チート能力解放するにはヘタレを卒業しなきゃいけない

植木鉢たかはし

文字の大きさ
上 下
42 / 387
ウタと愉快な盗賊くん

作戦大事マジ大事

しおりを挟む
 時間はとんで夜。僕はアイマスクを手にした。あのカフェによった帰りに、雑貨屋のようなところで見つけてきたのだ。一つ鉄貨2枚! うーん、安くていいね!
 アリアさんには『そんなのどうすんだ?』的な目で見られたけど、僕にとってはこれが重要なライフラインになる。

 しかし、残念ながら耳栓はなかった。普通にこの世界には耳栓というものがあまり流通していなくて、目にする機会は少ないらしい。そして、あったとしてもそこそこ値もはるという。
 なのでこちらは、リピートラーニングでしのぐ。寝心地悪いとか言ってられない。

 黙々と寝る準備を整えていく僕に、アリアさんは苦く笑った。


「なぁ……本当にそれで寝るのか?」

「はいこれで寝ます! 拒否権はありません!」

「いや別に、お前が寝るわけだから私はいいんだが……。今朝、お前変な風にうなされてただろう? 大丈夫か? それ聞いて」

「あー……メヌマニエですか?」

「そうだ」


 メヌマニエ……未だによくわからない単語だが、睡眠学習のおかげなのかなんなのか、内容は覚えている。だが……とりあえず信仰されているようなもの、としか分からなかった。


「なんかCDでは崇め方がどうとかこうとか言ってましたけど……」

「崇める? この国では特に宗教の規制なんかはしていないが、そんな宗教、聞いたことないぞ?」


 ま、まさか……ここまでぼったくりなんて、そんなわけないよね!? ね!?


「……寝るか」

「寝ましょう」


 ……そういえば、昨日は言えてなかったんだっけ。


「おやすみなさい」

「おやすみ」


 アリアさんが部屋の電気を消し、僕らはベッドに潜り込んだ。よし、今日はちゃんと寝れるぞ! イヤホンとアイマスクを装着して横になり、目を閉じた。

 …………うんうん、例のごとく訳の分からないことばかり連発しているが、完全にアリアさんの気配をシャットアウトできている! これなら寝れる!


『そんなわけだから、メヌマニエっていうのは果物がだーいすきでー、それでー――…………』


 ……あれ?

 CDの音声がぷつっと途切れた。終わったのか? まさか。それにしたって不自然な切れ方だ。どんな映画やドラマだって、終わりよければ全てよし、の考えに乗っ取ってそれなりな終わりかたをするもんじゃなかろうか?

 そんなことをぼーっと考えていると、CDから新たに音が流れ始めた。


『えー? 忘れちゃったー? しょうがないなぁ、優しい私が、もう一度だけ教えてあげよう!
 氷、雷、光、風、炎。この順番だぜベイベー。ベイベーのベイは?』

「米っ!」

「なっ!?」


 あまりの驚きに、質問に律儀に答え、アイマスクをはずしながら僕は飛び起きる。僕の声に驚いたのか、アリアさんも飛び起きる。
 電気をつけ、戸惑ったように僕を見る。


「な、なんだなんだ……どうした急に」

「……読まれてる」

「は?」

「こ、これが、お前ら忘れてるなら教えてやるって、氷、雷、光、風、炎って……米ベーって……」

「…………」


 慌てたり動揺したりでうまく伝えられなかったが、それでもアリアさんはなんとか察してくれたようだった。


「……もう、あれだ。あいつのことは考えることをやめよう」

「そうですねそうしましょう」

「ところで、ずっと知りたかった情報、だが……氷、雷、光、風、炎か」

「魔法ですよね」

「そうだな。それ以外は考えられない。……これが、上層部の弱点、ということは考えられないか?」


 僕はうなずいた。十分あり得る。この順番、ということは、塔はもちろん下から登っていくわけだ。下から順に、この順番で攻撃しろ、っていうことなのか?


「仮にそうだとすると、『奥の手』を出せるのは最終階ってことになりますよね」

「そうなるな。確か、ポロンは風魔法を使えたな。四階はポロンに任せるか」

「アリアさん、アイリーンさんにもらったジャッジメント、三階で使えるんじゃないですか? あと、雷魔法って、持ってますよね?」

「あぁ。だから、二、三階は私に任せろ。お前は一と五を頼む。さすがに三回連続は辛いし、奥の手はお前しか使えないからな」

「了解です! サポートもちゃんとしますから、安心してください!」


 リピートラーニングCDの、おかげなのかせいなのか。明日に関しての作戦会議が始まった。備えあれば憂いなし、ともいうし、出来るところまで話し合っておこう!


「あ、アイリーンさんに貰った魔属性球体、いつ使いましょうか?」

「おやつの方か?」

「そうです」


 発動時間は30分。その間は僕らはキルナンスよりも上になる。30分で全てを終らせてしまいたいが……。


「30分で、終わりますかね?」


 RPGをやったことがある人は思い出してみてほしい。五連続ボスとか、絶対一体につき15~20分はかかるだろう!? かける五だ。30分でよう足りるとは思わない。ましてや、本来格上の相手なのだ。


「……とにかく、発動させないと話にならない」


 アリアさんが真面目な顔で言う。


「間に合わなかったら……そのときは、そのときということで」

「あ、はい」


 いいのかそれで。


「それより、私たちはもっと大事な『可能性』について話しておいた方がいいと思うのだが?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

大国に囲まれた小国の「魔素無し第四王子」戦記(最強部隊を率いて新王国樹立へ)

たぬころまんじゅう
ファンタジー
 小国の第四王子アルス。魔素による身体強化が当たり前の時代に、王族で唯一魔素が無い王子として生まれた彼は、蔑まれる毎日だった。  しかしある日、ひょんなことから無限に湧き出る魔素を身体に取り込んでしまった。その日を境に彼の人生は劇的に変わっていく。  士官学校に入り「戦略」「戦術」「武術」を学び、仲間を集めたアルスは隊を結成。アルス隊が功績を挙げ、軍の中で大きな存在になっていくと様々なことに巻き込まれていく。  領地経営、隣国との戦争、反乱、策略、ガーネット教や3大ギルドによる陰謀にちらつく大国の影。様々な経験を経て「最強部隊」と呼ばれたアルス隊は遂に新王国樹立へ。 異能バトル×神算鬼謀の戦略・戦術バトル! ☆史実に基づいた戦史、宗教史、過去から現代の政治や思想、経済を取り入れて書いた大河ドラマをお楽しみください☆

オタクおばさん転生する

ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。 天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。 投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)

念願の異世界転生できましたが、滅亡寸前の辺境伯家の長男、魔力なしでした。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリーです。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

処理中です...