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ウタと愉快な盗賊くん
閑話 お化け屋敷に行こう!
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「……おいらは思うんだよ」
ポロンくんが正座した状態で真剣に言う。それにつられて僕とアリアさんも正座し、スラちゃんもきりっとしている。
「おいらたちはこうして晴れて仲間になったわけだよな? ラミリエにいる間においらも冒険者登録するから、パーティーとして一緒に戦うんだよな?」
「そうだね」
「そうだな」
「おいらたちにとっての一番の戦力と言えば、ウタ兄の『勇気』だよな?」
「そうだね」
「そうだな」
「勇気を発動させるには勇気を出さないといけない。そこでおいら、ウタ兄が勇気を出す訓練として、いいこと思いついたんだ!」
「それって?」
「ズバリ、お化け屋敷だ!」
・・・・・・・・・・・・・・。
え?
オバケヤシキ?
「あぁ、なるほどな。入るだけでも勇気がいるもんな」
「しかも、ラミリエには結構有名なおばけ屋敷があるらしくて、怖いらしいぞ! だから、みんなで行かねーか?!」
「いいじゃないか。それに……こう言っちゃあれだが、一回入ってみたかったんだよな、おばけ屋敷」
「よし! アリア姉も乗り気みたいだし、いいよな? ウタ兄!」
「…………え?」
「えってなんだよ、えって。え? ダメなのか?」
「……まずこの世界にお化け屋敷なるものが存在していることに驚いています」
「ないと思ってたのか」
「ないと思ってました」
「まぁ、あったんだからいいだろ?」
よくない。断じてよくない。
「忘れてませんか!? 僕ヘタレなんですよ!? へのタのレと書いてヘタレなんですよ!?」
「…………いや、悪い。ちょっと何いってるか分からないな」
「怖いから、嫌、ってことか?」
「嫌じゃないよ! 二人が行きたいなら行きますとも! 泣き叫ぶけどねーあはははは」
「ウタ兄が壊れた!」
「安心しろポロン。通常運転だ」
「うわぁぁぁぁぁ!」
◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈
結局来ることになりましたー……。はぁ。
僕の知ってるお化け屋敷とは作りとか立地とかが違っていて、テーマパーク的なところとかデパートの中にあるような感じではなく、どちらかというと移動サーカスのような感じだ。
少し大きめのテントがあって、その中がお化け屋敷になっているようだ。……不幸なことにすいている。すぐに僕らの番になった。
「ポロンくん、アリアさん、先いってくださいね」
「それ、堂々と言うのか。ま、いいけどよ! な? アリア姉!」
「そうだな。ウタが先頭だと進まなくなりそうだしな。二人で先に行くか」
そして、僕らの番がやって来る。がくがくと身体を震わせながら足をゆっくりと前に進める。
「おお! このランプを持っていくのか」
「みたいだな。んで、中にあるチェックポイントでスタンプ押したらクリアだ」
「ぷるっ! ぷるるっ!(楽しみだね!)」
「モウイヤダ……カエリタイ……ニゲタイ……」
「現実逃避するな。その思考だと死にそうだぞウタ」
「僕のSAN値はもうゼロです」
「なんの話だ」
と、そのとき。
「ぐぉぉぉぉぉ!!!」
「ぎゃぁあぁぁぁぁああ!!!」
道の端のところからゾンビ風の人が襲いかかってきた! ……いや、実際にゾンビが襲いに行ったのはアリアさんの方だったのだが、アリアさん以上に僕が叫んだ。
「うっわ! ……う、ウタの声に一番びびったぞ……」
「おいらもだ……」
「もうやだ……もういやだぁ……」
そして少し進んだところで、
「キシャシャシャシャシャ」
「うわぁぁぁぁぁん!」
「ケッケッケッケッ」
「ひぃぃぃぃぃぃぃ!」
「グルォォォォォォ!」
「あばばばばばばば!」
「……ポロン、一つ聞きたい。怖いか?」
「……ある意味スッゲー怖い。ウタ兄のビビりっぷりが」
「……首根っこ掴まえてさっさと出るか。で、落ち着かせよう」
「賛成。おーい、ウタ兄! いーくーぞー!」
「うぅ……」
「ぷるる(やれやれだぜ)……」
そうしてずりずりと引きずられ、アリアさんとポロンくんがさっさと集めてくれたスタンプシートを提出し、無事に……ではないけど、お化け屋敷を脱出できましたー! ……はぁ。
「もう行きたくないです……」
「私たちもお前と行くのは危険だと学んだぞ」
「なんであんなに驚かしてくるんですかぁ……?」
「そりゃあ……お化け屋敷だもんな。
ウタ兄、それ、レストランに行って『ここなんでこんなに料理が出てくるんだろう?』って言ってるのと同じだからな?」
「分かってる、分かってるけどさぁ……」
でもまぁ、これでパーティーの戦力が上がるのならば仕方のないことだろう。
本当は意地でも入りたくなかったけど、アリアさんとポロンくんのお願いだったし、僕のためにもなったし? これで多少なりとも変わってくれればいいんだけどなぁ。
「…………あ」
「ん? どうしたアリア姉」
「い、いやぁ……」
アリアさんはなにか、『まずいことに気づいてしまった』という顔をして、苦く笑っている。
「……なぁ、ウタ。勇気の説明を、もう一度、声に出して、ゆっくりと読んでくれないか?」
「え? えーっと……自分の限界を越える。自らの心が恐怖や圧力に打ち勝った瞬間から3分間のみ発動する」
「自分の限界を越える、とあるな?」
「は、はい」
「勇気を出す訓練としてお化け屋敷に行ったわけだが、そのことにウタがなれて、メンタルが強くなってしまったら……その分、自分の限界を越えるのが難しくなるんじゃ」
「あっ」
ってことは……お化け屋敷は、全部無駄……?
「…………」
「あー……う、ウタ兄、悪かったって。よかれと思ったんだよ!」
「……は、ははは…………」
「ちょ、ウタ!? 大丈夫か!?」
「ウタ兄!?」
自由に発動させられるスキルがほしかったです。
ポロンくんが正座した状態で真剣に言う。それにつられて僕とアリアさんも正座し、スラちゃんもきりっとしている。
「おいらたちはこうして晴れて仲間になったわけだよな? ラミリエにいる間においらも冒険者登録するから、パーティーとして一緒に戦うんだよな?」
「そうだね」
「そうだな」
「おいらたちにとっての一番の戦力と言えば、ウタ兄の『勇気』だよな?」
「そうだね」
「そうだな」
「勇気を発動させるには勇気を出さないといけない。そこでおいら、ウタ兄が勇気を出す訓練として、いいこと思いついたんだ!」
「それって?」
「ズバリ、お化け屋敷だ!」
・・・・・・・・・・・・・・。
え?
オバケヤシキ?
「あぁ、なるほどな。入るだけでも勇気がいるもんな」
「しかも、ラミリエには結構有名なおばけ屋敷があるらしくて、怖いらしいぞ! だから、みんなで行かねーか?!」
「いいじゃないか。それに……こう言っちゃあれだが、一回入ってみたかったんだよな、おばけ屋敷」
「よし! アリア姉も乗り気みたいだし、いいよな? ウタ兄!」
「…………え?」
「えってなんだよ、えって。え? ダメなのか?」
「……まずこの世界にお化け屋敷なるものが存在していることに驚いています」
「ないと思ってたのか」
「ないと思ってました」
「まぁ、あったんだからいいだろ?」
よくない。断じてよくない。
「忘れてませんか!? 僕ヘタレなんですよ!? へのタのレと書いてヘタレなんですよ!?」
「…………いや、悪い。ちょっと何いってるか分からないな」
「怖いから、嫌、ってことか?」
「嫌じゃないよ! 二人が行きたいなら行きますとも! 泣き叫ぶけどねーあはははは」
「ウタ兄が壊れた!」
「安心しろポロン。通常運転だ」
「うわぁぁぁぁぁ!」
◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈
結局来ることになりましたー……。はぁ。
僕の知ってるお化け屋敷とは作りとか立地とかが違っていて、テーマパーク的なところとかデパートの中にあるような感じではなく、どちらかというと移動サーカスのような感じだ。
少し大きめのテントがあって、その中がお化け屋敷になっているようだ。……不幸なことにすいている。すぐに僕らの番になった。
「ポロンくん、アリアさん、先いってくださいね」
「それ、堂々と言うのか。ま、いいけどよ! な? アリア姉!」
「そうだな。ウタが先頭だと進まなくなりそうだしな。二人で先に行くか」
そして、僕らの番がやって来る。がくがくと身体を震わせながら足をゆっくりと前に進める。
「おお! このランプを持っていくのか」
「みたいだな。んで、中にあるチェックポイントでスタンプ押したらクリアだ」
「ぷるっ! ぷるるっ!(楽しみだね!)」
「モウイヤダ……カエリタイ……ニゲタイ……」
「現実逃避するな。その思考だと死にそうだぞウタ」
「僕のSAN値はもうゼロです」
「なんの話だ」
と、そのとき。
「ぐぉぉぉぉぉ!!!」
「ぎゃぁあぁぁぁぁああ!!!」
道の端のところからゾンビ風の人が襲いかかってきた! ……いや、実際にゾンビが襲いに行ったのはアリアさんの方だったのだが、アリアさん以上に僕が叫んだ。
「うっわ! ……う、ウタの声に一番びびったぞ……」
「おいらもだ……」
「もうやだ……もういやだぁ……」
そして少し進んだところで、
「キシャシャシャシャシャ」
「うわぁぁぁぁぁん!」
「ケッケッケッケッ」
「ひぃぃぃぃぃぃぃ!」
「グルォォォォォォ!」
「あばばばばばばば!」
「……ポロン、一つ聞きたい。怖いか?」
「……ある意味スッゲー怖い。ウタ兄のビビりっぷりが」
「……首根っこ掴まえてさっさと出るか。で、落ち着かせよう」
「賛成。おーい、ウタ兄! いーくーぞー!」
「うぅ……」
「ぷるる(やれやれだぜ)……」
そうしてずりずりと引きずられ、アリアさんとポロンくんがさっさと集めてくれたスタンプシートを提出し、無事に……ではないけど、お化け屋敷を脱出できましたー! ……はぁ。
「もう行きたくないです……」
「私たちもお前と行くのは危険だと学んだぞ」
「なんであんなに驚かしてくるんですかぁ……?」
「そりゃあ……お化け屋敷だもんな。
ウタ兄、それ、レストランに行って『ここなんでこんなに料理が出てくるんだろう?』って言ってるのと同じだからな?」
「分かってる、分かってるけどさぁ……」
でもまぁ、これでパーティーの戦力が上がるのならば仕方のないことだろう。
本当は意地でも入りたくなかったけど、アリアさんとポロンくんのお願いだったし、僕のためにもなったし? これで多少なりとも変わってくれればいいんだけどなぁ。
「…………あ」
「ん? どうしたアリア姉」
「い、いやぁ……」
アリアさんはなにか、『まずいことに気づいてしまった』という顔をして、苦く笑っている。
「……なぁ、ウタ。勇気の説明を、もう一度、声に出して、ゆっくりと読んでくれないか?」
「え? えーっと……自分の限界を越える。自らの心が恐怖や圧力に打ち勝った瞬間から3分間のみ発動する」
「自分の限界を越える、とあるな?」
「は、はい」
「勇気を出す訓練としてお化け屋敷に行ったわけだが、そのことにウタがなれて、メンタルが強くなってしまったら……その分、自分の限界を越えるのが難しくなるんじゃ」
「あっ」
ってことは……お化け屋敷は、全部無駄……?
「…………」
「あー……う、ウタ兄、悪かったって。よかれと思ったんだよ!」
「……は、ははは…………」
「ちょ、ウタ!? 大丈夫か!?」
「ウタ兄!?」
自由に発動させられるスキルがほしかったです。
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