チート能力解放するにはヘタレを卒業しなきゃいけない

植木鉢たかはし

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ワクワク! ドキドキ! 小人ライフ!

余計なこと

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 その後、もう何時間か聞き込みをしたが、得られた情報は以下の二つのみ。

 一つ、鳥は何者かに撃たれていて、その何者かは分かっていない。そもそも、鳥は高いところを飛んでいるわけだから、小人族からしたら、下から撃つなんて至難の技だそう。

 そしてもう一つ。過去にはこんなことほとんどなくて、起きはじめたのは一年前だということ。起こるはずのないことなのだから、当然だ。


「それにしても……本当に情報が少ないですね……」


 フローラがそういう。あまりにも情報が少なすぎるので、日も暮れてきたし、今日は一旦帰って、サラさんからも話を聞いたりしたのち、また明日行ってみようということになった。
 そういうわけで、僕らは今、お城へと向かっている。


「でもほら、サラ姉さんに聞いたら、きっと色々分かると思うし、手詰まりってことでもないさ。な?」

「ですね。……というか、部屋一緒なんですよね?」

「ん? あぁ、そうだな」

「なんで一緒に……!」

「いいじゃないか! 楽しくて!」

「いいじゃないですか! 楽しくて!」

「ウタ兄、ダメだよ、こいつらにその手は通じない。ストレートに言わないと」


 す、ストレートにって言われても……。
 ポロンくんの言葉を聞いた二人は、僕の顔をじっと覗き込む。


「よし。じゃあストレートに言ってみろ、ウタ!」

「え、あ、そ、そんなこと言われたって……」

「いいんですよウタさん! ガツンと言ってくださいよ! イビキとか寝言がうるさいんですか!?」

「ぜんっぜんうるさくないです! むしろ僕うるさくないですか!?」

「別に大丈夫だぞ? って、じゃあなんなんだ?」


 ……あ、う、あ…………。


「うわぁぁぁぁぁ!!!」

「う、ウタが発狂した!」

「……ウタ兄、大丈夫か?」

「ぼぼぼ、僕はなにも知らないです! なにも知らないですっ!」

「いや、んな訳ないだろ」

「ウタ兄のヘタレが再発してるな」

「ウタさんって、そういえばこんな人でしたね……」

「勇気発動してるときのインパクトが強くて、忘れてたな」


 とまぁ、そんなこんなしていたらお城についた。そこで、何か思いついたのか、アリアさんが声をあげた。


「そうだっ!」

「どうしたんですか?」

「なぁ、三人とも、弓は使ったことないよな?」


 僕らはうなずく。そりゃあ、使ったことなんてないけど……。


「ここ、最初にウタをしごいたところに似た場所があるんだ。そこでなら、思いっきり練習ができる。ついでに、属性魔法も練習したらどうだ?」

「最初にウタ兄しごかれたのか」

「レベル1だったもので」

「おつかれさまです……」


 でも、練習ができるなら、やっといた方がいいだろう。
 さすがにお城の警備の人などはアリアさんの顔をちゃんと分かってみたいで、すんなりと通してくれた。


「あ、サラ姉さん!」

「んー? あぁ、おかえり。部屋は用意させといたよ。今、案内するな」

「ありがとう」


 そして案内されたのは、お城の二階の、門の、大きな部屋だった。


「ここだよ。……というか、ポロンとフローラはともかく、ウタとアリアは一緒でよかったのか?」

「よくな」

「大丈夫だよ」

「だいじょばなぁぁぁぁい!!!」


 そんな僕らの様子を見て、くすっと笑ったサラさんは、僕に耳打ちした。


「ダメだよ、アリアはあぁいうやつだ。諦めろ」

「そ、そんなぁ……。婚約者がいる身ですよね?」

「なにかしたら、潰すからなっ!」


 そ、そんなぁぁぁぁ! いや、しないけど! しないけど!


「あぁ、そうだ! サラ姉さん、あとで練習場貸してくれないか? いい弓を買ったんだが、こいつらは経験がなくてな」

「おっし、そういうことなら、大丈夫だよ。そもそもあそこ使うの私くらいだからな! 地下にある。好きに使ってくれ」

「ありがとうございます!」

「礼にはおよばないさ!」


 それから、と、アリアさんが切り出す。


「さっきの鳥のこと……色々、教えてくれないか? 私たちも気になってて、それで」

「それで……情報を知ったら、どうするんだ?」


 ぞくっと、背筋が凍るような感覚。サラさんの声のトーンが急に変化する。それは、相手を嘲るでもなく蔑むでもなく……真っ直ぐな負の感情。


「……サラさん?」

「あの件は私に任せておけ。お前たちが介入していいところじゃない。手を引け。そして忘れろ」


 そんなサラさんの言葉に、反撃したのはアリアさんだった。


「そんな……忘れるなんて! だって、危うく人が死ぬところだった! なんとかできるなら、なんとかして」

「私が。……なんとかしようとしてないと思ってるのか?」

「……そういうことじゃ」

「いいか? アリア、お前なら分かるだろう? 一国の姫として、一番に優先しなければならないのは、民の幸せだ。それを考えないはずない。
 でも、例えば……そう、自分以外の全員が敵だったら? 敵が神だったら? お前は……どうする?」


 ……アリアさんは、なにも答えられない。だって、それがアリアさんの答えだから。どうすることもできない、というそれが。


「……神ほどは強くないさ、今回の敵は。でも、どうすることもできないんだ。そこまで辿り着けない」


 サラさんは悔しそうにそう呟いたあと、僕らを見た。


「……お前たちがこれ以上介入しようとすれば、死ぬぞ」

「……死ぬ…………?」

「そうだ死ぬ。実際、辿り着けないんだ。……私も、危うく死ぬところだった」

「っ…………」


 アリアさんがなにか言おうとして、押しとどまる。きっと、何があったのかとか、色々聞きたいに決まっている。しかし、言葉は出てこなかった。


「練習場は好きに使え。でも……この事は、もう忘れろ。余計なことはするな」

「……でも」


 ――サラさんの目付きが変わる。琥珀色の瞳が、静かに僕らをとらえる。それだけで、動けなくなった。


「――今日は寝ろ。いいな?」


 僕らは、ただ、うなずくしかなかった。
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