だけだ。おそらく、その人だろう。
「……ちょっと、覗いてみましょうか?」
「……だな」
僕らは大きな扉を少しだけ、そおっと開けて、中を見た。
「ファイヤランスっ!」
突如現れる無数の炎の槍。それは四方八方へと飛び、やがて消える。その中心で、息を切らしながら、汗をぬぐうサラさんがいた。
「……そんなところで覗いてないで、さっさと入ってきたらどうだ?」
「うっ……」
ばれてる。それなら隠れてても仕方かないと、僕らは扉を開けて中に入った。
サラさんは僕らをちらっと見ると、アイテムボックスから弓を取りだす。そして、アリアさんに言う。
「お前らも弓を出せ」
「えっ……」
「練習、するんだろ?」
「でもほら、私が」
「アリアだって、弓はそんなに使ったことないだろ? で、どんな弓なんだ?」
僕らが弓を取り出すと、サラさんは僕からそれを受け取り、じっと眺めた。
「……すごい加護だな。魔法を宿しても大丈夫なのか。こんなのどこで…………」
そう言っていたサラさんの目が、弓の一部に止まる。そこには、小さな文字で『MADE by Good Ocean Field』と書かれている。グッドオーシャンフィールド製……。それを見たサラさんは、どこか納得したようにうなずいた。
「グッドオーシャンフィールド……なるほどね、あいつか。これ売ってきたの、侍だろ?」
「そ、そうです。なんか、ずっとつけ回されてて……」
「そうか。ま、あいつが作ったんなら強度もバッチリだろう。ある程度激しい練習をしても大丈夫だな」
は、激しい練習……?! それは一体なんですか! というか、さっきの一瞬は一体! ファイヤランスめっちゃありましたよね!?
……というか、さっきから割りと普通に接してしまってるけど、いいのだろうか? だって、昨日の今日だ。ちょっと顔を合わせづらい。
「ここに的がある」
サラさんが指差す先には、アーチェリーとかで使うような、丸い的があった。真ん中には小さな丸が書かれていて、そこをめがけて射るようだ。
「魔法をせっかく宿せるからやってみたいが、まずは当たらないとな。弓は、左手で持ち、右手で弓矢を持って引く。……ほら、やってみろ」
「あ、あぁ……」
僕とアリアさんは、戸惑いながらも指示にしたがい、弓を構える。……弓なんて、初めて持った。なんだか、違和感だ。ずっと剣を使っていたから、違う武器というのは新鮮だ。
「で、弓矢を名一杯引っ張ったら、印と弓の先のところを的に合わせるんだ」
ぐっと右手に力を込め、弓矢を引く。焦点がなかなか合わない…………っあーーーー!!! イライラするぅっ! とりあえずいいや!
放ってみると、それは的を大きく外れ、やがて建物の壁にぶつかっては少しの魔力を散らした。
「なにかしらにちゃんあたれば、弓矢は自動的に自分の手元へと戻ってくる。たまに、状況的に戻ってこないことはあるが、今までそんなことになったためしがない。
まぁ、ここでは100%返ってくるだろう。何回かやってみろ」
そう言われたので何度かアリアさんとやってみる。……が、
「うっ……外れだ」
「全然当たりません……」
僕らの放つ弓矢は全く当たる気配がなく、一番中心に近いのでも、アリアさんが放ったやつが的のギリギリはしっこに当たっただけである。
「おかしいな……前はもうちょっと当たったんだけどな……」
「そうなんですか?」
「あぁ……ブランクがあるからか、全く当たらないな」
すると、サラさんが後ろから僕らに歩み寄ってきた。
「弓は剣とは違う。落ち着いて、冷静に対象を見定めないと、当てることはできないさ。
……貸してみろ」
サラさんの言葉に、アリアさんが弓を渡す。そしてサラさんは、ゆっくりと弓を構えた。ぐっと糸を引き、
「……これ以上に射ちやすい弓矢は、ないぞ」
そして離す。放たれた弓矢は真っ直ぐに飛んでいき、的のど真ん中に見事に当たった。
「……すごい…………」
手元に戻った弓矢を再び構え、サラさんは無表情のまま言う。
「……私は、お前らにどうしろとか、これ以上言うのはやめた」
「え……?」
弓矢は、またしてもど真ん中に命中する。貫かれたのは、本当に的なのか。それとも……。
弓矢は、サラさんの手元に戻ってくる。それを、また構える。
「どうせなんと言ったって、お前らは、あの事について調べるんだろう? ……嫌になるくらい、優しくて、お節介だからな」
弓矢は、確実に的に当たる。外すことはない。ただ淡々と、弓矢は的を貫く。そしてきっと、何度でも弓矢は的を貫くだろう。
「だから、無駄なことはやめた。私はもう、なにも言わない。だが、私だって鬼じゃない。アリアやウタ、ポロンにフローラ……お前らの命は、惜しい」
そして、なにかを必死にこらえながら、サラさんは弓を構える。
「いざとなったら、私がお前らの進路を塞いでやる。先へ進むなら、私を越えてからだ。……そのつもりでいろ」
……的が、血を流した。
「……誰か、いるんでしょうか?」
「そうだな」
『誰か』と、僕は言ったが、ここを普段使っているのは一人だけだ。おそらく、その人だろう。
「……ちょっと、覗いてみましょうか?」
「……だな」
僕らは大きな扉を少しだけ、そおっと開けて、中を見た。
「ファイヤランスっ!」
突如現れる無数の炎の槍。それは四方八方へと飛び、やがて消える。その中心で、息を切らしながら、汗をぬぐうサラさんがいた。
「……そんなところで覗いてないで、さっさと入ってきたらどうだ?」
「うっ……」
ばれてる。それなら隠れてても仕方かないと、僕らは扉を開けて中に入った。
サラさんは僕らをちらっと見ると、アイテムボックスから弓を取りだす。そして、アリアさんに言う。
「お前らも弓を出せ」
「えっ……」
「練習、するんだろ?」
「でもほら、私が」
「アリアだって、弓はそんなに使ったことないだろ? で、どんな弓なんだ?」
僕らが弓を取り出すと、サラさんは僕からそれを受け取り、じっと眺めた。
「……すごい加護だな。魔法を宿しても大丈夫なのか。こんなのどこで…………」
そう言っていたサラさんの目が、弓の一部に止まる。そこには、小さな文字で『MADE by Good Ocean Field』と書かれている。グッドオーシャンフィールド製……。それを見たサラさんは、どこか納得したようにうなずいた。
「グッドオーシャンフィールド……なるほどね、あいつか。これ売ってきたの、侍だろ?」
「そ、そうです。なんか、ずっとつけ回されてて……」
「そうか。ま、あいつが作ったんなら強度もバッチリだろう。ある程度激しい練習をしても大丈夫だな」
は、激しい練習……?! それは一体なんですか! というか、さっきの一瞬は一体! ファイヤランスめっちゃありましたよね!?
……というか、さっきから割りと普通に接してしまってるけど、いいのだろうか? だって、昨日の今日だ。ちょっと顔を合わせづらい。
「ここに的がある」
サラさんが指差す先には、アーチェリーとかで使うような、丸い的があった。真ん中には小さな丸が書かれていて、そこをめがけて射るようだ。
「魔法をせっかく宿せるからやってみたいが、まずは当たらないとな。弓は、左手で持ち、右手で弓矢を持って引く。……ほら、やってみろ」
「あ、あぁ……」
僕とアリアさんは、戸惑いながらも指示にしたがい、弓を構える。……弓なんて、初めて持った。なんだか、違和感だ。ずっと剣を使っていたから、違う武器というのは新鮮だ。
「で、弓矢を名一杯引っ張ったら、印と弓の先のところを的に合わせるんだ」
ぐっと右手に力を込め、弓矢を引く。焦点がなかなか合わない…………っあーーーー!!! イライラするぅっ! とりあえずいいや!
放ってみると、それは的を大きく外れ、やがて建物の壁にぶつかっては少しの魔力を散らした。
「なにかしらにちゃんあたれば、弓矢は自動的に自分の手元へと戻ってくる。たまに、状況的に戻ってこないことはあるが、今までそんなことになったためしがない。
まぁ、ここでは100%返ってくるだろう。何回かやってみろ」
そう言われたので何度かアリアさんとやってみる。……が、
「うっ……外れだ」
「全然当たりません……」
僕らの放つ弓矢は全く当たる気配がなく、一番中心に近いのでも、アリアさんが放ったやつが的のギリギリはしっこに当たっただけである。
「おかしいな……前はもうちょっと当たったんだけどな……」
「そうなんですか?」
「あぁ……ブランクがあるからか、全く当たらないな」
すると、サラさんが後ろから僕らに歩み寄ってきた。
「弓は剣とは違う。落ち着いて、冷静に対象を見定めないと、当てることはできないさ。
……貸してみろ」
サラさんの言葉に、アリアさんが弓を渡す。そしてサラさんは、ゆっくりと弓を構えた。ぐっと糸を引き、
「……これ以上に射ちやすい弓矢は、ないぞ」
そして離す。放たれた弓矢は真っ直ぐに飛んでいき、的のど真ん中に見事に当たった。
「……すごい…………」
手元に戻った弓矢を再び構え、サラさんは無表情のまま言う。
「……私は、お前らにどうしろとか、これ以上言うのはやめた」
「え……?」
弓矢は、またしてもど真ん中に命中する。貫かれたのは、本当に的なのか。それとも……。
弓矢は、サラさんの手元に戻ってくる。それを、また構える。
「どうせなんと言ったって、お前らは、あの事について調べるんだろう? ……嫌になるくらい、優しくて、お節介だからな」
弓矢は、確実に的に当たる。外すことはない。ただ淡々と、弓矢は的を貫く。そしてきっと、何度でも弓矢は的を貫くだろう。
「だから、無駄なことはやめた。私はもう、なにも言わない。だが、私だって鬼じゃない。アリアやウタ、ポロンにフローラ……お前らの命は、惜しい」
そして、なにかを必死にこらえながら、サラさんは弓を構える。
「いざとなったら、私がお前らの進路を塞いでやる。先へ進むなら、私を越えてからだ。……そのつもりでいろ」
……的が、血を流した。
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