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ワクワク! ドキドキ! 小人ライフ!
森の加護
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戻ってきたサラさんは、今の状況を理解しきれておらず、驚いたように僕らを見た。
「なんだなんだ。どうした?」
「いや、実はですね……」
僕らはサラさんがいない間に起こったこと、ウルフたちのことやそのあと現れた女性のことを話した。
すると、サラさんはどこか納得したように頷いた。
「なるほどなぁ。そいつは多分、ドロウだ」
「ドロウ?」
「そういう名前のやつさ。一流の召喚師だな。大体の魔物の使役権を持っていて、自分も戦える。正直に言って、強い」
……あの人、山の方に住んでるとか言ってたなぁ。確か、サラさんが言ってたのも、山…………。
「……ドロウさんって、もしかして?」
「あぁ! 個性の塊'sだ!」
「やっぱりぃ!」
「まぁまぁ、いいもん持ってきてやったから、休憩にしよう」
「いいもの?」
首をかしげるフローラの目の前に、サラさんはなにかを差し出す。
「あっ……これ、」
アリアさんが懐かしそうな声をあげる。サラさんの手にあったのは、小さな赤い果物だった。木苺のようなそれは小さな宝石のようだった。
サラさんはそれが山盛り入った籠をアイテムボックスから取りだし、地面においた。
「っしょ! リロトっていう果物さ。さっき川の水で洗ってきたからきれいだよ。そのまま食べてみな」
「やったー! いっただっきまーす!」
「い、いただきます!」
フローラとポロンくんがいち早く手に取り、口に運ぶ。そして、疲れきっていた瞳をぱあっと輝かせた。
「お、美味しいです!」
「なんだこれ! スッゲーうまいぞ!」
「そうだろ? そうだろ?! ほら! アリアとウタも食ってみてくれよ!」
言われるがままにリロトを手に取り、口に運ぶ。甘酸っぱい味が口一杯に広がる。かなり甘味は強い気がするが、決してくどくはなく、疲れた体に染み渡るようだった。
「本当に美味しいですね! なんだか、木苺みたいだなぁ」
「キイチゴ、か? 前にアキヒトが食べたいとか言ってたな」
「アキヒトさんがですか?」
「山に生えてたのを摘んで食べてたんだとか」
「僕も食べてましたよ! リロトに似ていて、赤くて、ちっちゃくて、美味しいんです」
「……そうか、ウタがいたところにも、森があったんだな」
そう言い、おもむろにサラさんは森の方へと向き直り、そして、首にかけていたペンダントを握りしめる。
すると、強い風が吹き、ざあっと音をたてながら通りすぎていく。木々はゆらゆらと揺れ、木漏れ日が光る。天高く鳥が飛び、歌をこぼす。
「……ミネドールは、森の加護で護られているんだ」
「森の加護……?」
「加護というのは、どこにでもあるものなんだ。森の加護、山の加護、海の加護、空の加護……。
その中でも、ミネドールでは森の加護の力が半端なく強い。だから、果物や野菜がよく育つし、パンだって美味しいんだぞ!」
そう得意気に話すサラさんだったが一瞬だけ、その顔に影が落ちるのが見えた。
「でも…………最近、森が弱っている気がする」
「森が弱っている?」
「力が弱い。声が聞こえない。それに、最近では……」
そして、そこまで話して、ハッとしたように僕らを見渡し、そしてごまかすように笑った。
「あ……あはは! 悪いな、変な話しちまって。忘れてくれ!」
「サラ姉……?」
「姉さん……どうしたんだ? 急に」
「いや! なんでもないなんでもない! さてと、依頼のノルマもクリアしたし、これで無事、Cランクパーティーに昇格だな!」
そんなことを言いつつも、サラさんの心は、もう、別のなにかを見ていた。その時の僕らは、サラさんが何を考えていたのか、分からなかった。
◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈
「それでは、報酬の金貨5枚と新しいギルドカードです。今後はこれを提示してくださいね」
「分かりました! ありがとうございます」
すったもんだはありましたが……僕らは無事、Cランクパーティーへと昇格することができましたぁ! パチパチパチー!
「依頼の幅も増えるな。だんだん難しくなっている」
「少し落ち着いたら、色々チャレンジしてみましょうか。フローラやポロンくんでもできる範囲で」
そんな風に話す僕らを、サラさんは満足そうに見つめていた。
「昇格おめでと。まだゆっくりミネドールの王都を案内できていないから、このあとにでもと思うんだが、どうだ?」
「え、サラさんの、おすすめのスポットとかを教えてくれるんですか? それなら是非いきたいです!」
「よし、じゃあ行きたい人ー! 手ぇあげてー!」
僕らはビシッと手をあげる。その光景にクスッと笑ったサラさん。
……しかし、そんなに簡単に事が進めばなんの問題もなかった。
「よし、じゃあ今からパン屋に行くぞ」
と、僕らが外に出たその瞬間だった。
空から巨大ななにかな落ちてきた。悲鳴が街のなかに溢れる。何人か、逃げ遅れた。
サラさんはその様子を見ると真っ先に剣を取り、落ちてきたなにかに向かう。
「またお前か……! くっそ、なんでっ……!」
そんな、悔しそうなサラさんの声がした。
「なんだなんだ。どうした?」
「いや、実はですね……」
僕らはサラさんがいない間に起こったこと、ウルフたちのことやそのあと現れた女性のことを話した。
すると、サラさんはどこか納得したように頷いた。
「なるほどなぁ。そいつは多分、ドロウだ」
「ドロウ?」
「そういう名前のやつさ。一流の召喚師だな。大体の魔物の使役権を持っていて、自分も戦える。正直に言って、強い」
……あの人、山の方に住んでるとか言ってたなぁ。確か、サラさんが言ってたのも、山…………。
「……ドロウさんって、もしかして?」
「あぁ! 個性の塊'sだ!」
「やっぱりぃ!」
「まぁまぁ、いいもん持ってきてやったから、休憩にしよう」
「いいもの?」
首をかしげるフローラの目の前に、サラさんはなにかを差し出す。
「あっ……これ、」
アリアさんが懐かしそうな声をあげる。サラさんの手にあったのは、小さな赤い果物だった。木苺のようなそれは小さな宝石のようだった。
サラさんはそれが山盛り入った籠をアイテムボックスから取りだし、地面においた。
「っしょ! リロトっていう果物さ。さっき川の水で洗ってきたからきれいだよ。そのまま食べてみな」
「やったー! いっただっきまーす!」
「い、いただきます!」
フローラとポロンくんがいち早く手に取り、口に運ぶ。そして、疲れきっていた瞳をぱあっと輝かせた。
「お、美味しいです!」
「なんだこれ! スッゲーうまいぞ!」
「そうだろ? そうだろ?! ほら! アリアとウタも食ってみてくれよ!」
言われるがままにリロトを手に取り、口に運ぶ。甘酸っぱい味が口一杯に広がる。かなり甘味は強い気がするが、決してくどくはなく、疲れた体に染み渡るようだった。
「本当に美味しいですね! なんだか、木苺みたいだなぁ」
「キイチゴ、か? 前にアキヒトが食べたいとか言ってたな」
「アキヒトさんがですか?」
「山に生えてたのを摘んで食べてたんだとか」
「僕も食べてましたよ! リロトに似ていて、赤くて、ちっちゃくて、美味しいんです」
「……そうか、ウタがいたところにも、森があったんだな」
そう言い、おもむろにサラさんは森の方へと向き直り、そして、首にかけていたペンダントを握りしめる。
すると、強い風が吹き、ざあっと音をたてながら通りすぎていく。木々はゆらゆらと揺れ、木漏れ日が光る。天高く鳥が飛び、歌をこぼす。
「……ミネドールは、森の加護で護られているんだ」
「森の加護……?」
「加護というのは、どこにでもあるものなんだ。森の加護、山の加護、海の加護、空の加護……。
その中でも、ミネドールでは森の加護の力が半端なく強い。だから、果物や野菜がよく育つし、パンだって美味しいんだぞ!」
そう得意気に話すサラさんだったが一瞬だけ、その顔に影が落ちるのが見えた。
「でも…………最近、森が弱っている気がする」
「森が弱っている?」
「力が弱い。声が聞こえない。それに、最近では……」
そして、そこまで話して、ハッとしたように僕らを見渡し、そしてごまかすように笑った。
「あ……あはは! 悪いな、変な話しちまって。忘れてくれ!」
「サラ姉……?」
「姉さん……どうしたんだ? 急に」
「いや! なんでもないなんでもない! さてと、依頼のノルマもクリアしたし、これで無事、Cランクパーティーに昇格だな!」
そんなことを言いつつも、サラさんの心は、もう、別のなにかを見ていた。その時の僕らは、サラさんが何を考えていたのか、分からなかった。
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「それでは、報酬の金貨5枚と新しいギルドカードです。今後はこれを提示してくださいね」
「分かりました! ありがとうございます」
すったもんだはありましたが……僕らは無事、Cランクパーティーへと昇格することができましたぁ! パチパチパチー!
「依頼の幅も増えるな。だんだん難しくなっている」
「少し落ち着いたら、色々チャレンジしてみましょうか。フローラやポロンくんでもできる範囲で」
そんな風に話す僕らを、サラさんは満足そうに見つめていた。
「昇格おめでと。まだゆっくりミネドールの王都を案内できていないから、このあとにでもと思うんだが、どうだ?」
「え、サラさんの、おすすめのスポットとかを教えてくれるんですか? それなら是非いきたいです!」
「よし、じゃあ行きたい人ー! 手ぇあげてー!」
僕らはビシッと手をあげる。その光景にクスッと笑ったサラさん。
……しかし、そんなに簡単に事が進めばなんの問題もなかった。
「よし、じゃあ今からパン屋に行くぞ」
と、僕らが外に出たその瞬間だった。
空から巨大ななにかな落ちてきた。悲鳴が街のなかに溢れる。何人か、逃げ遅れた。
サラさんはその様子を見ると真っ先に剣を取り、落ちてきたなにかに向かう。
「またお前か……! くっそ、なんでっ……!」
そんな、悔しそうなサラさんの声がした。
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