48 / 387
ウタと愉快な盗賊くん
最上階
しおりを挟む
螺旋階段をのぼる。と、その時、なにか違和感のようなものを感じた。……なんだろう、これ。
「アリアさん、ポロンくん、なんか、変じゃない?」
「……おいらも思ってた。なんか、空気が重いっていうか」
「なんだ……? 毒、とかではなさそうだな。でも明らかに、この上は雰囲気が変わっている」
「……進みますけど、大丈夫、ですか?」
「行くしかないだろう」
「今さら引き返せないや。行こうぜ!」
二人の言葉にうなずいて、最上階の床を踏む。とたんに、目に見えない圧迫感に襲われ、思わず顔をしかめた。……な、なんだ、これ。
「……やはり、ここから上は、ないか」
アリアさんがいう。確かに、今まであった螺旋階段がなく、奥に大きな扉、その左右に大きな窓があり、扉の前には玉座のようなものが置いてある。……いよいよボス戦って感じがしてきた。
「…………おい、あれ、なんだ?」
「あれって?」
「う、上、だよ」
ポロンくんが震える声で言う。その声に促されて上を見上げる。すると、
「な、なんだこれ!」
アリアさんも声をあげる。僕はもう恐怖から震えしかない。
見上げたそこには、大きな黒い穴がぽっかりと開いていたのだ。唖然として見上げていると、その穴が不気味に光始め、そして、とんでもない数の魔物が降ってきた。
「うわわわっ!?」
「嘘だろ!?」
「お、おい! おいらの後ろに来い! ウォール!」
ポロンくんの作った壁によって、直接鉢合わせすることはなくなったが、その壁を回り込んでたくさんの魔物が襲ってくる。
「……くっ、相手にしている時間なんてないのに、仕方ないな。
ウタ、やれるか?」
「…………」
守るため――。
「わかりました。ポロンくん! アリアさん! やりましょう!」
「よし! 行くぜー!」
僕は鞘から剣を抜いた。……先に言っておこう。
「…………ごめんなさい」
そして、目の前に迫ってくるゴブリンやオーク、ウルフたちを、時に切り裂き、魔法で吹き飛ばし、数を減らしていった。
……魔物たちと、仲良くはなれないのだろうか? スラちゃんとは友達になれたのに、倒さなきゃいけないのかな。
考えている暇なんてない。倒さないと、やられてしまう。
一通り倒し終え、アリアさんの方をちらりと見ると、あちらも無事のようだ。ポロンくんは……うん、大丈夫。そうしたら、今度こそ頭領を探さないと。
「……っ?! ウタ! 避けろ!」
ハッとして上を見上げると、そこにはまさかの魔物第二段。あ、ヤバイ。逃げ遅れ――
「ぷるっ! ぷるるっ!!」
「す、スラちゃん!?」
突然、僕の服の内側に隠れていたスラちゃんが飛び出す。そして、魔物たちに向かっていった。
「だ、ダメだよ! 危ないよ!」
「ぷるるるるっ!!!」
スラちゃんの体がまばゆく輝く、と思ったら、周りにいた魔物たちはみんな消え去っていた。
「…………え?」
「ぷしゅー……」
「あ、スラちゃん! うぉ、ウォーター!」
心なしか少し水分が抜けたように見えるスラちゃんに水をぱしゃぱしゃとかけつつ、僕はスラちゃんを鑑定してみた。
名前 スライム
種族 スライム族
年齢 ???
職業 ――
レベル 15(使役者と共通)
HP 115
MP 23
スキル 体術(初級)
ユニークスキル 劇薬
称号 ぷるぷる・ウタの使い魔・癒し
……劇薬って、なんだ?
「お、おい! スラちゃんは大丈夫なのか!? 何が起こった!」
「な、なんかすごいの見ちまった気がする……」
「なんか、劇薬ってスキルがあって……鑑定してみますね」
劇薬……使役されたときのみ手にいれるスキル。主人の敵とみなした対象を消し去る。その後、一定時間行動不能。
「…………主人の敵を、消してくれるそうです。そのあと、行動不能になるって書いてありますけど、休ませれば大丈夫そうですね」
僕はスラちゃんをそっと抱き締める。……僕のこと、守ってくれたってことだよね。ありがとう。
「…………30分だ」
突然響いた低い女性の声。ハッとして振り向くと、誰も座っていなかったはずの玉座に、一人の女性が腰かけていた。
穴は閉じているが、不気味に笑うその人は、目を静かに光らせた。
「…………これ……」
急に鼓動が速くなる。息が苦しい。体全身が強ばったように動かない。目だけを動かして二人を見る。
……アリアさんは苦しそうにしながらも、これがなんなのか分かっているようだった。ポロンくんは、この感覚を知らないのか?
「ステータス10倍のスキルが切れるまで、30分、だったな?」
こちらから一切視線を離さずにその人は笑う。心の内を射ぬかれているようで、背筋に悪寒が走る。
「ポル・ポロン……全く、どうしてお前のような下っぱに、頭領についての正しい情報が流れてると思ったんだか」
「……じ、じゃあ、お前…………」
その女性は、真っ赤な髪をかきあげると、にたりと微笑んだ。
「私がキルナンス頭領、ノーセスだ。ここまで来てしまったことを、十分過ぎるまでに後悔させてやる」
そして、ゆっくりと、僕らに近づいてきたのだ。
「アリアさん、ポロンくん、なんか、変じゃない?」
「……おいらも思ってた。なんか、空気が重いっていうか」
「なんだ……? 毒、とかではなさそうだな。でも明らかに、この上は雰囲気が変わっている」
「……進みますけど、大丈夫、ですか?」
「行くしかないだろう」
「今さら引き返せないや。行こうぜ!」
二人の言葉にうなずいて、最上階の床を踏む。とたんに、目に見えない圧迫感に襲われ、思わず顔をしかめた。……な、なんだ、これ。
「……やはり、ここから上は、ないか」
アリアさんがいう。確かに、今まであった螺旋階段がなく、奥に大きな扉、その左右に大きな窓があり、扉の前には玉座のようなものが置いてある。……いよいよボス戦って感じがしてきた。
「…………おい、あれ、なんだ?」
「あれって?」
「う、上、だよ」
ポロンくんが震える声で言う。その声に促されて上を見上げる。すると、
「な、なんだこれ!」
アリアさんも声をあげる。僕はもう恐怖から震えしかない。
見上げたそこには、大きな黒い穴がぽっかりと開いていたのだ。唖然として見上げていると、その穴が不気味に光始め、そして、とんでもない数の魔物が降ってきた。
「うわわわっ!?」
「嘘だろ!?」
「お、おい! おいらの後ろに来い! ウォール!」
ポロンくんの作った壁によって、直接鉢合わせすることはなくなったが、その壁を回り込んでたくさんの魔物が襲ってくる。
「……くっ、相手にしている時間なんてないのに、仕方ないな。
ウタ、やれるか?」
「…………」
守るため――。
「わかりました。ポロンくん! アリアさん! やりましょう!」
「よし! 行くぜー!」
僕は鞘から剣を抜いた。……先に言っておこう。
「…………ごめんなさい」
そして、目の前に迫ってくるゴブリンやオーク、ウルフたちを、時に切り裂き、魔法で吹き飛ばし、数を減らしていった。
……魔物たちと、仲良くはなれないのだろうか? スラちゃんとは友達になれたのに、倒さなきゃいけないのかな。
考えている暇なんてない。倒さないと、やられてしまう。
一通り倒し終え、アリアさんの方をちらりと見ると、あちらも無事のようだ。ポロンくんは……うん、大丈夫。そうしたら、今度こそ頭領を探さないと。
「……っ?! ウタ! 避けろ!」
ハッとして上を見上げると、そこにはまさかの魔物第二段。あ、ヤバイ。逃げ遅れ――
「ぷるっ! ぷるるっ!!」
「す、スラちゃん!?」
突然、僕の服の内側に隠れていたスラちゃんが飛び出す。そして、魔物たちに向かっていった。
「だ、ダメだよ! 危ないよ!」
「ぷるるるるっ!!!」
スラちゃんの体がまばゆく輝く、と思ったら、周りにいた魔物たちはみんな消え去っていた。
「…………え?」
「ぷしゅー……」
「あ、スラちゃん! うぉ、ウォーター!」
心なしか少し水分が抜けたように見えるスラちゃんに水をぱしゃぱしゃとかけつつ、僕はスラちゃんを鑑定してみた。
名前 スライム
種族 スライム族
年齢 ???
職業 ――
レベル 15(使役者と共通)
HP 115
MP 23
スキル 体術(初級)
ユニークスキル 劇薬
称号 ぷるぷる・ウタの使い魔・癒し
……劇薬って、なんだ?
「お、おい! スラちゃんは大丈夫なのか!? 何が起こった!」
「な、なんかすごいの見ちまった気がする……」
「なんか、劇薬ってスキルがあって……鑑定してみますね」
劇薬……使役されたときのみ手にいれるスキル。主人の敵とみなした対象を消し去る。その後、一定時間行動不能。
「…………主人の敵を、消してくれるそうです。そのあと、行動不能になるって書いてありますけど、休ませれば大丈夫そうですね」
僕はスラちゃんをそっと抱き締める。……僕のこと、守ってくれたってことだよね。ありがとう。
「…………30分だ」
突然響いた低い女性の声。ハッとして振り向くと、誰も座っていなかったはずの玉座に、一人の女性が腰かけていた。
穴は閉じているが、不気味に笑うその人は、目を静かに光らせた。
「…………これ……」
急に鼓動が速くなる。息が苦しい。体全身が強ばったように動かない。目だけを動かして二人を見る。
……アリアさんは苦しそうにしながらも、これがなんなのか分かっているようだった。ポロンくんは、この感覚を知らないのか?
「ステータス10倍のスキルが切れるまで、30分、だったな?」
こちらから一切視線を離さずにその人は笑う。心の内を射ぬかれているようで、背筋に悪寒が走る。
「ポル・ポロン……全く、どうしてお前のような下っぱに、頭領についての正しい情報が流れてると思ったんだか」
「……じ、じゃあ、お前…………」
その女性は、真っ赤な髪をかきあげると、にたりと微笑んだ。
「私がキルナンス頭領、ノーセスだ。ここまで来てしまったことを、十分過ぎるまでに後悔させてやる」
そして、ゆっくりと、僕らに近づいてきたのだ。
0
お気に入りに追加
77
あなたにおすすめの小説
滅せよ! ジリ貧クエスト~悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番(金髪幼女)に!?~
スサノワ
ファンタジー
「ここわぁ、地獄かぁ――!?」
悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、気がつきゃ金糸のような髪の小娘に!?
「えっ、ファンタジーかと思ったぁ? 残っ念っ、ハイ坊主ハラペコSFファンタジーでしたぁ――ウケケケッケッ♪」
やかましぃやぁ。
※小説家になろうさんにも投稿しています。投稿時は初稿そのまま。順次整えます。よろしくお願いします。

オタクおばさん転生する
ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。
天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。
投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

誰にでもできる異世界救済 ~【トライ&エラー】と【ステータス】でニートの君も今日から勇者だ!~
平尾正和/ほーち
ファンタジー
引きこもりニート山岡勝介は、しょーもないバチ当たり行為が原因で異世界に飛ばされ、その世界を救うことを義務付けられる。罰として異世界勇者的な人外チートはないものの、死んだらステータスを維持したままスタート地点(セーブポイント)からやり直しとなる”死に戻り”と、異世界の住人には使えないステータス機能、成長チートとも呼べる成長補正を駆使し、世界を救うため、ポンコツ貧乳エルフとともにマイペースで冒険する。
※『死に戻り』と『成長チート』で異世界救済 ~バチ当たりヒキニートの異世界冒険譚~から改題しました

一般人に生まれ変わったはずなのに・・・!
モンド
ファンタジー
第一章「学園編」が終了し第二章「成人貴族編」に突入しました。
突然の事故で命を落とした主人公。
すると異世界の神から転生のチャンスをもらえることに。
それならばとチートな能力をもらって無双・・・いやいや程々の生活がしたいので。
「チートはいりません健康な体と少しばかりの幸運を頂きたい」と、希望し転生した。
転生して成長するほどに人と何か違うことに不信を抱くが気にすることなく異世界に馴染んでいく。
しかしちょっと不便を改善、危険は排除としているうちに何故かえらいことに。
そんな平々凡々を求める男の勘違い英雄譚。
※誤字脱字に乱丁など読みづらいと思いますが、申し訳ありませんがこう言うスタイルなので。


野草から始まる異世界スローライフ
深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。
私ーーエルバはスクスク育ち。
ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。
(このスキル使える)
エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。
エブリスタ様にて掲載中です。
表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。
プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。
物語は変わっておりません。
一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。
よろしくお願いします。

異世界は流されるままに
椎井瑛弥
ファンタジー
貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。
日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。
しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。
これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる