チート能力解放するにはヘタレを卒業しなきゃいけない

植木鉢たかはし

文字の大きさ
上 下
103 / 387
ワクワク! ドキドキ! 小人ライフ!

余計なこと

しおりを挟む
 その後、もう何時間か聞き込みをしたが、得られた情報は以下の二つのみ。

 一つ、鳥は何者かに撃たれていて、その何者かは分かっていない。そもそも、鳥は高いところを飛んでいるわけだから、小人族からしたら、下から撃つなんて至難の技だそう。

 そしてもう一つ。過去にはこんなことほとんどなくて、起きはじめたのは一年前だということ。起こるはずのないことなのだから、当然だ。


「それにしても……本当に情報が少ないですね……」


 フローラがそういう。あまりにも情報が少なすぎるので、日も暮れてきたし、今日は一旦帰って、サラさんからも話を聞いたりしたのち、また明日行ってみようということになった。
 そういうわけで、僕らは今、お城へと向かっている。


「でもほら、サラ姉さんに聞いたら、きっと色々分かると思うし、手詰まりってことでもないさ。な?」

「ですね。……というか、部屋一緒なんですよね?」

「ん? あぁ、そうだな」

「なんで一緒に……!」

「いいじゃないか! 楽しくて!」

「いいじゃないですか! 楽しくて!」

「ウタ兄、ダメだよ、こいつらにその手は通じない。ストレートに言わないと」


 す、ストレートにって言われても……。
 ポロンくんの言葉を聞いた二人は、僕の顔をじっと覗き込む。


「よし。じゃあストレートに言ってみろ、ウタ!」

「え、あ、そ、そんなこと言われたって……」

「いいんですよウタさん! ガツンと言ってくださいよ! イビキとか寝言がうるさいんですか!?」

「ぜんっぜんうるさくないです! むしろ僕うるさくないですか!?」

「別に大丈夫だぞ? って、じゃあなんなんだ?」


 ……あ、う、あ…………。


「うわぁぁぁぁぁ!!!」

「う、ウタが発狂した!」

「……ウタ兄、大丈夫か?」

「ぼぼぼ、僕はなにも知らないです! なにも知らないですっ!」

「いや、んな訳ないだろ」

「ウタ兄のヘタレが再発してるな」

「ウタさんって、そういえばこんな人でしたね……」

「勇気発動してるときのインパクトが強くて、忘れてたな」


 とまぁ、そんなこんなしていたらお城についた。そこで、何か思いついたのか、アリアさんが声をあげた。


「そうだっ!」

「どうしたんですか?」

「なぁ、三人とも、弓は使ったことないよな?」


 僕らはうなずく。そりゃあ、使ったことなんてないけど……。


「ここ、最初にウタをしごいたところに似た場所があるんだ。そこでなら、思いっきり練習ができる。ついでに、属性魔法も練習したらどうだ?」

「最初にウタ兄しごかれたのか」

「レベル1だったもので」

「おつかれさまです……」


 でも、練習ができるなら、やっといた方がいいだろう。
 さすがにお城の警備の人などはアリアさんの顔をちゃんと分かってみたいで、すんなりと通してくれた。


「あ、サラ姉さん!」

「んー? あぁ、おかえり。部屋は用意させといたよ。今、案内するな」

「ありがとう」


 そして案内されたのは、お城の二階の、門の、大きな部屋だった。


「ここだよ。……というか、ポロンとフローラはともかく、ウタとアリアは一緒でよかったのか?」

「よくな」

「大丈夫だよ」

「だいじょばなぁぁぁぁい!!!」


 そんな僕らの様子を見て、くすっと笑ったサラさんは、僕に耳打ちした。


「ダメだよ、アリアはあぁいうやつだ。諦めろ」

「そ、そんなぁ……。婚約者がいる身ですよね?」

「なにかしたら、潰すからなっ!」


 そ、そんなぁぁぁぁ! いや、しないけど! しないけど!


「あぁ、そうだ! サラ姉さん、あとで練習場貸してくれないか? いい弓を買ったんだが、こいつらは経験がなくてな」

「おっし、そういうことなら、大丈夫だよ。そもそもあそこ使うの私くらいだからな! 地下にある。好きに使ってくれ」

「ありがとうございます!」

「礼にはおよばないさ!」


 それから、と、アリアさんが切り出す。


「さっきの鳥のこと……色々、教えてくれないか? 私たちも気になってて、それで」

「それで……情報を知ったら、どうするんだ?」


 ぞくっと、背筋が凍るような感覚。サラさんの声のトーンが急に変化する。それは、相手を嘲るでもなく蔑むでもなく……真っ直ぐな負の感情。


「……サラさん?」

「あの件は私に任せておけ。お前たちが介入していいところじゃない。手を引け。そして忘れろ」


 そんなサラさんの言葉に、反撃したのはアリアさんだった。


「そんな……忘れるなんて! だって、危うく人が死ぬところだった! なんとかできるなら、なんとかして」

「私が。……なんとかしようとしてないと思ってるのか?」

「……そういうことじゃ」

「いいか? アリア、お前なら分かるだろう? 一国の姫として、一番に優先しなければならないのは、民の幸せだ。それを考えないはずない。
 でも、例えば……そう、自分以外の全員が敵だったら? 敵が神だったら? お前は……どうする?」


 ……アリアさんは、なにも答えられない。だって、それがアリアさんの答えだから。どうすることもできない、というそれが。


「……神ほどは強くないさ、今回の敵は。でも、どうすることもできないんだ。そこまで辿り着けない」


 サラさんは悔しそうにそう呟いたあと、僕らを見た。


「……お前たちがこれ以上介入しようとすれば、死ぬぞ」

「……死ぬ…………?」

「そうだ死ぬ。実際、辿り着けないんだ。……私も、危うく死ぬところだった」

「っ…………」


 アリアさんがなにか言おうとして、押しとどまる。きっと、何があったのかとか、色々聞きたいに決まっている。しかし、言葉は出てこなかった。


「練習場は好きに使え。でも……この事は、もう忘れろ。余計なことはするな」

「……でも」


 ――サラさんの目付きが変わる。琥珀色の瞳が、静かに僕らをとらえる。それだけで、動けなくなった。


「――今日は寝ろ。いいな?」


 僕らは、ただ、うなずくしかなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

鋼なるドラーガ・ノート ~S級パーティーから超絶無能の烙印を押されて追放される賢者、今更やめてくれと言われてももう遅い~

月江堂
ファンタジー
― 後から俺の実力に気付いたところでもう遅い。絶対に辞めないからな ―  “賢者”ドラーガ・ノート。鋼の二つ名で知られる彼がSランク冒険者パーティー、メッツァトルに加入した時、誰もが彼の活躍を期待していた。  だが蓋を開けてみれば彼は無能の極致。強い魔法は使えず、運動神経は鈍くて小動物にすら勝てない。無能なだけならばまだしも味方の足を引っ張って仲間を危機に陥れる始末。  当然パーティーのリーダー“勇者”アルグスは彼に「無能」の烙印を押し、パーティーから追放する非情な決断をするのだが、しかしそこには彼を追い出すことのできない如何ともしがたい事情が存在するのだった。  ドラーガを追放できない理由とは一体何なのか!?  そしてこの賢者はなぜこんなにも無能なのに常に偉そうなのか!?  彼の秘められた実力とは一体何なのか? そもそもそんなもの実在するのか!?  力こそが全てであり、鋼の教えと闇を司る魔が支配する世界。ムカフ島と呼ばれる火山のダンジョンの攻略を通して彼らはやがて大きな陰謀に巻き込まれてゆく。

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)

いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。 --------- 掲載は不定期になります。 追記 「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。 お知らせ カクヨム様でも掲載中です。

飯屋の娘は魔法を使いたくない?

秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。 魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。 それを見ていた貴族の青年が…。 異世界転生の話です。 のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。 ※ 表紙は星影さんの作品です。 ※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

前世の記憶さん。こんにちは。

満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。 周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。 主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。 恋愛は当分先に入れる予定です。 主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです! 小説になろう様にも掲載しています。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...