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ワクワク! ドキドキ! 小人ライフ!
誤解は解けたかな?
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国境の長いトンネルを抜けると雪国……ではありませんでした。
そこは、街の少し高台になっている場所で、ミネドールの王都が一望できた。
「ふぅー、おい! お前ら重いんだよ!」
僕らを抱えたまま青年が言う。……あれ? いつのまにか僕らと同じ背丈になってる。あれぇ?
「よし! 今から城に向かうからな! お前らを法の下で裁いてやる!」
「だ、だから私たちは、単にこの国にやって来ただけで、国王陛下に危害を加えようとなんて」
「よくもそんなこと言えるな! ま、いいや!
家の屋根渡るからじっとしてろ! 落ちるぞ!」
「ええええっ?!」
そういうとその人は本当に僕らを抱えたまま屋根の上をぴょんぴょんと跳び、城に向かっていった。
こ、怖すぎるんですけど! 僕はちらっと下を見る……。うわぁぁぁ!!!
「ぷるっ!(見るなよ!)」
「あっ、そ、そうだね! うん、そだねー」
「……大丈夫か、ウタ兄」
「あんまりだいじょばないかなぁ……」
……城につくのはあっという間だった。その人は僕らをずーっと抱えたまま城の中へと入り、そして叫ぶ。
「陛下ー、へいかぁぁぁぁぁ!!!」
すると、奥の方からマントを翻しながら、一人の男性があるいてくる。髪は燃えるように赤く、目は金色に輝き、目付きは鋭かった。
う、うわぁ……これまた威圧持ってそうな人だなぁ。エヴァンさんより怖そう……。いや、エヴァンさんは僕がなれたのかな?
「なんだ騒々しい! ……はぁ、またお前か。今度はどんな問題を起こしたんだ、ラト」
「ち! 違いますよ陛下! ほら! 見えませんか!? 俺に捕らわれたこの罪人が!」
「罪人……?」
国王陛下が僕らをじっと見て、それからアリアさんを見て、ハッとしたように声をあげる。
「君は……あ、アリアちゃんじゃないか!」
「へ?」
「は、はは……。こんな状態で申し訳ありません陛下。普通に立ち寄ろうとしたのですが、なにやら勘違いされたらしく……」
「ラト! 早くこの方々を下に降ろさないか! マルティネス帝国の姫君だぞ!」
「え……えええっ! うっそぉ!」
その……ラトさんは、慌てて僕らを下に降ろす。そして、
「すみませんでしたぁっ!」
「あっ、ちょ!」
ものすごい勢いでスライディング土下座をし、そのまま奥へと走っていってしまった。
と、とりあえず……無実は証明できた、かな?
◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈
「えーっと、改めまして。
マルティネス・アリアです。ご無沙汰しております。こちらは連れの、ウタ、ポロン、フローラです。お騒がせしてしまい申し訳ありません」
アリアさんが少し頭を下げ、挨拶をする。その先には玉座が二つ。片方には国王、もう片方には女王が腰かけている。
「気にしないでいいのよ。だって、あれはアリアちゃんたちが悪いんじゃなくて、ラトが勝手に勘違いしただけなんだから」
女王陛下はとてもおおらかそうな人だ。どこか優しさが窺える赤い髪、銀色の瞳。ずっと優しげににこにこと微笑んでいる。
国王陛下も、相手がアリアさんだとわかると態度を柔和させ、優しく微笑んでいる。
「ウタくん、だったね。君らは初めてミネドールに来たんだって? 驚いただろう、急に小さな人間に声をかけられて」
「え、えっと……」
「うん! おいらすっごいびっくりした!」
「ぽ、ポロン! 相手は国王陛下なんだよ? 気を付けないと……」
「はっはっは! 構わないよ。子供は無邪気な方がいい。
小人の国、ミネドールへようこそ」
そう、ここミネドールは小人族が暮らす国。他の国では体格の差で大変な想いをする小人族。彼らの暮らしやすい国は、世界で唯一、ミネドールのみだ。
ちなみに、僕らは街の中に入ったら体格が縮小される。あのトンネルは、その魔法を体に馴染ませるためのものだったらしい。ガリバートンネルかな?
「それにしても……いつぶりだろうかね、アリアちゃんがここに来たのは」
どこか懐かしむように国王陛下が言う。それにたいしてアリアさんはちょっと考えて、口を開いた。
「そうですね……マルティネス、ミネドール、ハンレルの三国同盟の時以来なので、三年ぶり……かと」
「そう……。案外あってないものね」
ところで、と、女王陛下が話を変える。
「みなさん、宿はどうなさいますか? 城の中の部屋を貸すことも出来ますけど……」
「……あー、どうする?」
アリアさんがちらりとこっちを見る。……うーん、どうしようかなぁ。
「えっと、宿を探すのも大変なのでここはお言葉に甘えませんか?」
僕が悩んでいると、フローラがそういう。それを聞いたアリアさんはうなずき、合図地をうった。
「そうだな……。うん、そうしようか。
では、部屋を一部屋、用意してくれますか?」
…………ん?
「もちろんだ。……あれ? 一部屋でいいのかな?」
「構いませんよ」
「ちょぉぉぉぉっと! まったぁぁぁぁぁぁ!!!」
ま、またあの悪夢が……ヒエッ。
そんな僕の扱いにはなれたのか、アリアさんは僕にたいして何も言わず、辺りをきょろきょろと見渡した。
「……ところで、あの、」
「あぁ、部屋にいると思うよ。なんなら今呼んで――」
「陛下ぁぁぁぁぁぁ!」
突然、国王陛下の後ろにある階段を、一人の男性が駆け降りてきた。パット見陛下よりも年上のようで、おじいちゃんって感じだった。
「どうした、じぃ」
「ひ、姫様のお姿がありませぬ!」
「なに!? またか!?」
「はい! 窓から飛び降りた形跡がありましたから、おそらくそこから!」
「……へ?」
この国のお姫様はお転婆(?)なようですね。
そこは、街の少し高台になっている場所で、ミネドールの王都が一望できた。
「ふぅー、おい! お前ら重いんだよ!」
僕らを抱えたまま青年が言う。……あれ? いつのまにか僕らと同じ背丈になってる。あれぇ?
「よし! 今から城に向かうからな! お前らを法の下で裁いてやる!」
「だ、だから私たちは、単にこの国にやって来ただけで、国王陛下に危害を加えようとなんて」
「よくもそんなこと言えるな! ま、いいや!
家の屋根渡るからじっとしてろ! 落ちるぞ!」
「ええええっ?!」
そういうとその人は本当に僕らを抱えたまま屋根の上をぴょんぴょんと跳び、城に向かっていった。
こ、怖すぎるんですけど! 僕はちらっと下を見る……。うわぁぁぁ!!!
「ぷるっ!(見るなよ!)」
「あっ、そ、そうだね! うん、そだねー」
「……大丈夫か、ウタ兄」
「あんまりだいじょばないかなぁ……」
……城につくのはあっという間だった。その人は僕らをずーっと抱えたまま城の中へと入り、そして叫ぶ。
「陛下ー、へいかぁぁぁぁぁ!!!」
すると、奥の方からマントを翻しながら、一人の男性があるいてくる。髪は燃えるように赤く、目は金色に輝き、目付きは鋭かった。
う、うわぁ……これまた威圧持ってそうな人だなぁ。エヴァンさんより怖そう……。いや、エヴァンさんは僕がなれたのかな?
「なんだ騒々しい! ……はぁ、またお前か。今度はどんな問題を起こしたんだ、ラト」
「ち! 違いますよ陛下! ほら! 見えませんか!? 俺に捕らわれたこの罪人が!」
「罪人……?」
国王陛下が僕らをじっと見て、それからアリアさんを見て、ハッとしたように声をあげる。
「君は……あ、アリアちゃんじゃないか!」
「へ?」
「は、はは……。こんな状態で申し訳ありません陛下。普通に立ち寄ろうとしたのですが、なにやら勘違いされたらしく……」
「ラト! 早くこの方々を下に降ろさないか! マルティネス帝国の姫君だぞ!」
「え……えええっ! うっそぉ!」
その……ラトさんは、慌てて僕らを下に降ろす。そして、
「すみませんでしたぁっ!」
「あっ、ちょ!」
ものすごい勢いでスライディング土下座をし、そのまま奥へと走っていってしまった。
と、とりあえず……無実は証明できた、かな?
◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈
「えーっと、改めまして。
マルティネス・アリアです。ご無沙汰しております。こちらは連れの、ウタ、ポロン、フローラです。お騒がせしてしまい申し訳ありません」
アリアさんが少し頭を下げ、挨拶をする。その先には玉座が二つ。片方には国王、もう片方には女王が腰かけている。
「気にしないでいいのよ。だって、あれはアリアちゃんたちが悪いんじゃなくて、ラトが勝手に勘違いしただけなんだから」
女王陛下はとてもおおらかそうな人だ。どこか優しさが窺える赤い髪、銀色の瞳。ずっと優しげににこにこと微笑んでいる。
国王陛下も、相手がアリアさんだとわかると態度を柔和させ、優しく微笑んでいる。
「ウタくん、だったね。君らは初めてミネドールに来たんだって? 驚いただろう、急に小さな人間に声をかけられて」
「え、えっと……」
「うん! おいらすっごいびっくりした!」
「ぽ、ポロン! 相手は国王陛下なんだよ? 気を付けないと……」
「はっはっは! 構わないよ。子供は無邪気な方がいい。
小人の国、ミネドールへようこそ」
そう、ここミネドールは小人族が暮らす国。他の国では体格の差で大変な想いをする小人族。彼らの暮らしやすい国は、世界で唯一、ミネドールのみだ。
ちなみに、僕らは街の中に入ったら体格が縮小される。あのトンネルは、その魔法を体に馴染ませるためのものだったらしい。ガリバートンネルかな?
「それにしても……いつぶりだろうかね、アリアちゃんがここに来たのは」
どこか懐かしむように国王陛下が言う。それにたいしてアリアさんはちょっと考えて、口を開いた。
「そうですね……マルティネス、ミネドール、ハンレルの三国同盟の時以来なので、三年ぶり……かと」
「そう……。案外あってないものね」
ところで、と、女王陛下が話を変える。
「みなさん、宿はどうなさいますか? 城の中の部屋を貸すことも出来ますけど……」
「……あー、どうする?」
アリアさんがちらりとこっちを見る。……うーん、どうしようかなぁ。
「えっと、宿を探すのも大変なのでここはお言葉に甘えませんか?」
僕が悩んでいると、フローラがそういう。それを聞いたアリアさんはうなずき、合図地をうった。
「そうだな……。うん、そうしようか。
では、部屋を一部屋、用意してくれますか?」
…………ん?
「もちろんだ。……あれ? 一部屋でいいのかな?」
「構いませんよ」
「ちょぉぉぉぉっと! まったぁぁぁぁぁぁ!!!」
ま、またあの悪夢が……ヒエッ。
そんな僕の扱いにはなれたのか、アリアさんは僕にたいして何も言わず、辺りをきょろきょろと見渡した。
「……ところで、あの、」
「あぁ、部屋にいると思うよ。なんなら今呼んで――」
「陛下ぁぁぁぁぁぁ!」
突然、国王陛下の後ろにある階段を、一人の男性が駆け降りてきた。パット見陛下よりも年上のようで、おじいちゃんって感じだった。
「どうした、じぃ」
「ひ、姫様のお姿がありませぬ!」
「なに!? またか!?」
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「……へ?」
この国のお姫様はお転婆(?)なようですね。
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