チート能力解放するにはヘタレを卒業しなきゃいけない

植木鉢たかはし

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ウタと愉快な盗賊くん

悪いけど許さない

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 まだ目を押さえているノーセス。リアルバルス状態だ。とまぁここで冷静に鑑定する。



名前 ノーセス

種族 人間

年齢 26

職業 キルナンス頭領

レベル 75

HP 8900

MP 4300

スキル アイテムボックス・威圧(超上級)・剣術(上級)・体術(上級)・初級魔法(熟練度7)・風魔法(熟練度8)・土魔法(熟練度6)・水魔法(熟練度4)・闇魔法(熟練度3)・転移

ユニークスキル 森羅・監視

称号 キルナンス頭領・無慈悲な笑み・自然の使い手



 知らないスキルが三つある。それぞれを鑑定していく。


転移……あらかじめ魔方陣を描いた場所から指定の場所へ物や人、魔物をおくることができる。

森羅……草木を操ることが出来る。トゲで攻撃したり、巻き付いて動きを封じたり、絞め殺すことも可能。火に弱い。


 そして最後、『監視』を鑑定する。

 …………。
 …………。
 …………へぇ。そっか。

 とそこで、ようやくバルスから立ち直ったノーセスが、僕に手のひらを向けた。


「この……どうやったか知らないが、私の魔法から逃げられると思うなよ! 森羅っ!」

「お、おい! どうすんだ――」

「大丈夫。……ファイヤっ!」


 向かって来る草木を一気に焼き払い、僕は間から前に飛び出した。そして、剣を片手に構えたまま少し上に飛び上がる。


「ドラゴン召喚っ!」

「生かすか! 森羅っ!」


 僕の体が地面につく前に、ノーセスが魔法を放つ。僕を囲うように伸びてきた蔦だったが、次の瞬間に焼き尽くされた。そして、僕の体は、漆黒の鱗を持ったドラゴンに受け止められる。


「……ウタ殿、予定より呼ぶのが遅かったじゃないか」

「ありがとうドラくん! ……詳細は省くけど、今、僕はすっごく怒ってるんだ。だから、アリアさんとポロンくんを巻き込まないように……殺さない程度に、好きに暴れてくれるかな?」

「心得た。……ったく、」


 ドラくんはノーセスに向かって急降下しながらぼやく。


「今のお主は、我よりもずっと強いだろうに」


 そして、勢いよく炎を吐き出す。ノーセスは蔦で壁を作るようにするが、全てドラくんの炎に焼かれる。全くの無意味だ。


「ドラゴン……だと?! くっ……ならば、ウェーブ!」


 水魔法による、大きな波。僕もドラくんも簡単に飲み込まれてしまいそうだ。だが、僕はいう。


「大丈夫、そのまま突っ込んで!」

「正気か? 我は水は得意じゃないぞ」

「大丈夫」

「……信じるぞ、我が主君!」


 ドラくんは迷うことなく波に突っ込む。僕はそれとタイミングを合わせ、両手を前に突き出した。


「ウィング!」


 もはや竜巻のような風が僕の両手からごうごうと音をたて、大きな波に、大きな風穴を開ける。そこからドラくんと突き抜けると、唖然とした表情で立ち尽くすノーセスがいた。


「武器を奪える?」

「簡単だ」


 ドラくんは僕を落とさないようにバランスを保ったまま、巨大な尾でノーセスを壁に叩きつける。アリアさんの時とは比べ物にならない力だけど。……一応、加減してるのか。


「ぐぅあっ……!」


 壁に強い力で叩きつけられたノーセスは、痛みから苦しそうな声をあげる。僕はゆっくりとドラくんから降りると、剣を握りしめたまま、ノーセスに近づいていき、そして、切っ先を喉元に突きつける。


「っ……貴様、私を誰だと思っている。こんなことして、生きて帰れるなど」

「あの、僕だってこんなことしたくないんですけど、自分がどういう状況か、分かってます?」

「…………」

「ドラくん、二人のことよろしくね」

「あぁ」


 きっと睨み付けてくるノーセス。それから、なにかを悟ったように笑い出し、ふらふらと立ち上がる。


「くくっ……そうか、あぁ、そういうことなのか!」

「なにがおかしいんです?」

「金か? 金がほしいんだな!? 私を脅して金をとろうと」

「ふざけないでくださいっ!」


 ガンっと、金属となにかがぶつかる音。僕は力任せに剣をノーセスのすぐ横の壁に刺した。


「……僕は怒ってるんです。黙って話を聞いてください」

「…………!」


 僕は、ひとつひとつ文句をつける。


「まず一つ目、キルナンスをつくったこと。わざわざ犯罪組織を作るなんて、僕には理解できません。
 二つ目。やらされていることの割には、みなさん、随分貧相な格好していますよね? あなたはそんなに立派な服を着てるのに」


 ノーセスの顔に、今までとは全く違う感情が生まれる。


「三つ目、ポロンくんを利用としようと……いや、すでにしていたこと。
 あなたのステータス、覗かせてもるいました。監視、っていうスキルがありましたね。なんか、支配下にある人を、ずっと監視できるとか。
 アリアさんの情報や、僕の情報、ポロンくんが僕らについていくっていう情報。全部、こうして手にいれてたんですね。道具のようにポロンくんを使って」


 最後に、と、僕は声をあげる。


「僕が一番許せないのは、ポロンくんの気持ちを曲げようとしたことです!」

「…………おいら、の……」


 後ろから小さい声が聞こえる。気にせず僕は続ける。


「仲間になろうと決意してくれた、ポロンくんの気持ちをねじ曲げようとしたこと……僕は、絶対に許しません! 絶対に」


 ノーセスは、少し下に目線をやり、そして、静かに笑う。


「理解できない……といったら、お前にとって私は狂人だろうな」

「そうでなくても、僕のなかで、あなたは十分すぎるくらいに狂人です」

「じゃあ、仮に膝をついて謝ったら?」

「悪いけど、許しません」

「ふん、そうか。……で、私たちをどうするんだ? これから」

「教えると思いますか? ……アイス」


 僕は氷魔法で枷をつくり、ノーセスの手足の動きを封じると、ドラくんを見た。


「二階にいる子以外を連れて、外に出てくれないかな? 結界内は入れないだろうから、すぐのところで待ってて」

「心得た。……こやつも連れてっていいんだな?」

「うん、好きにして」

「……分かった」


 ドラくんがノーセスを連れて出ていくと、僕はそっと自分のステータスを確認した。



名前 ウタ

種族 人間

年齢 17

職業 冒険者

レベル 1500

HP 2250000

MP 1200000

スキル 言語理解・アイテムボックス・鑑定・暗視・剣術(上級)・体術(上級)・初級魔法(熟練度20)・使役(上級)・ドラゴン召喚

ユニークスキル 女神の加護・勇気

称号 転生者・ヘタレ・敵前逃亡



 ……やっぱり、勇気が発動してくれていたんだ。
 そう思うと同時に、あのとき本当に動けてよかったと思った。ポロンくんを助けられてよかったって……。


「……また、ウタのお手柄だな。助かったよ。いつものなよなよはどこにいったんだか」

「あ、あはは……。アリアさん、大丈夫でしたか?」

「大丈夫だ。カーターを連れて、一旦街に戻るか」

「そうですね! じゃ、ポロンくん、行こうか!」


 そうして僕らがいこうとすると、ポロンくんが呼び止める。


「……おい、お前ら、ちゃんと説明しろよ…………」

「……あ、そっか」


 ポロンくんに『勇気』の説明をしていなかったことを今さらのように思い出した。
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